ツールの向き不向き、筆名と本名 | 有川ひろと覚しき人の『読書は未来だ!』

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このblogを書いた二日ほど前に検察庁法改正案についてのタグが発生したそうです。このタグの是非について物申したいわけではないのでタグの正式名称は書きませんが、このタグに乗っかった無責任な人種にTwitter上であれこれ嫌な思いをした結果、下記のような発言を出しました。

https://twitter.com/arikawahiro0609/status/1259668226125950977
著名人が政治的発言をしてはならないというのはおかしい、それは全く道理である。
しかし同時に著名人に政治的発言のムーブメントに参加せよと強要するのもおかしい。
どちらも個人の自由を侵害している。
私には法を侵害しない範囲で自由を守る権利があり、私の自由を脅かす者は拒絶するのみである。
https://twitter.com/arikawahiro0609/status/1259683555816337408
私はどういう方向からにしろ政治的なムーブメントに巻き込もうとする勢に嫌な思いしかしていないので、ハッシュタグ等の政治的なムーブメントには参加したくないのである。
発するべきと思った政治についての意見は、自分の判断と自分のタイミングで、また自分の本名で然るべき公の窓口へ届ける。

タグの是非は問いませんが、私のところに荒らし的な人間が発生した時点で、このタグはもう一種の祭りになっているのでしょう。
無責任な祭りになってはいけない物事に、Twitterという移ろいやすいツールは向いていないと私は思います(そうでなくとも一人が複数のアカウントを持っていることが当たり前の昨今、Twitterの数字は丸呑みに実数と考えてはいけないものだとも思っています)
であるからこそ、私は政治的な問題を取り扱うに当たって、自分がTwitterというツールを採用しようとは思いません(私個人の主義です。そうでない方もいらっしゃるでしょう。ただ主義が違うだけの話です)
今までも政治に限らず大切な問題を取り扱うときはblogの形で発信してきました。
Twitterは長文には適しませんし、連投で長文を書くと一部を切り取られることによって文意が変わる恐れがあるからです。


また、小説家である私には「筆名」と「本名」があります。
私の投票所入場券は筆名でなく本名で我が家に届きます。私が参政権を有しているのは、当然のことながら「本名」においてです。
政治に対してのスタンスは様々あると思いますが、私は「国」に「一人の国民」として向き合うとき、日本国民としての権利を有しているのは「本名の自分」だと思っております。
よって、私は政治に対して何らか意思表示すべきと思うときは、まず選挙権を行使し、次に様々の公的窓口に対して日本国民としての「本名」で自分の意見を届けます。

ですから、Twitterなどの移ろいやすいツールによる政治的ムーブメントに「参加すべき」と強要されるのはまっぴらごめんですし、参加しないことについて「失望した」などの柔らかい圧力をかけられるのもまっぴらごめんです。
私は「筆名」で政治に参加しない主義なのです(ネットを利用していく過程を経て今はそうなったという意味です)。

表現規制の問題などについてはTwitterである程度発言することもありますが、これも最近では控えがちです。
「図書館戦争の有川さんが言ってたから」「とにかく図書館戦争を読めば分かるから」等、危うい煽動に筆名や作品を使われることが増えたためです。
『図書館戦争』を表現の自由について考えるご自分のきっかけにしてくださることはかまいませんが、エンタメとして成立するように要素を取捨選択した物語を教科書のように他者に提示するのは非常に危ういことです。

筆名も本名も区別なく自分だという方ももちろんいらっしゃるでしょう。しかし、私は筆名の自分と本名の自分を分けて考えており、特に政治については双方の持つ権利と義務を混同しないことを心がけています。
しかし、どちらが正しいというわけではなく、主義の違いです。私は誰の主義も毀損しませんが、私の主義を毀損されることも拒否します。

以上、政治的なムーブメントが発生する度に遠く近く聞こえてくる「なぜあの人は参加しないのか」という圧力、また「参加しないのは○○だからに違いない」等私の政治的主義を決めつける声に対する現時点での答えです。

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