個人的に、この本、大好きです。
角野栄子さんのストーリーが可愛いし、メグホソキさんの絵もおしゃれだし。
でも、いささか乙女チックで、子ども向けではないかもしれません。
あるコーヒーショップの店先に、モリンさんのお花屋さんがあります。
とても小さなお店なので、コーヒーショップを飾っている花束みたいに見えます。
モリンさんは、本来なら捨ててしまう葉っぱだけで、ブーケを作ります。
たしかに売り物には地味すぎるかもしれませんが、グリーンだけのブーケを好きな人を、何人か知っています。
私も好きです。
メガネをかけた、背のひょろりと高いハヤミさんが、このブーケを買って行きました。
買うと言っても、サービス品なので、無料です。
ハヤミさんは、ご両親の形見である古い一軒家にひとりで住んでいて、庭もあります。
この庭が問題。
いくら草を刈っても、なぜかものすごい速さで伸び、あっという間にぼうぼうになります。
花の種を植えれば植えたで、勝手な方向につんつん伸びて、威張っているようなんです。
むしゃくしゃしたハヤミさんは、家を飛び出します。
コーヒーでも飲もうかと思っていると、モリンさんに会いました。
「どうせ、ぼくは、はなたちに きらわれているんです。まったく なにがきにいらないのか、にわのはなたち、ぎょうぎがわるくって」
「あら、おにわがあるんですか? いいわねえ、うらやましいわ」
そこで、ハヤミさんは、モリンさんに、庭を貸してあげることにします。
モリンさんが庭へ行ってみると、なるほど、チューリップたちは、見たこともないようなおデブさんで、ゼラニウムは葉っぱを振り回して八つ当たり、憂鬱そうに下を向いている花もいます。
モリンさんは、花たちのおしゃべりに耳を傾けました。
自分たちで、好きなように、庭を作りたい。
モリンさんは、花たちに、庭造りを任せることにしました。
そうしてできあがった庭の、なんて素敵なこと。
みな、気持ちよさそうに風になびき、蝶々も舞っています。
1年後、この素敵な庭で、ハヤミさんとモリンさんは結婚しましたよ。