アメリカの作家、ジョンJ.ミュースさんが書かれたこの本、日本的な素敵な表紙です。
裏表紙はもっと好き。
水彩画がめちゃめちゃ上手い。
もともとは英語で書かれ、原題は「Zen Shorts 」
唐傘を持ったパンダが、禅の思想を語ります。
パンダのシズカくんは、風に飛ばされて、ある家の庭に落ちてきます。
そこで、マイケル、アディ、カールの3きょうだいに出会います。
シズカくんは礼儀正しく、言葉遣いも丁寧です。
アディとお茶を飲みながら、「おじさんとお月さま」の話をします。
どろぼうをお客さんのようにもてなし、おみやげが何もなかったので、自分が着ていたボロの上着を脱いで贈る、おじさんの話です。
「やれたのは、ボロの上着だけだ。このお月さまでもあげられたら、どんなにか、よかったんだが」
というおじさんのセリフに、
「お月さまは、だれかのものっていうわけでもありません。こうして、いつもあります」
とシズカくんが言うのは、人が良すぎるおじさんの、実は傲慢な部分を指摘しているのでしょうか。
マイケルとは、木に登って話をします。
日本にはとてもありそうにない、空に届きそうな大木です。
「農夫の幸せ」と名付けられたこの挿話は、いわゆる「塞翁が馬」。
「いいことと、わるいことは、まじりあっているんだ。つぎになにがおこるか、わからない」と理解したマイケル。
禍福は糾える縄の如し、とも言いますね。
兄さんに腹を立てて家出をしたカールとは、プールに入りながら「どろんこ道」のお話をします。
若いお坊さんと年老いたお坊さんが旅をしていると、どろんこ道で、お金持ちの女の人が、着物が汚れると怒っている場面に出くわしました。
年老いたお坊さんが、おぶってあげましたが、お礼を言うどころか、お坊さんをぐいと押しのけて行ってしまうんです。
若いお坊さんは、道中、しばらく黙っていましたが、我慢できなくなり、ついに怒りを吐露します。
「それはとうにおわったことじゃ。どうしておまえはまだあの女をおんぶしているのじゃ?」
シズカくんという名前は、原文では「Stillwater」
静かに澄んだ水は、お月さまをそのままの姿で映しますが、水面が揺れると乱れてしまう、つまり平静な心が大切、という作者の思いが込められているそうです。
1つ目のお話と2つ目のお話はともかく、3つ目のお話は、私にはなかなかクリアできません。
憤怒や嘆きを、くすぶらせず、さらっと水に流せたら、どんなに生きやすいでしょう。