パンダのシズカくん | アトリエぽーぽー

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『アトリエぽーぽー』は、創作を楽しむ絵画教室。
講師あけやまひかるは、お月謝袋やレターセットなど、クラフト製品の販売も行っています。
このブログは、生徒さんと保護者さまへ発信していますが、
絵や工作について、みなさまのご参考になれば幸いです。

アメリカの作家、ジョンJ.ミュースさんが書かれたこの本、日本的な素敵な表紙です。

パンダのシズカくん

裏表紙はもっと好き。

パンダのシズカくん

水彩画がめちゃめちゃ上手い。

もともとは英語で書かれ、原題は「Zen Shorts 」

唐傘を持ったパンダが、禅の思想を語ります。


パンダのシズカくんは、風に飛ばされて、ある家の庭に落ちてきます。

そこで、マイケル、アディ、カールの3きょうだいに出会います。


シズカくんは礼儀正しく、言葉遣いも丁寧です。


アディとお茶を飲みながら、「おじさんとお月さま」の話をします。

どろぼうをお客さんのようにもてなし、おみやげが何もなかったので、自分が着ていたボロの上着を脱いで贈る、おじさんの話です。

「やれたのは、ボロの上着だけだ。このお月さまでもあげられたら、どんなにか、よかったんだが」

というおじさんのセリフに、

「お月さまは、だれかのものっていうわけでもありません。こうして、いつもあります」

とシズカくんが言うのは、人が良すぎるおじさんの、実は傲慢な部分を指摘しているのでしょうか。


マイケルとは、木に登って話をします。

日本にはとてもありそうにない、空に届きそうな大木です。

「農夫の幸せ」と名付けられたこの挿話は、いわゆる「塞翁が馬」。

「いいことと、わるいことは、まじりあっているんだ。つぎになにがおこるか、わからない」と理解したマイケル。

禍福は糾える縄の如し、とも言いますね。


兄さんに腹を立てて家出をしたカールとは、プールに入りながら「どろんこ道」のお話をします。

若いお坊さんと年老いたお坊さんが旅をしていると、どろんこ道で、お金持ちの女の人が、着物が汚れると怒っている場面に出くわしました。

年老いたお坊さんが、おぶってあげましたが、お礼を言うどころか、お坊さんをぐいと押しのけて行ってしまうんです。

若いお坊さんは、道中、しばらく黙っていましたが、我慢できなくなり、ついに怒りを吐露します。

「それはとうにおわったことじゃ。どうしておまえはまだあの女をおんぶしているのじゃ?」


シズカくんという名前は、原文では「Stillwater」

静かに澄んだ水は、お月さまをそのままの姿で映しますが、水面が揺れると乱れてしまう、つまり平静な心が大切、という作者の思いが込められているそうです。

1つ目のお話と2つ目のお話はともかく、3つ目のお話は、私にはなかなかクリアできません。

憤怒や嘆きを、くすぶらせず、さらっと水に流せたら、どんなに生きやすいでしょう。