163日目 インド人の優しさ | ユーラシア大陸自転車横断記 2015〜2016

ユーラシア大陸自転車横断記 2015〜2016

社会科教員を目指している大学生です、自転車でポルトガルから東京にある大学まで帰ります!

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朝、家を出発する時にラディシュさんに「これでご飯食べな」って500ルピー(日本円で約1000円)差し出されました。


500ルピーって、インドでは大金です。


インドの農村部では日給はおよそ100~200ルピー(日本円で約200円~400円)と聞いています、そんな大金とてもじゃないですが受け取ることができないので、ご辞退させていただきました。




農村部では自分たちが食べていくことすら大変。それに加えて、自分が前にインドを旅した時は、インドの人が自分に逆に何かをくれるという経験が皆無であったので、
ラディシュさんのご厚意には驚きました。


やはり、田舎の方と都市部や観光地などでは人の対応が違ってくると思います。



泊めさせていただいただけでも十分お世話になりました、本当にありがとうございました。



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ブッダガヤ目指して進み続けます。
道はガタガタ、牛の糞でベトベト。
あっ、一応国道です、ここ。


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道端の軽食屋でチャイを頂きます、一杯5ルピー(10円)安いです。



インドの田舎町の店は、食べ物のショーケースの中をネズミが駆け回っていたりと、正直、不衛生極まりないです。
しかし、ここまで旅を続けていると、「ねずみって、よく見るとかわいいんだな」と、動ずることなく店で食事をとることができます。「生きる力」が身に付いてきたと思います。



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これがよく食べるサモサ、生地の中にはカレー味のジャガイモとか野菜が入っています、カレーつきで一個10ルピー(約20円)程です。
安くて油っぽくて腹持ちも良い、今までの旅の中で最高のメシだと思います、飽きるという点を除いて。



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道も良くなってきました。

この景色を見て東京ディズニーリゾートを思い出しました。
ゴミと糞、そしてネズミもたくさんいる夢の国ですね。



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ラディシュさんに「君が向かう方向に、ブッダにまつわる有名な場所があるからぜひ寄るといいよ」と言われたので、少し遠回りしてケサリヤという町に来ました。
上は町の途中で見つけた、菩提樹の下で瞑想するブッダを模した像です。





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ケサリヤの大ストューパです。
世界最大規模のストゥーパらしいです。
ちなみにストゥーパとは仏陀の仏舎利(遺骨)を納める所です。
日本の法隆寺や浅草寺などにある五重塔、あれも同じ機能を果たしています。

それとよく見るとわかると思いますが、それぞれの窪みの中には仏像が鎮座しています。



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せっかくなので、建物に登ってみました。(本当はダメです)


ほとんどの仏像がこの像と同じように壊れてしまっています。


インドでは仏教が広まった後、イスラム教が伝わりました。
その教えが伝播し、また12世紀に周辺諸国のイスラム教軍事国家であるアフガニスタンがインドに侵攻を開始する中で、イスラム教による偶像崇拝への批判から、国内の多くの場所で仏像などが破壊の被害に遭いました。


ここの仏像の傷跡も、その時代に残されたものなのでしょうか。



近年においても、一部の過激派イスラム教原理主義者によってアフガニスタンのバーミヤンの大仏や、シリアのパルミラ遺跡が破壊されています。


このような事実を知ると、イスラム教は他宗教に対して不寛容な宗教、というイメージを持ちやすいですが、イスラム教の聖典コーランに「宗教に無理強いは禁物」という趣旨の記述がある通り、元々他宗教には寛容な宗教です。


結局どの時代においても、このような行動を起こすのは一部の過激派(仏教系であるオウム真理教の一件も然り)、その行為によって一般のイスラム教まで「危険だと」拡大解釈してしまうのは、いささか早合点かもしれません。



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ストゥーパから自転車の元に戻ったら、案の定数人に自転車を囲まれていました。



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売店のおばさんがチャイをただで振舞ってくれたので、息子さんと一緒に写真を撮ったりしていると、それを見ていたインド人の観光客の集団が、「俺たちとも一緒に写真とってくれ!」と押し寄せてきて、写真撮影会になりました。そんなに珍しいのですかね、日本人のチャリダーって。



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「今、テント張れる場所を探しています」

と話をしていると、地元の少年らしき人物がお寺に連れて行ってくれるということで、ついて行きました。




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テント張らせてもらえました、室内に。


仏教寺院だったのですが、住職さんがいい人で、夕食にクッキーを貪っていた僕にカップ麺を恵んでくれました。




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次の日は早朝、霧の中出発です。
インドの大気汚染は結構すごくて、霧で視界が悪いのか、大気汚染のせいなのかわからない時があります。





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こんな大量のバナナ、ドンキーコングでしか見たことなかったです。

通っている一帯の地域ではバナナ栽培が盛んな様子でした。


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ガンジス川を渡り、日も暮れてきました。



テントを張れる場所を探していると、二人組の青年に「テントを張れる場所を教えてあげる」と言われ、二人が通っているという英語学校に連れて行ってもらいました。




そこに行くと、どうやらだめらしい、彼らの友達らしき人たちも集まってきて、全員で僕の寝床探しになりました。




しかし、彼ら、怪しい



「そんな手持ちの額じゃ少ないよ、もっと下ろしてきたら?」とか
「お金僕が受け取って、何か買ってきてあげようか」とか、お金関係のことをよく言ってきます。



場所を探す最中、ご飯を食べると、飲み物代と食事代も奢ってくれました。



あまりにも優しくされたのと、前回にインドに来た時の経験、そしてここが栄えた街であることも相まって、この人達は何か企んでいるのではないかと疑念に駆られていきました。




そして、ついに学校の敷地を見つけ、僕がテントを張ろうとすると
「今もっといい場所を思いついた、そこはここよりももっと良い場所だよ、そこに行こう」と、僕がここで良いと言っているのにも関わらず、半ば強制的に連れて行かれました。




僕を先導して、皆が町の郊外に向かっていきます、周囲には明かりもなにもない


僕がこの先に本当に良い場所があるのか、と聞くと
「いい場所だよ、いい場所」とにやにやしながら答えていました、すこぶる怪しい



そして郊外の工場みたいなところに着きました。



この誰もいない様な場所で、こいつらにリンチされて金を奪われたらひとたまりもない、と思っていたのですが、幸い工場の中にも人がいました。



中のおじさんと、青年たちが何か話をしている




どうやら、ここもだめらしい




そして青年の一人がどこかに電話をかけ、二人のお供を連れてどこかに行く




僕は工場のおじさんに中に入れと言われ、事務所みたいな中で青年七人程に囲まれ椅子に座る




彼らはどこに行ったのか、と聞くと、誰かを呼びに行ったのこと




なぜ、さっきの場所にテントを張らせてくれなかったのか、そして、一体、彼らは誰を呼びに行ったのか




考えれば考えるほど、彼らを疑いの目で見てしまう




1日走って疲れがピークに達していたこと、そして彼らの言動に不可解な点が見受けられることから、ついに僕は彼らに正直な思いを告げました。




僕「僕は前回インドに来た時に人にたくさん騙されていて、正直に言うとあなたたちも信用することが出来ません。なぜ何回も場所を変えたりするのでしょうか?もう僕は一人で寝床を探します、ありがとうございました。」





気持ちをオブラートに伝える程の英語力がなかったので直球で伝えることになってしまいました。




青年たちの一人「僕たちは嘘ついてないよ、本当だよ」



と言われましたが
前回インドに来た時、出会った9割のインド人に嘘をつかれた経験から




僕「嘘つく人は皆そう言うよ」




と、捨台詞を吐いてその場を後にしようとしました。




すると、




青年「ちょっと待って!さっき行った奴らが場所を見つけたって」




と言ってきました。



本当はもう行こうと思ったのですが、隣の建物らしいですし、もし変なことをしようときてきたら、すぐ自転車で逃げてやろうと決めて向かうことにしました。   



その建物につくと、先に出て行った三人組が、ゲートでおばさんとなにやら交渉していました。



海外で街中、青年、というとこれまでの経験から危険率が一番高いのですが、女性が出てきて少し安心しました。




どうやらここはヒンドゥー教の寺院のようでした。外とは門で隔てられていますし、ここは本当に安全そうです。




中でテントを張らせていただけることになったみたいですが、僕が中に入るにあたって、危険な物を持っていないか、荷物の中をチェックされることになりました。




ここにきて、一番不審な人物は僕なんだなとすごく感じました。




チェックも済んだところで、青年たちは「じゃあ、僕たちはこれで」
と、帰ろうとしました。


彼らは僕を騙そうというわけではなく、本当に寝床を探そうとしてくれていただけだったのです。

僕は彼らに謝罪しました。全身全霊の土下座で。

すると彼らは「Welcome to India」

とだけ言い残して残して帰って行きました。

自分たちの時間を削り、そしてご飯までご馳走した挙句に、酷い言葉を浴びせられる、正直彼らは僕に対して怒る権利があったと思います。
しかし、彼らはそれをしなかった。彼らが唯一僕に放った言葉の裏には、人を騙すばかりがインドではない、っという思いも含まれていたのかもしれません。



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その後は寺院の人たちにも親切にされ、無事に就寝することができました。本当に彼らに感謝です。



海外を旅する中で、色々なことに用心することに越したことはありません。


しかし、用心し過ぎることが時に人に不快な思いを抱かさせてしまう可能性を孕んでいることも、常に意識しなくてはなりません。特に人との関わりが多くなる旅において。


次に彼らと出会うことができたなら、しっかりとお礼をしたいと思います


また明日も頑張りましょう


162日目 80km
163日目 112km