沖縄米空軍の想い出-4 | Bokensdorfのブログ

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国際結婚から考えた「隠れた構造・隠れた文化」について
加えて「世の中の仕組みは実はこうなっている」について書きます

「アメリカ人は安保条約があるからと言って日本人の為に命を懸けてくれるのだろうか?」

幹部候補生学校の学生だったとき、ある航空自衛隊の高官が講演に来校して、在日米軍の高官とその話しをしたことを紹介しました。

「A大佐に米軍は日本の為に血を流すだろうかと聞いてみた」
「A大佐は『軍人として何をしなければならないかを私は母国の人たちに身をもって示すつもりだ』と言った」
「彼は立派な軍人だ」
「彼のような司令官がいる限り、日米同盟は安泰だ」


私はこの話しを鵜呑みにすることができませんでした。
何故かというとそこには「積極的な動機」が語られていないからです。
軍人だから命令は実行する、それは当たり前の事だけれど、
それじゃ「なぜ命令を実行するのか?」という説明がない。


それから数年後、私は幹部になって沖縄で米軍と協同訓練をする事になった訳です。
同年代の若い米軍人にかねてからの疑問をぶつけてみた。
「アメリカ人は安保条約があるからと言って日本人の為に命を懸けてくれるのだろうか?」

彼らの回答はこうでした。

「現在の情勢から言ってロシアと日本が単独で直接武力衝突するシナリオは考えられない」
(当時の日本の脅威はロシアでした=領空侵犯してくるのはロシア空軍)

「それよりも中東やどこか他の地域で紛争が起こって極東における日本の存在がロシアにとって戦略上の問題となった局面でロシアと日本の軍事衝突が始まる、というほうが有り得るシナリオではないか。それが中東であれば石油の確保は日本の生命線であるし日本の防衛は米国にとっても自国の利益と安全保障に多いに関係するものだから米国がロシアの日本に対する攻撃を無視する理由は考えられないだろう。君の意見はどうなんだ?」

私は自分の質問の意味をこのとき初めて理解して冷や汗をかいた。

幹部候補生学校で聞いた話しは「学生向け」の広報でしか無かったのです。
(本物の自衛隊高官があんなに甘い話しを信じているとは思えない)


事情を今の時代に移してみると、どうですか。
既にロシアは消滅。
昔は中国などまったく話しにも昇らない国だったが
現在では日本の周辺国最大の軍事力を持つ国です。

しかし中国が直接日本に戦争をしかけてきて、中国に利益がある状況ではありません。
日中が単独で直接対決するシナリオはとても考えにくい。

日本が戦争をしかけられるときはどんなシナリオか、あなたのシナリオはなんですか。
そのとき、米国は日本とともに戦わない積極的な理由が考えられますか。

米軍は日本を防衛する為に日本に駐留しているのではない。それは子どもでも分かります。
日本にいるのは、米国の同胞や家族の安全の為に役に立つから、です。



戦争は決して起こしてはならない。それは軍人がもっとも切実に感じている事です。戦争をする為に軍隊が存在するのではない。伝家の宝刀は「所持している事」を相手に知らせるだけで十分なのです。決して抜いて使う為ではない。ただし、抜いたら切れる、という鍛錬は命懸けでしておかなければならない。

そういう仕事を、私たちは額に汗して一生懸命しました。
沖縄のヘリコプター事故で鬼の首を取ったような報道をする日本のメディアたち、君たちは自分の同胞や家族を守る為に命懸けで働いた事がありますか?

「アメリカ人は安保条約があるからと言って日本人の為に命を懸けてくれるのだろうか?」

そんな幼稚な質問を、まだしますか?





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