無二の親友は殺人犯? 素人探偵をやった末、彼は……
◇もう探偵はごめん◇ -I'll Never Detective Again-
コーネル・ウールリッチ 稲葉明雄 訳
トム・ナイとディック・ウォルシュとは無二の親友の間柄だった。同じ大学を出、同じアパートで暮らし、いっしょに美人の尻を追いかけ、いっしょに女から逃げ、ひとつの背広を着あう仲だった。ところがある日、そのトム・ナイを幸福と不幸が一度に襲ったのである。
トムとマーシャの結婚が各新聞にいっせいに報じられ、それを祝う祝賀パーティーが、マーシャの家の主催でパーク=アシュレー・ホテルで開かれた夜である。宴のたけなわに、その夜社交界にデビューしたばかりの、うら若いマーシャの妹が変死を遂げだのだ。死因は誤って親指に突き刺さった薔薇の棘に毒が塗られていたためだった。そしてその薔薇というのが、トムが婚約者に贈った花束の一輪だった。警察の嫌疑はトムに向けられ、ディックは親友にかけられた見当違いな濡衣を晴らすため、素人探偵をかってでたがそこで衝きあたったのはある恐るべき事実だった!
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1.札束恐怖症
(Money Talks)
……お店の売上金275ドルを盗んでしょっ引かれたアル。しかしアルはそのお金を身につけておらず、ひとまず留置所へ。アルは紛れもなくお金を盗んだが、お金は意外なところに。問題は「どうやってアルの無実をでっちあげるのか」!
2.もう探偵はごめん
(I'll Never Detective Again)
……トムが結婚することになった。婚約お披露目パーティーでトムは婚約者マーシャに薔薇の花束を贈るがマーシャより先に花に触った妹が変死を遂げた! 警察は当然トムを疑うが無二の親友のディックは反発して素人探偵を行う。前にトムが関係したフォーテスキュウ嬢のところに向かうが……
3.バスで帰ろう
(Last Bus Home)
……キャロルは自宅前で彷徨いでいた男がフランクという名前で、キャロルの実家のお隣さんであることを知り、意気投合する。2人は6時に出るバスに乗って故郷に帰ろうと決めるが、フランクはお金を盗んでしまった。それを返しに行こうとその家を訪れたら……
4.歌う帽子
(Singing Hat)
……「裏窓」参照。
5.おまえの葬式だ
(That's Your Own Funeral)
……「わたしが死んだ夜」参照。
6.モンテズマの月
(The Moon of Montezuma)
……メキシコ・シティーから夫に会いにはるばるやって来た母親。金髪に青い目の赤ん坊を抱いて……しかし指定された住所にいたのは2人の女性。言われるまま家に上がるとある部屋には赤ん坊の死体が……そして夜……
7.黒いリズム
(Papa Benjamin)
……「魔術ミステリ傑作選」参照。
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「もう探偵はごめん」です(・∀・)
「札束が怖い」男の話、親友の無実を信じた男の残酷な運命、南米のとある恐ろしい儀式の話等々6編。
この中で1番ウールリッチ=アイリッシュっぽいのはやはり表題作ですね。素人探偵=ハッピーエンドとは限らない。善人に鞭打つ感じはやはりアールリッチぃ!
なお、3はこちらの元になった短編です。どっかの後書にも書いてありましたが章名や数字の代わりに時計を書かれるとこっちまで主人公の2人になった気分に……
ウールリッチ=アイリッシュ✖️怪奇幻想はあまり見かけないし、知られていませんが事実が明確に描写されていないからこそ怖い。ウールリッチって文章上手いですよね、とこういう時思う。
「もう探偵はごめん」でした(・∀・)/
もし、あなたの近くで犯罪が行われたら? もしそれが当時は正義と見なされていた、としたら?(*^o^*)/