今まで抱えていた孤独や不安が爆発した。それが僕の人生を破壊したーーー
◇僕が死んだあの森◇ -Trois Jours et Une Vie-
ピエール・ルメートル 橘明美 訳
母とともに小さな村に暮らす十二歳の少年アントワーヌは、隣家の六歳の男の子を殺した。森の中にアントワーヌが作ったツリーハウスの下で。殺すつもりなんてなかった。いつも一緒に遊んでいた犬が死んでしまったことと、心の中に積み重なってきた孤独と失望とが、一瞬の激情になっただけだった。でも幼い子供は死んでしまった。
死体を隠して家に戻ったアントワーヌ。だが子供の失踪に村は揺れる。警察もメディアもやってくる。やがてあの森の捜索がはじまるだろう。そしてアントワーヌは気づいた。いつも身につけていた腕時計がなくなっていることに。もしあれが死体とともに見つかってしまったら……。
じわりじわりとアントワーヌに恐怖が迫る。十二歳の利発な少年による完全犯罪は成るのか? 殺人の朝から、村に嵐がやってくるまでの三日間――その代償がアントワーヌの人生を狂わせる。『その女アレックス』『監禁面接』などのミステリーで世界的人気を誇り、フランス最大の文学賞ゴンクール賞を受賞した鬼才が、罪と罰と恐怖で一人の少年を追いつめる。先読み不可能、鋭すぎる筆致で描く犯罪文学の傑作。
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1999年。アントワーヌは普通の12歳。母親と2人暮らし、父親は離婚し、時たまお金とクリスマスプレゼントが贈られる。住んでいるボーヴァル村は木製玩具制作会社ワイザー社の経営で成り立っている小さな、昔風の村だ。ガキ大将のテオは気に食わないし、内気な性格だから1人で森にツリーハウスを作る方が性に合っている。そのお供はお隣さんデスメット家の子、レミとその犬、オデュッセウスだ。そう、ごく普通の12歳の男の子だった。その時までは……
きっかけはオデュッセウスの死だった。車に轢かれた瀕死のところを、デスメット氏がとどめをさしたのだ。それはアントワーヌにとって理不尽なものだった。ツリーハウスを跡形も無く破壊して、何も知らないレミにくってかかるほどの。そう、持っていた枝がレミのこめかみに当たった、それだけ。それだけでレミは死んでしまった。
レミは死んでしまった。どうしよう。今から自分は犯罪者。殺人者だと分かった時の村の目が恐ろしい。それには母はどうなる。アントワーヌはレミの遺体を隠すことに決めた。森は広大で滅多に人も入ってこない。動かされていない倒木の下にーーーやがて村は大騒ぎになるがアントワーヌはもちろん本当のことを言えない。逃亡するために荷物を用意したり、罪の呵責にとらわれて薬を大量に飲んで自殺未遂をしてもなお。そのうち村は冬の大嵐に襲われる。
2011年、アントワーヌはボーヴァルを出て医者になった。夢は恋人ローラと外国に出ること。つまり永遠にボーヴァルを出ること。しかしやはり母を置いていくことはできず、時たまはボーヴァルに帰る。が、そこに再び落とし穴が、それも思いもよらない落とし穴が待っていようとはーーー
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「僕が死んだあの森」です(・∀・) まさかの3年ぶりです、ジーザス。
本書はノン・シリーズですが、ヴェルーヴェンシリーズと同じようにミステリーです。主人公は子ども、それも図らずも殺人を犯してしまった少年の物語です。
計画などしなかった、本当に過失以外の何者でも無い、だが人を殺してしまった、色々な人の人生を台無しにしてしまった、という罪の重さ、呵責がアントワーヌを苛む描写が生々しい。読んでいてこっちの心臓がバクバクよ……心臓に悪い。もしかしたら少年犯罪というのは元はこうだったのかも知れない…‥今はもはや希少例な気がしますが←
2011年のアントワーヌにはまさかの落とし穴が待っています。その為の彼女だったか! という感じ。自分で罪から逃れる道を塞いでしまう、罪から逃げおおせよう、などそうは問屋が卸さない、と言われている気分に……しかも止まることになって知った驚きの真実。確かにアントワーヌの人生はあの森で死んでしまった。罪を犯した確かな証が手元に届いても、いずれは警察が彼のDNAを調べる機会が出来るかも知れない。いつ爆発するか分からない時限爆弾から手を離せなくなる、この状態こそ罪からは逃れられない、という証!
「僕が死んだあの森」でした(・∀・)/
異国に憧れ、国を飛び出した親王。待ち受けるのはどこまでも怪奇と幻想ーーー(*^o^*)/