澁澤龍彦 No.2◇高丘親王航海記◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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幼い頃の憧れを胸に天竺へ。その旅の行方は……






◇高丘親王航海記◇

澁澤龍彦



貞観七(865)年正月、高丘親王は唐の広州から海路天竺へ向った。幼時から父・平城帝の寵姫・藤原薬子に天竺への夢を吹きこまれた親王は、エクゾティシズムの徒と化していたのだ。占城、真臘、魔海を経て一路天竺へ。鳥の下半身をした女、良い夢を食すると芳香を放つ糞をたれる獏、塔ほど高い蟻塚、蜜人、犬頭人の国など、怪奇と幻想の世界を遍歴した親王が、旅に病んで考えたことは…。遺作となった読売文学賞受賞作。



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「高丘親王航海記」です(・∀・)

作者の澁澤龍彦は長くフランス文学研究者、アンソロジストとして活躍していたので実は小説の数は多くありません。本書は彼の初の長編作品として描かれましたが喉頭癌に冒され他界して最後の作品になりました。



主人公、高丘親王は先日ちょうど読んだ「三度目の恋」でも出て来る、実在の皇子です。一時は皇太子でもありましたが薬子の変で廃嫡、仏門に入りました。幼い頃の親王は薬子によって天竺に行く夢を掻き立てられたわけで、その人物によって色々な面で生き方の指針を決められたわけですね。



親王は唐をはじめ、今で言うタイやミャンマー、ベトナム等々色々な国にたどり着き、その度幻夢を見ます。鳥の体を持つ女、夢を喰う漠、蜜を産む人……実際には存在しないと分かっている、しかし時代は今より1000年も昔で、迷信や伝承は今よりずっと真だった。その中でそれがどうして夢だけだと言える? 



現実と夢を揺蕩う感覚は、おそらく生と死の間を彷徨うことに似ている。澁澤龍彦はさまざまなものを蒐集していたし、幻想世界を旅することはそれを蒐集することであり、それは「ドラコニアの夢」にも反映されていますね。





映画『文豪ストレイドッグス Dead Apple』の最終決戦場である骸砦で自らが既に死んでいたと気付いた澁澤は魔人フョードル・ドストエフスキーの策略で特異点を取り込んだ変質体で蘇るも、異能『月下獣』で虎化した敦と戦って今度こそ本当に満足の中で死にます。高丘親王も最期は虎に喰われて死にます。彼は声を失くした自分と親王を重ね、最後は死に恐怖することなく、次の世界に旅立ちたい、と願ったのかも知れません。



「高丘親王航海記」でした(・∀・)/ 

突然その惑星に連れて来られた14人。1人、また1人と人が死にーーー(*^o^*)/