長編お話「その顔に、根の跡」20 | 文学ing

文学ing

森本湧水(モリモトイズミ)の小説ブログです。

焼肉屋で解散して、
酔眼で家に帰るために駅に向かって歩いていたら携帯電話のコールが聞こえた。

鞄から出してみたら知らない番号だった。知らない番号には基本的に出ない。
でも私は今酔っぱらっていたのでなんの疑問もなく、取ってしまった。

「はい、もしもひ。」
「ああ、宗田か。」
「誰?」
声に覚えはあった。
「岡村。」
「岡村くん? 番号教えたっけ?」
「康人から聞いた。」
岡村くんとヤッちゃんは中学の頃同じバスケ部だったのだ。だから結構仲がいい。
「どうしたの?」
私はよれよれの声で聞いた、と思う。

「君今どの辺?」
と岡村くんが訊く。

「えっとね。駅にいくところ。郵便局の隣のファミマの近く。」
と私は答えた。

「じゃあ俺これからそこまで行くからさ。そこのファミマで待ってろよ。」
「なんで。」
私は若干冷静になって答えた。

「なんだ、その、呑みなおうぜ。この近くに俺の好きな店あるから。
まだやってるから。」
と岡村くんは電話の向こうで言った。

のみなおす。
私は岡村くんが、よりによって岡村くんがそう言った意味を、
どんよりな頭で少しだけ考えた。