幸せは人を馬鹿にする。
いわゆる平和ボケというやつだ。
彼氏と同棲を始めてからというもの、
すっかりと深い思考をやめてしまった。
やめたかったわけでもないし、
無理にやめたわけでもない。
ああいった思考は、
ひとりですることがなくて、
それでもなにかをどうにかしないといけない、
現状を変えないと幸せになれない。
そういう焦燥感から来ていたのだ、ということを
今更思い知った。
昔は誰と付き合っても、
もっといい未来がほしかった。
誰からも必要とされたかったし、
一人で生きていける力がほしかった。
だからずっと焦っていたし、
だからずっと考えていたのだ。
そういうことを考えなくなったのは、
結婚とかそういうのが現実的な歳になってきて、
これ以上はもういいと思える相手に出会って、
捨ててしまったのだ。
深い思考や自省を。
そうやって人間は社会の中で大人になる。
忙殺される。
新札みたいな切れ味の、
鋭利な心が丸くなる。