シュタイナー学園の音楽発表会 | ホルン吹き竹内修「Canoro Corno♪」

ホルン吹き竹内修「Canoro Corno♪」

canoroとは「歌うような」「音色の良い」のイタリア語

昨日はお弟子さんの所属するオケの本番を聴きに行って来ました。シュタイナー学園に通う男の子を小学校5年生から今年で6年教えてるんです。(そこにオケがあってホルンはずっとその子だけです。)

シュタイナー教育については私は詳しく説明できないのでお調べください。でもいわゆる「お勉強」をする教育ではなく、個々の感性や芸術的視点からそれぞれの個性を尊重する教育なのかなと思っています。

聞いた話では、ここでは小学校3年生くらいまではいわゆる習い事は推奨していないそうで、おそらく偏りのある人間にならないようにという配慮なんでしょう。とは言え中には当然ピアノ、弦楽器など早くから始めないといけないようなものなど含め、目的を持って習っている子はいるでしょうけど。

学校の音楽などでもとにかく優しい音を追求して、刺激のある音作らないようにしていると聞いたことがあります。

こういう学校のオケ、どんな音がするのかとても楽しみで、今までにも行きたかったのですが時間が合わなかったり、この2年はコロナ騒ぎでできなかったりで、今回ようやく聴きにいくことができました。


学校全体の発表なので小学生から高校生まで何かしらステージに立ちます。会の構成は1部ライアー、2部コーラス、3部オーケストラという3部構成です。



で、私は2部の終わりくらいに行ったのでコーラスの後半をロビーで聴いていたんですが、その声の美しいこと!見にくいですがプログラム中「ひとりぼっちの羊飼い」から聴いたんですが、低音から高音まで抜けるような美しさ。決して声を張らない、でも充分ホールに響く。それはスピーカーを通していてもわかります。結構難しい曲だと思うんですが、軽やかに歌っていました。

「天使にラブソングを」の「Hail Holy Queen」アップテンポで楽しい曲です。派手ではないですが明るい声で充分楽しさが伝わってくる。あー、最初から聴きたかった。普段合唱って特に学校のコーラスって興味ないんですが、これはそう思える歌声でした。


休憩挟んでオケの部。モーツァルトの28番1楽章の出だし4音聴いた途端引き込まれました。美しいフォルテ!どの楽器も無理がなく古楽器を聴いているような軽やかさ。ピアノの繊細さ、ティンパニーも妙にシンフォニックでなくちゃんとオケの中に居て出しゃばらず、かつ支配している。トランペットもこの曲音高いんですが決して張り詰めた音でなく。素晴らしいモーツァルトでした。「カヴァレリア」も美しかった!ベートーヴェンの1番1楽章はちょっとギリギリ間に合ったのかな、という感じでしたが不思議とちゃんとベートーヴェンでした。


私が教えているICU高校と一緒で全ての楽器が揃っているわけではないので、例えば昨日はファゴットのフレーズをトランペットに持っていったり、コントラバスがいないのでチェロパートを分けたりと工夫していましたが、そんなことも参考になりました。

全体的によく気にされる「音程」「縦の線」が合わないことも多いし音間違えも無くはない。ダイナミックレンジも決して広くない。でも充分伝わるものがある。こういうベースをきちんと作り上げた上でそれを発展させていくのが子どもの音楽教育としては絶対必要です。私は子どもたちにホルンを、他の楽器でも教える時に無理はさせません。小、中学生はまだ体力差もありますし上達の時間もまちまちです。難しいことをやるのは体と思考がある程度出来上がって来て自分でいろんなことが理解できるようになってからでいいと思っています。それまでは個々のペースを考え無理のない音作りを中心にしておけばそこから先は高校生になって心身ともに大人になってからで遅くはないでしょう。そう考えるとシュタイナー学園の子達から出てくる音楽は私の理想に近いものを感じます。


オケのステージになって指揮者が出て来た時に「あれ?なんか知り合いに似てる?」と思って改めてプログラムを見たらこの指揮者、私の大学時代の先輩でした^^;なんと世間は狭い。オーケストラ週に1回指導されてるらしいです。いい指導されてるなあと。

そして終演後ロビーでニコニコこちらを見てる方がいる、と思ったら大御所チェリストの知り合いでした!

この方は父の芸大時代の後輩で私の住む三鷹市の井の頭地区を中心に活動する音楽グループの重鎮でもあるお方。なんと世間は狭いなあ。


良い楽音を聴いて久しぶりの方々にお目にかかれて、幸せな1日でした。