WSPA による野良犬対策マニュアルを、常総野犬対策に!(5) | CAPIN(キャピン)公式活動報告

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犬の収容施設を建設する際のヒント、および設計方法
WSPAが発行している「動物保護施設の設計と運用」は、犬の収容施設を建設する際の一般的な方針や運用方法を決めるときに参考になるでしょう。 しかし地方自治体は、犬舎を短期滞在用の施設として提供することしか考えていないことが多く、運用予算も低く抑えられる場合が多いでしょう。特にこのような状況下で必要なことがらに焦点をあて、取り組むべきことを以下にまとめました。 動物保護団体が運用している動物保護施設がうまく機能している場合には、自治体がこのような団体と契約を結び、野良犬を条例で定める期間収容するために、その団体の施設にある適当な犬舎を借り受けるという協力体制を作ることもできます。 自治体が独自の犬舎を用意しなければならない時は、用意した土地に施設を設計して建設するか(専用施設)、既製のプレハブ施設を建てます。使い勝手の良いプレハブ施設については、この付録で後述します。

専用の犬舎を建てる場合には、単に直線の壁を築いて簡単な屋根をのせるだけでもかまいません。簡単な構造の例を図で示しました。 このような、屋根を保持するだけの設計は、構造が簡単なだけに使いやすく管理もしやすくなります。通常の捕獲器具からの犬の出し入れが容易で、犬に怪我を負わせることもなく、作業者も安全で、建物を壊す危険もありません。犬舎は基本的には、風雨や他の動物あるいは人から、犬を守るような構造にします。 犬舎を設計する前に、その地域で利用できる施設がないかをまずは調べます。このときに、その地域の建築規定やこのような収容施設についての規定がどのように定められているか、また、運営するスタッフが留意しなければならない管理基準などについても調べます。 財政事情がゆるす範囲の最も理想的な建物は、将来的に維持費が少なくてすみ、日常の犬の世話や掃除が容易なものです。手間のかかる作業は、せずに済ませようとしたり、結局はやめてしまうことにつながります。 建物。厚さ150mmのしっかりした土台に、厚さ150mmのコンクリートの基礎を流して底面を造ります。これにコンクリートブロックかレンガを積んで壁にし、目地を平らに埋めて、できるだけ凹凸がない壁を作ります。このように壁の表面の凹凸が少ないと、洗い流すのが容易になります。表面に装飾などは必要なく(初めは)、十分に平坦であれば病原菌が増えることもありません。表面がざらざらしたブロックしか利用できない時には、セメントかしっくいを表面に塗ります。 木製の骨組みや扉枠は、犬が引っかいたり咬んだりして完全に壊してしまうので、使わない方がいいでしょう。犬舎の維持に手間がかかり、病原菌が繁殖します。怪我をしている犬にとっても危険です。 共用の運動場を柵で囲う場合は、鋭角の場所を作らないようにします。鋭角の隅があると、攻撃的な犬がおとなしい犬をそこへ追い込み、救出に入った人にとっても具合の悪い危険な状況を作り出します。 屋根は、既製の鉄製の板やヒシプレートの板を利用すれば、経済的なものができます。断熱効果のあるものを用いれば、温度調節だけでなく結露防止にもなります。板はブロックの壁に固定しますが、必要に応じて角材で小屋組を作ります。屋根が床から2m以上の高さにあれば、木材を使用しても問題ありません。


排水設備: 建築する設備によっては、犬舎の排水を地域の下水道に接続することができるでしょう。このような接続ができない場合は、犬舎の清掃排水などの水を運動場の外の溝へ導き、これをまとめて地下空間へ流し込むようにします。設備は、常に地域の衛生状態を考慮し、衛生基準を満たし、環境に配慮したものにします。ある区画の排水が隣の区画を通って流れていくような設計には決してしてはいけません。感染症が瞬く間に蔓延します。近くを流れる川に排水を直接流すのもいけません。


水: 病気を蔓延させないために必要な重要な項目です。水の供給量に制限があるようなら、犬の飲み水は上水道を使用し、掃除用の水の衛生度はそれほど重要ではないので、川や井戸の水を利用します。


寝場所: 多少なりとも犬に快適さを与えるために、寝床を一段高くしたり、使い捨てできるダンボールを置いてやったりします。使い捨てではない固定空間の場合は、空間の一面あるいは縁の一部を切って、清掃排水が流れ出しやすいようにしておきます。


長期収容犬舎: 一般市民が訪れて自分の家に引き取る犬を見てまわれる保護施設などの長期収容施設は、もう少し見栄えのよいものにしなければいけません。 このような犬は長期間収容される場合が多く、品種・体格・性別を考慮すれば数匹の集団で飼育できる犬や、相当の広さの運動場のついた区画で個別に飼育しなければならない犬がいます。 このような種々の状況に対応するためには、数種類の建物がおそらく必要になるでしょう。

図面1,2
いずれも最も簡単な設計のもので、固定された直線の壁を隣同士の区画で共有するものです。


それぞれの区画には、人が通れる大きさの一枚板あるいは鉄格子の出入り口を設けます。単に犬を収容するだけの経済的な施設で、経過観察もできません。 犬舎は平らな屋根で覆ったもので、換気用に屋根板と壁の上部の間に隙間をあけます。 小屋部分と運動場の広さはもちろん自由に設計できますが、もしそれぞれの区画の広さが変えられるような造りならば、もっと多数の犬を収容できます。

図面3
この図面は、犬を一匹ずつ世話をするための最低限の施設で、4通りの使い方ができます。


上半分の犬舎は、犬舎部分も運動場部分も、お互いが見えない壁で仕切られた完全に隔離されたもので、運動場の長さが2通りあります。 下半分の犬舎は、運動場の仕切りが金網になっており、隣の区画の犬を見たり触れたりできます。こちらも運動場の広さは2通りあります。このような配置にすると、世話をするのに必要な空間を節約できます。すべての犬の観察、餌やり、掃除を1本の作業通路から行なうことができます。 排水溝は中央の通路の地下に集め、通路の中央にある安全扉は、犬の脱出を防ぎます。 屋根は、犬舎部分と運動場(広い場合にはその一部)を覆うようにします。 広さは、もちろん状況に合わせて自由に設計できます。

図面4

図面3とたいへんよく似た使い勝手のものですが、犬舎区画は作業用通路の片側にだけしかありません。 このため、経済性の面からは劣りますが、立地条件に制約がある場合に用いることができます。 通路と犬舎、および運動場の一部に簡単な屋根をつければすみます。 共用の運動場スペースのあるものを示しましたが、この運動場スペースだけを作業用通路をはさんで反対側に設置しても構いません。この場合、作業用通路の犬舎とは反対側に出入り口が作られますが、こうすることにより他の犬舎に入っている犬から運動場を隔離することができます。このほうが具合がよい場合もあります。

円形犬舎
PARASOLは、ウッドグリーン動物施設がケンブリッジ近郊にあるキングスブッシュセンターに建設した独自の円形犬舎で、そのデザインは著作権登録されています。この犬舎は、15年以上にわたって独自の犬舎管理システムとして成功を収めてきました。従来の犬舎に比べて、犬にとって居心地のよい住処となり、作業員にかかる経費が少なく、維持費も少なくて済みます。

建築技術と改良経過
もともとは米国工兵隊が設計した組み立て式の構造物で、確保した用地へ簡単に輸送できて、良質の建物をその場で短時間に組み立てるためのものでした。加工済みの高品質の部品からなり、装飾は施しておらず、維持費もかかりません。PARSOLの最初の試作品2種は、1993年初めにエディンバラ近郊にあるスコットランドSPCAのロジアン動物福祉センターに建てられ、高い評価を得ています。

動物の保健衛生基準
PARASOLの建物は、現在入手できる動物舎の最高の品質を誇るもので、環境衛生関係者と獣医専門家が、動物の取り扱いに関する最近の研究成果を踏まえて協同で設計したものです。 イギリスの自治体が認可する動物預託施設の基準の規定に関して、環境保健局が発表した最新の衛生基準や建築基準を完全に満たしています。

PARASOLの動物収容システム
PARASOLの建物は、動物保護施設、個別収容施設、出産用犬舎、作業犬用犬舎として、今までにない新しく斬新なものです。動物の行動に関する研究と近代の工学技術がやっと融合して、理想的な動物舎が生まれました。

設計目標
犬の取り扱い、掃除、餌やりを、一つの建物内で容易に行なえるような完備したシステムを作り上げる。
引き取り手のない犬が、短期あるいは長期に収容されることによるストレスを少なくする。
感染症の蔓延の危険が少ない、衛生的で居心地の良い環境を作る。
加工済みで維持管理の容易な建築資材を近代工学の設計技術で開発し、優良な建築物を作成する。
据え付けが容易で品質のそろった製品を提供するために、製造工程や組立工程を規格化する。
大きさと間取り
PARASOLシステムでは、組み立てユニットを使って、それぞれの設置場所に合った大きさと、間取りの融通の利く犬舎を作ることができます。空間的に余裕があれが、円形の建物は土地を最も有効に利用できる形であり、暖房や換気あるいは清掃作業の面からも、たいへん効率の良いものです。

標準的なPARASOLシステムは、内装を変えて猫用の施設にしたり、管理室、受付、医療設備の空間を設けることもできます。また複数のPARASOLをつなげることも可能で、連結部分には、また違った用途に利用できる空間が出現します。

組み立てユニットが融通性に富むので、標準仕様でない様々な間取りを提供できます(設計範囲内で)。ご要望をお聞かせくださればご相談に応じます。

PARASOLの標準仕様
犬を15頭収容できるPARASOLは直径が12メートルあり、中心の核になる部分を16等分された区画が取り巻きます。そのうちの1区画を中心部にある作業空間への通路にし、その作業空間から犬舎として利用する15区画に出入りします。 それぞれの犬舎区画は、内側の寝場所と外側の運動場に分かれていて、いずれも屋根があります。寝場所と運動場の間の壁には出入り口が切ってあり、開閉アシスト機能のある扉が取り付けてあります。必要に応じてくぐり戸を取り付けることもできます。 隔壁の内側は、すべて規格寸法の組み立てユニットになっており、PARASOLシステム専用に開発した防水加工した合成樹脂の板を使っています。

寝場所部分と作業空間および通路区画の屋根部分は、密閉されていて暖房効率が高く、結露しない構造になっています。
寝場所部分は2メートル四方の大きさがあり、必要に応じて床から一段上げた寝床を設置できます。
運動場はおよそ4メートル四方で、屋外とは金属製の網や鉄格子で仕切られています。中心部区画の放射状隔壁は、この鉄格子より外側まで伸びていて、「くしゃみ感染防止柵」となります。
PARASOLの通路部分には、貯蔵庫と調理スペースが一体になった設備を取り付けることができます。この一体型システムは、作業台、流し台、電熱式温水器、照明器具、給水口を装備しています。 気候や天候に合わせて調節できる冷暖房設備が完備しています。屋根の先に設置された換気扇からは、中心の作業スペースと各犬舎スペースに新鮮な空気を取り込むことができます。1時間に16回空気を入れ替える換気能力があります。各犬舎に換気口があるため、空気感染する病気の防止にはきわめて有効です。 PARASOLは、排水構造を作った上で表面に滑りにくい防水加工を施した鉄筋コンクリートの土台の上に組み立てられます。 全く一からの施工も請け負いますが、予め用意された土台の上に誰にでも簡単に組み立てられるセットを「平たく」梱包してお送りもします。イギリス国内外での組み立ての指導も行なっています。 

PARASOLの利点
独特な設計の円形PARASOLには、従来の犬舎よりも数多くの利点があります。 円形にする事により通路が不要になり、中心部の空間から作業者一人が効率よく犬の世話をすることができます。 予め排水設備が用意され、床や壁の表面に防水加工を施してあるため、衛生管理が楽です。給水用のホースの接続口も用意されています。PARASOLは、作業労力を減らし、維持経費を大幅に節約できるよう設計されています。 これまでの実績では、基本的な清掃と餌やりに要する時間は、15の犬舎が直線状に配置された建物で行なう場合の半分以下になり、これにより人件費が削減できる上、作業員が犬の相手をしてやる時間が増えます。 建物が円形だと、隣の犬が見えないので関心が薄くなり、犬が受けるストレスの程度も軽減されます。また、外壁が曲線なので、建物への人の出入りも見なくてすみます。 この結果、犬は落ち着き、騒ぐ程度も大幅に減るので、従来の犬舎よりも騒音がずっと少なくなります。隔壁と屋根による防音効果に加え、外縁にある運動場スペースにも防音効果が期待できます。 高品質の建築素材を用い、組み立てユニット式になっていることで、建設時間や経費を節約できるとともに、外装や内装などの体裁を整える必要もなく、完成後の維持管理の心配もいりません。設計耐用年数は25年です。 イギリスでは、犬舎の持ち主が責任を負うべき犬舎の管理についての基準が厳しくなる傾向にあります。PARASOLは、このような基準を満たすよう(あるいはそれを上回るよう)設計されており、高価な設備を追加する必要は全くありません。 PARASOLに標準装備されている暖房設備と換気システムは性能がよく、費用に対し高い効率が得られます。長方形の建物に同じような換気システムを設置しようとすると、高価な排気管を張り巡らせ、各犬舎に換気扇や暖房装置を取り付けなければなりません。

建築計画
最初に全体的な計画を策定して、これに細部の計画を組み込んでいくようにすることを強くお勧めします。あらかじめ考慮に入れることとしては、以下のようなものがあります。

候補地の立地条件や物理的状態(過去の用途、既存の建物の有無や過去の業務形態、交通手段、実際の利用者や見学者の居住地からの距離)。
将来的な展望(既存の施設の増改築が可能な空間の有無、増改築に対する法的規制の有無、視覚・景観的な問題、不要な設備の撤去)
用意したい施設が資金を調達できる種類のものであるかどうか(助成金が利用できるか、投資効果の評価)
最初にこのような見積もりを行なうと、設計目的や財政的展望が明確になり、当座のあるいは将来的な事業展開がしやすくなります。

次に予算を立て、設計の概要を決めますが、建物の位置、形、入り口の位置、排水構造などについて設計事務所や排水設備の専門家と相談するために、現地で実際の調査を行ないます。この過程を踏めば、どんな設計でも十分な検討を加えることができ、無駄な出費をせずに納得のいく設計ができます。この後、次のような最終的な計画を立てます。

当面の、および将来的な使用目的を視野に入れた全体的な配置設計
建設の財政計画、予算の見積もり、収益や補助金申請先の特定
将来的な業務拡大も視野に入れた設備の準備(給排水、電力供給など)
使い勝手がよく好感のもてる玄関、受付、事務所、屋外通路、駐車場の設計
好ましい外観、植樹、案内板や照明の配置
ご要望があれば、「設計と建設」をすべて組み込んだプランも用意いたします。これには、事前の費用見積もりや現地調査、イギリス国内の関係行政当局との相談や交渉についての支援も含まれます。

設計仕様と技術データ
設計分類/法的規制
PARASOLは、環境省が動物収容施設に関する専門調査委員会を通じて1993年発表した推奨規定に準拠したものです。 製造基準は1987年英国基準BS.5502の第22項に合致し、農業分野2類の用途に分類されます。 イギリスでは、地方自治体からの建築許可が必要で、排水設備の認可もNRAから受けなければなりません。

全体の寸法/立体構造
床面積:113平方メートル
直径:12メートル(16区画)
中心部分の作業区画:15.3平方メートル
入口部分:5.92平方メートル(1区画)
寝場所:一区画2.14平方メートル(15区画)
運動場:一区画3.78平方メートル(15区画)
設計仕様/維持管理
冷暖房設備はBS.5803とBS.5608に合致し、防音設備はBS.2750の第1項とBS.5821の第1項に合致します。維持管理は特に必要とせず、耐性年数は30年から50年です。

犬舎や作業車内への病気の持ち込みや感染拡大を防止するための手順
動物福祉と同時に、財政上の制約あるいは物理的な制約を配慮した実際の運営手順は、中心になる獣医と施設管理者が相談して決定していきます。理論的には評価の高いシステムでも、実際の運営に支障をきたすようでは意味がありません。 その際には、以下のような項目を検討します。

1.施設に収容する犬の選別
施設に収容するのが好ましくないために安楽死させるべき犬についての、確固たる選別基準を作成します。好ましくない犬としては、とても年老いた犬や病気の犬、および他の収容犬や作業者の健康を害する危険のある犬が含まれます。選別は、獣医による検査だけで済む場合もあれば、血液検査や培養検査を行なう場合もあります。

2.病気の予防
施設収容時に、予防接種、寄生虫駆除などの病気予防を必ず行なうようにするのが無難でしょう。

3.隔離場所の準備
新たに施設に収容される犬は、伝染病にかかっていない事がはっきりするまで、密閉された檻で個別に飼育するのが理想的です。収容期間は、問題となる病気の種類に応じて決めます。

4.一般的な衛生
床や建物には、掃除や排水が容易で、水を通さない素材を使います。作業員には、ゴム長靴や、着やすいけれども手軽に洗濯や消毒ができる保護服を支給します。要所には、消毒液を張った靴の消毒容器を用意します。使用済みの犬舎は念入りに消毒して乾燥させ、可能ならば数日間あけて再使用するのが理想的です。

5.餌の保管、調整、給餌
餌は、ネズミを防止できる密閉容器に入れ、細菌やカビが繁殖しない温度と湿度条件で保管します。 給餌の際は、犬同士の病気感染が起きないように気を付けます。給餌用の容器は、使用後に念入りに洗浄し、できれば消毒します。

6.空気感染する病気
空気感染するウイルスの蔓延を防ぐためには、一つの空間で多数の犬を飼育することは避け、十分に換気をし、温度と湿度の調節をします。

7.伝染病が発生したときの対処方法
様々な予防手段を講じていても、伝染性の病気が発生することがあります。このような事態に対処する方法を作業員全員で取り決めておくことが重要です。

8.作業員の教育
作業員全員が病気の伝播経路や対処方法についての基本的な知識を持っていることが必要です。特に、動物、作業員自身、他の作業員へ病気を伝播する危険は、作業員一人一人の衛生管理によって回避できることを認識していなければなりません。 

(続く)




CAPINの土浦シェルター



初期の常総野犬シェルター