『ダーク・シャドウ』を観た。
言わずと知れた、ティム・バートンとジョニー・デップが通算8度目のコンビを組んだ最新作である。
実を言うと、最近はほとんど劇場に映画を観に行かなくなった俺だが、ことティム・バートン監督作品に関しては、進んで映画館に足を運ぶことにしている。
そして、その理由はいくつかある。
まず、単純にティム・バートンの映画、特にジョニー・デップが主演した作品は話題になるし、あらゆる層(女性や子供)とも話が通じる。
若い頃はさて置き、最近の俺が好む映画のジャンルは非常に偏っていて、自分が観て気に入った映画の感想を誰かと共有したいと思っても、普通に映画好きくらいの人にはわかってもらえず、又、薦めたところで、そのほとんどが「じゃあ、観てみます」と言うだけで、まあ、観てもらったためしがない。
さらには、もし観てくれたとしても、その映画の中で本当に俺が感じたイイ部分や、本当に俺が感動したイイ場面がまったくもって評価されなかったり、中には「全然なし」と一刀両断されることも少なくない。
そう、そういった意味でも、彼の映画は、よほど凝り固まった観方をしない限り、そして、誰もがそんなに一生懸命にテーマや意味を考えながら観なくても、それなりに「何か凄いね」とか、「何か面白かったね」と言い合えるのだ。
そして又、他の理由としては、「その独特の映像美を大きなスクリーンで見たい」というのがある。
ティム・バートンの映画は、もちろん取り上げる題材もさることながら、自らが偏愛するゴシックやファンタジー、又はB級カルトホラーから影響を受けた独自の美しい“画”から成り立っている。
特に、アニメーター出身ということもあり、その、時に奇抜で、時にシックな色使いは、まさに映画を“絵”で見せる作家といっても過言ではない。
そういった意味でも、俺は普段、字幕を一つひとつ追いながら、意味を考え観る映画を好むが、彼の映画だけはDVDではなく、映像を見るために劇場に行くのである。
俺が初めてティム・バートン知ったのは、たぶん多くの人と同じように『ビートルジュース』(1988年)からである。
だが、当時、アメリカのコメディ映画というものに偏見のあった俺は、さほどそれをイイものだとは思わなかった。
しかし、次作の『バットマン』(1989年)で俺の考えは一変する。
「あれ?何か凄いぞ」
そして、「何か変だぞ」、と。
本作には俺の好きな俳優、ジャック・ニコルソンがジョーカー役で出演しているわけだが、普通でも圧倒的な存在感を見せるその役者の、その映画内における“キャラ立ち”といったら半端ではなかった。
それは後に、クリストファー・ノーラン監督版バットマン三部作の二作目である、こちらも傑作『ダークナイト』(2008年)のヒ―ス・レジャー演じるジョーカーと比較されるが、俺は断然バートン版のジョーカー、そして、バットマンが好きだ。
そして、翌年の1990年、ティム・バートンは初期の代表作『シザーハンズ』を完成させる。
尚、その作品でティム・バートンは初めてジョニー・デップを起用するわけだが、正直いって、その時点での役者ジョニー・デップというのはハッキリ言うとどうでもよくて、というか、もちろん、あの映画の主人公エドワードの繊細な内面を見事に演じ切った彼の力量もあっただろうが、それ以上に、何といっても、そのベタではあるが普遍的で感動的なテーマと、オリジナルで美しい映像と世界観は本当に素晴らしかった。
ちなみに、ウィノナ・ライダーという女優のことを、俺の中で決定的にしたのもその映画である。
そして、ついに1992年、ティム・バートンは『バットマン』の続編『バットマン・リターンズ』を公開する。
そう、何を隠そう俺は、ティム・バートン全作品の中で最も好きな映画が、この『バットマン・リターンズ』なのである。
さらには、その後のバットマンシリーズすべての作品の中でも、いわゆる、この“パート2”が一番であり、最高なのだ。
ちなみに、俺はゴッド・ファーザーシリーズでもパート2が最高だと思っているし、エイリアンシリーズでは“3”が最高だと思っているし、ゴジラシリーズに至っては17作目の『ゴジラVSビオランテ』が最高だと思っているが、それは決して通ぶっているわけでもなんでもなく、心から本当にそう思っていて、それが証拠にジョーズシリーズやダイ・ハードシリーズは“1”が最高、というか、それしかないと思っている。
ティム・バートンを大きな意味で定義するとしたら、それは「異形の哀しみを描く作家」ということになる。
それは先に出た『シザーハンズ』のエドワードであったり、『アリス・イン・ワンダーランド』(2010年)の“赤の女王”であったり、そして又、この『バットマン・リターンズ』には“ペンギン”というキャラクターが登場する。
そして、その原作にもあるキャラの造形からすべてを、ティム・バートンはまったく違う形に変えてスクリーンに映し出した。
障害を持って産まれてきたオズワルド(ペンギン)は両親によって川に捨てられ、下水道でペンギンに育てられる。
そして、成長した彼は“怪人ペンギン”となり、サーカスギャング団を従えて表の世界への復讐を計画する。
彼は、誘拐したクリストファー・ウォーケン演じる実業家シュレックに対してこう言う、
「おれは下水生まれじゃない。生まれたのは君と同じ地上だ。君のように尊敬されたい。一人の人間として認められたい。だが何より――自分の身元が知りたい。両親を見つけて――おれの本名を聞きたい」
そんな、普通の人々にはわからない悩みを、ティム・バートンは作品の中で、それも、ほんの少しのユーモアを散りばめて描き出す。
ちなみに、我々はそんな映像作家をもう一人知っている。
そう、松本人志だ。
第一回監督作品である映画『大日本人』や、かつての傑作コント『トカゲのおっさん』などは、まさに同じような印象であり、両者は共に「フリークスの孤独な哀しみ」を笑いで中和し、さらに切なく描き切ることにおいては、まさしく天才であるといえるのだ。
話はそれたが、ティム・バートンはその後、数々の傑作を世に送り出す。
『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993年)ではアニメーターであった経験を活かし、原案とキャラクターデザインを務め、それは今も尚根強いファンを残しているし、その後の『エド・ウッド』(1994年)では又、おかしな人物を題材とし、2000年以降は『PLANET OF THE APES/猿の惑星』(2001年)、『ビッグ・フィッシュ』(2003年)、『チャーリーとチョコレート工場』(2005年)、『アリス・イン・ワンダーランド』と、次々にヒットを飛ばしている。
そして、ようやく今回の『ダーク・シャドウ』の話だが、
もう観てもらうしかないと思っている。(どこが映画レビューだよ!)
まあ、一つ言えることは、今回も実にティム・バートンらしく、単純に楽しめたよ(ありきたりの感想)、ということだ。
そして、なんといっても又、女優陣が良かった。
元カミさんであり、常連のヘレナ・ボナム・カーターはもとより、俺の好きな『バットマン・リターンズ』でキャット・ウーマンを演じたミシェル・ファイファー、元ボンドガールでフランスの女優エヴァ・グリーン、そして、何より今回、『キック・アス』で脚光を浴びた子役出身クロエ・グレース・モレッツ(15才)がこれ又、最高にイイ!!
彼女は、かつて『ケープ・フィアー』でジュリエット・ルイス見たときのような、『レオン』でナタリー・ポートマンを見たときのような、そんな感じがして、今後に注目!!
そして、男の子の方の子役は、よく知らないけど、なんか『龍馬伝』で福山の子供時代を演じていたルック“まめピカ”のCMに出ている少年っぽくて、
いまいち。
んあ~