増え続けるアトピー性皮フ炎に多い合併症/その症状 | 精美スキンケアクリニックのいきいきワクワク情報ブログ

 

今回は、増え続けるアトピー性皮フ炎とその症状についてお話します。

アトピー性皮フ炎が増加傾向にあることは、多くの医師の発言や報告、統計データから類推されるところです。

 

長崎大学の皮フ科が行った調査では、約20年間でアトピー性皮フ炎の外来患者は7倍に増えているという数字が出ています。

アトピー性皮フ炎は、文明病と言われこともある皮フ疾患で、発展途上国より先進国、田舎より都会で発症率が高いとされています。地方から都会に出てきたアトピーの患者さんの症状が悪化することも多いようです。

これは、生活を取り巻く環境と疾患が深く関わっている証左と言ってよいでしょう。

アトピー性皮フ炎の症状

日本皮フ科学会では、アトピー性皮フ炎を次のよう3つの特徴から定義しています。
①かゆみ、湿疹がある
②遺伝的な体質がある
③症状が長期間続く
というのがその特徴です。

①は、かゆみがあり、「皮フが赤くなる(紅斑)」「細かなぶつぶつが出来る( 丘疹)」「カサカサと皮がむける(鱗屑)」「皮フが厚くなる(苔鱗化)」「かさぶたができる(痂皮)」などの症状が混在して現れることがあります。

 

湿疹ができる部位に関しては、目や口の周囲、唇、耳たぶ、頬、額、手足の関節、胴体などに左右対称に表れることが多いのが特徴です。

このかゆみが患者さんに大きな苦痛をもたらすことが多いので、治療ではかゆみをコントロールすることが重要になってきます。

②は、患者さんの肉親にアトピー性皮フ炎の患者さんがいることが多いなど、遺伝的な体質を持っている人が多いという特徴です。

アトピーを発症した経験を持つ親御さんは、子どもが発症するとその苦しさが人一倍わかるだけに辛い思いをされることも多いようです。

③アトピー性皮フ炎の症状は数か月以上続くことが多いのです。長期間にわたり、良くなったり悪くなったりを繰り返します。

 

アトピー性皮フ炎に多い合併症とその治療法についてお話します。

アトピー性皮フ炎の患者さんは、皮フのバリアー機能が低下していることが多いため、細菌感染症などの合併症を引き起こしやすくなっています。

かゆみがあるので、病変部を掻きこわしたりすると、いっそう合併症を引き起こしやすくなるので注意が必要です。細菌感染症にはトビヒや毛包炎などの症状があります。

また、細菌感染症以外の感染症には次のようなものがあります。

・白癬、カンジタ、癜風などの真菌感染症
・単純ヘルペス、カポジ水痘様発疹症
・尋常性いぼ、水イボなどのウイルス感染症

こうした感染症も、アトピーと併発しやすい症状です。

さらに、目の周りのアトピー性皮フ炎が原因となって白内障や網膜剥離という眼科の疾患を起こすこともあります。

その他にも、アトピーと関連して自律神経の乱れから、倦怠感や頭痛、微熱、あるいは胃腸障害の症状が現れたり、気管支ぜんそくや花粉症などのアレルギー関連の病気を併発することもあります。

かゆみや湿疹だけでも悩ましいアトピー性皮フ炎ですが、こうした様々な合併症のリスクが高くなっていることも、患者さんや家族に大きなストレスをもたらす要因といってよいでしょう。

アトピー性皮フ炎の治療としては、
①かゆみを抑える
②皮フ症状の改善
③悪化因子の究明と生活指導
などを柱に、総合的な治療が必要になってきます。

まず、①に対しては、強いかゆみの原因となるヒスタミンを抑える抗ヒスタミン剤や、アレルギー反応が引き起こすかゆみを抑える抗アレルギー剤などを使います。

つぎに、②については、炎症を抑える働きがあるステロイド剤などを使います。

 

しかし、よく知られているようにステロイド剤の副作用には、皮フの色が白くなったり黒くなったりする色素異常や皮フが薄くなることがあります。

 

薄くなった皮フの表面にちりめんじわができる皮フ委縮や接触皮フ炎などのリスクもあるので、専門医の指導のもと適切な使い方をすることが重要です。

また、乾癬の治療のところで紹介した、タクロリムス軟こうも現在アトピー性皮フ炎の治療薬として使われることが多い薬剤です。

 

タクロリムス軟こうは、特に顔面や首の急性症状に効き目があります。

炎症が長期に及んでいる場合や広範囲に及んでいる場合は、ステロイド剤とタクロリムス軟こうを症状に応じて使い分けることもあります