みなさん こんばんは。
ERDL Camouflage Pattern 通称”リーフパターン” の考察です。
内容濃いので、体調すぐれない方は「初級編」で閲覧を中止する
事をお勧めします。
マジです(笑) ワロてますが・・
では参ります。
- 初級編 -
「迷彩」と聞いて皆さんはどんな模様を思い浮かべるでしょうか?
最近ではタイガーストライプやダックハンターが人気だし、ニュースで見る本当の映像は、中東での紛争が多いせいかカーキ・タン色を中心としたデザート(砂漠)パターンであったり更にはそれらをデジタル処理したデジカモなんてのも見る機会が多くなりました。(下写真)
そして最近ではアメリカのアウトドア衣料を扱う民間会社が発表したハンティング用の迷彩服が笑えるほどリアルだと話題になったり・・・
ん。確かにリアルすぎて笑える。
だがしかし!
昔から「迷彩」と言えばこんなのを思い浮かべるのではないでしょうか。
「M81迷彩」 通称”ウッドランド”
※本題の「迷彩」ではありません。
これはアメリカ軍が80年代初頭より20年以上の長きに渡りアメリカ全軍(ARMY、NANY、AIRFORCE、MC)で採用した「M81迷彩」で、通称”ウッドランド”と呼ばれ、現在でも古着屋さんで相当量流通しており、更にはアパレル業界からホームセンターまでもが大量にコピー品を生産・販売しているので、私達の身の回りに”最も多く存在している迷彩”とも言えるでしょう。
今日紹介する”ERDLパターン”はそんな迷彩の代名詞とも言えるウッドランド迷彩の起源となったパターンなのであります。(下写真)
「ERDL Pattern」 通称”グリーンリーフ”
ERDLパターンとは1948年に創設されたアメリカ陸軍の技術研究開発試験所/Engineer Research and Development Laboratory(ERDL)によって開発されたカモフラージュパターンです。
これは1967年初頭に米軍に採用されましたが、ベトナム戦においては一部の特殊部隊や特殊作戦に従事する組織への支給が優先され、一般の部隊への支給は限定的でありました。
現存する個体(被服)のコントラクトナンバーから推測すれば、最初(67年)に支給されたERDLパターンのBDU(戦闘服)は熱帯地用の通称:ジャングルファティーグのジャケット&トラウザーズの3rd型(ノンリップ)からと思われます。 その後、68年頃からジャングルファティーグ4th型(リップストップ)へと移行しました。
※”3rd”、”4th”は古着・サープラス市場での俗称。
ERDLパターンはその葉っぱの様な模様から通称"リーフパターン"と呼ばれる他、その色調が2種類存在する事から"グリーンリーフ"と"ブラウンリーフ"とに区分して呼ばれます。
"グリーンリーフ"は67、68年度会計のBDUに、"ブラウンリーフ"は69、70年度会計のBDUによく見られます。
グリーンリーフ/DEAD STOCKの色
"グリーンリーフ"は色調とバランスが良い為か古着市場において人気があり、サープラス市場においてもベトナム戦で多く実戦使用された事から”NAM戦リーフ”として人気があります。
"ブラウンリーフ"については程度の良い物は玉数が少なく、研究アイテムとしてもコレクターに重宝がられております。
※上記及びこれから記載する説明は現存する被服の比較やラベルに記されたコントラクトナンバーからの推測であり、実際にはもっと複雑な経緯を経ていると思われます事ご留意願います。個人的には初期型ジャングルファティーグのERDLなんてものが存在すれば楽しいなと思う今日この頃でございます。
(後日追記)
初期型が実在した様です。外国のマニアの反応が笑えます。Amaging!ッテ ハゲシクドウイ。
http://www.usmilitariaforum.com/forums/index.php?showtopic=21690&hl=poplin+erdl
http://nammiri.blog21.fc2.com/blog-date-20160410.html
- 中級編 -
"グリーンリーフ" と "ブラウンリーフ" の謎
"グリーンリーフ"は黒、グリーン、ブラウン、ライムグリーンの4色で構成されているのに対し、"ブラウンリーフ"は黒、グリーン、ブラウン、カーキの4色で構成されています。
要するに両者の違いは、ライムグリーンとカーキが入れ替わっているだけですが、この違いがグリーンを強く印象付ける"グリーンリーフ"、ブラウンを強く印象付ける"ブラウンリーフ"とに区分される要因となっているのです。
上:グリーンリーフ/中古色
下:ブラウンリーフ/中古色
しかしながら被服のラベル等からはこの両者が特段区分された記述が見当たらず、それゆえ市場では色々な説が言われております。
(説.その1)
採用(会計)年度について、被服のラベルから"グリーンリーフ"の方が古い年代の物が多い事から"グリーンリーフ"を初期リーフ、"ブラウンリーフ"を後期リーフと解され、そう呼称される事もあります。
ちなみにグリーンリーフの会計年度はDSA-67から見られ、ブラウンリーフはDSA-69、70の物が多く見られます。
(説.その2)
その配色の差が意味するのは"グリーンリーフ"は低地用(low land)、"ブラウンリーフ"は高地用(high land)と言われております。
(説.その3)
専門誌によっては、「生産ロット毎に低彩度の黄土色から彩度の高い黄緑色(dull ocher to a quite vivid pea green)までかなり異なりました」と、色の違いを単なる”ブレ”として取り扱っております。
以上の様に様々な説が唱えられておりますが、milcloe氏によると米軍リポート「現代迷彩における心理的物理学」という英文資料には、「ERDL 1948パターンは"too bright"だったので"tone down"された」と記載がある事から、上記の様な説2や説3はやはり俗説扱いにすべきではなかろうかというご意見を述べられております。
”ブラウンリーフ”のその後
ベトナム戦後の70年代から80年代初頭にかけてアメリカ軍で支給された"ブラウンリーフ"は裏地から色彩が透けて見えない/迷彩パターンが全然違う物がある/色と色の境界がはっきりしている/等、ERDLのブラウン系とは異っており、特に1970年代から支給されたLC-1装備にちなみ”LC-1リーフ”と称されています。
そしてこの”LC-1リーフ”の1.5倍位?の拡大バージョンが81年に登場した”ウッドランド迷彩”となる訳であります。(やっつけの説明でかなりいい加減カモです。悪しからず。)
- 上級編 -
グリーンリーフとブラウンリーフのミックス使用例
先日ネットで興味深いカモパンツを見つけました。
DLA-78のいわゆる"LC-1リーフ"のカモパンツ。
パンツの形状がジャングルファティーグ型ではなく、LC-1型なので当然"LC-1リーフ"のブラウンリーフでございますが、よく見ると右と左の生地が違う事に気が付きます。
どうやら写真右側がERDLブラウンリーフに近い生地で左側が典型的なLC-1ブラウンの様でございます。
この様に生産ロットの異なる生地が使われる事は良くある事でマニアの間では”ミックスリーフ”と呼ばれますが、良く見られるのは裏地やフラップ、ポケットのみ違う場合が殆どで、この個体の様に左右非対称は珍しいと思います。
そしてこのパンツは更に
なんと後ろ側全面がERDL"グリーンリーフ"なのであります。
規格の違う生地を、服の裏地やポケットフラップの一部にだけ使うなら分からないでもないですが、厳しいMILスペック(米軍規格)で規制される中で”前が高地用、お尻は低地用”なんて許されるとは思えないので、(後日追記:MIL-Sはそこまで規定してないかもしれないし、規定していたとしても当時は作る事が優先で、生地が違っても合わせて作ったかもしれない。)やはり先で述べた"too bright"だったので"tone down"された説を後押しする一品ではなかろうかと思うのです。
※MILスペックについては過度に細かい規定が、公共調達の合理性を損ねているとの反省から1990年代に大幅な見直しが行われました。
古着屋さんでミックスリーフを見つけたらお店の人にこう聞いて下さい。
「やはりこの2種類の生地の混用は、トーンダウン説を肯定する時代の証言者と成りうるのでしょうか?」
恐らく出口を案内されるでしょう(笑)
- 変態編 -
先でも述べた通り、グリーンリーフは初期リーフとも呼ばれておりますが、マニアの間では更にノンリップ生地の物が"最初期リーフ"として重宝がられております。
そして更に、そのノンリップリーフの中でも迷彩の色の境目がはっきりしているものと、していないもので"ノンリップ前期"、"ノンリップ後期"に分けられるのです。
境目がはっきりしている方が前期で、これでやっと正真正銘"最初期リーフ"です。
"ノンリップ前期" (実際の色はもっと鮮やかです)
その昔、数百枚に1枚くらいの割合でしか出てこないこの最初期リーフを宝探しの様にサープラスショップで1枚1枚見ていくのが楽しみでしたが、最近ではすっかりメジャーになり、しっかり区分され販売されております。ただ、昔はめったに市場に出回らず、出たとしても5万円以上したと思いますが、最近では2、3万円出せば買えるので良い時代?になりました。
そろそろ誰もいなくなったところで本日最後のお題へと参ります。
「ノンリップ最初期リーフ"前期" 印刷工程の謎!」
①まずは普通のグリーンリーフの印刷工程。
グリーンリーフは黒、ブラウン、グリーン、ライムグリーンの4色で構成されている事は中級編で述べました。
印刷の順番は黒、ブラウン、グリーン、ライムグリーンの順となるようです。
一見、黒が後の様に見えますが、色の境目の透け具合を良く観察すると分かります。
下の写真は色の濃い黒とグリーンの上から色の薄いライムグリーンを乗せた為、境界部については濃い色(黒)が染まりきらず透けて見えています。
グリーンは重複部分が少なく分かりにくいですが・・・
さらに分かり難いのがブラウンとグリーンです。
拡大してみます。
ダニ0匹!(笑)
ではなくて
グリーンが後染めの様です。
以上の結果から染めの順番は
黒 → ブラウン → グリーン → ライムグリーンと考えられる訳ですが
次の画像(人)、(マ)、(竜)などからは、黒が後から染められて「にじんだだけ」の様にも見えるのですが以下の検証から黒 → ブラウン → グリーン → ライムグリーンで良いと思います。
ホンマかいな。
(マ)
竜が真ん中に印刷されているナムリーフハット。ここがお気に入り(笑)
ここまできてなんなんですが
今、ブラウンリーフを観察していたらブラウンリーフはグリーンリーフと印刷順番が違う事に気がつきました。
グリーンリーフは黒 → ブラウン → グリーン → ライムグリーンなので黒の印刷順位が後になった様です。
印刷ズレが目立たない様に改善したのかな?
なんだか結論がハッキリしませんが気にせず
どんどんいきます。
②次に"ノンリップ後期"の説明です。
先程述べましたが、迷彩の色の境目がはっきりしているものが"ノンリップ前期"、はっきりしていないものが"ノンリップ後期"となります。
まずは私が保有している"ノンリップ後期"。
この個体は状態が悪くて本来の色が分かり難くて悪しからずです。
ちなみに服の事を"個体"と呼ぶ様になった私こそ「状態が悪い」恐れがあります(爆)
(タグ)
DSAとDPSCの併記もんです。
これも不思議なので調べなければ・・
(拡大)
この画像は重要です。
黒は「にじみ」ではなく、明らかにライトグリーンを後から乗せた時の「ズレ」という事が分かります。
これもそう。後からライトグリーンを乗せた時の「ズレ」だ。
そして実は、今見て頂いた"ノンリップ後期"のパターンは、普通のグリーンリーフと何ら変わりがなく、生地がリップストップかそうでないだけかの差なのです。
どうでも良い結果が出ましたが気にせずどんどんいきます!
③次はいよいよ"最初期リーフ"である"ノンリップ前期"へと参ります。
とは言っても私は"前期"を保有していないので、この"後期"にカスタムされた生地が "前期"の生地なので、これをもとに検証を進めます。
(右腕に "前期"の生地でタバコポケットが追加されれいます。)
(拡大)
分かりますか?
「色の境目がはっきりしている」こと。
(反対側の腕のペンポケット)
これも "前期"の生地が使われています。
(さらに拡大)
土台の生地が "後期"、追加ポッケが "前期"の生地。
(別の個所で同じ柄を発見)
左が"後期"、右が "前期"の生地。
ね、"前期"は黒とライトグリーンの境目がハッキリしてるでしょ。
ほらほら、5億年前の北海道の輪郭を見て下さい。
良く分かりますね~
この様にして"後期"は「ズレ」があり、"前期"は「ズレ」がなく「ハッキリ」している訳ですがここで疑問。
"前期"はなぜほとんど「ズレ」ていないのか?(ライムグリーンの境だけ)
そしてまたなぜ「ハッキリ」してりゃ良いものをわざわざ「ズレ」が起こる印刷方法に変えたのか?
まず、「ズレ」ない理由に関しては、前記の考察からすると色の薄い順番に印刷してゆけば良く、また、黒とグリーン間、および黒とブラウン間はズレているので、これらの条件を満たすように順番を考えると
ライムグリーン → 黒→ ブラウン → グリーン という事になります。
普通のグリーンリーフは 黒 → ブラウン → グリーン → ライムグリーン ですから、比較して考えるとライムグリーンが一番最初になっただけと言う事が分かります。
なぜライムグリーンが最初だったのか?
良く考えると最初から生地の色がライムグリーンで、印刷したのは黒、ブラウン、グリーンの3色だけと考えるとつじつまが合ってきます。
しかしまたそこで問題です。
リーフパターンの生地の裏を見れば分かるのですが、前期も後期もライムグリーンっぽい同じ色なんです。
ん、分かった。
最初、ライムグリーン(っぽい)生地に3色印刷して最初期リーフである"ノンリップ前期"が誕生したのだが、使い込むとどうも生地の色であるライムグリーンだけが薄くなりすぎてしまう。
生地を作っている業者に改善してくれと言ったらえらく高くふっかけられて、それじゃライムグリーンを最後に上塗りした方が安いからそうしようってなったんじゃないかな。
ん~そうだ。そうに違いない。
長々と好き勝手に書き連ねて参りましたが
たぶん・・・
全然ちゃうと思う(爆)
皆さんも是非古着屋さんに行ったら気持ち悪るがらずに
ERDLを手に取って言って下さい。
「ライムグリーン」は何番目に印刷されているのですか?
きっと出口を案内されるでしょう(爆)
終り
追記:2017吉日
1964.1/30会計で試作されたと思われるジャングルファティーグ1st型のERDLの画像を発見しました。
ノンリップでなんと裏地・ボタン・縫糸が黒!問題の印刷順は黒生地の上にライム→黒→ブラウン→グリーンの様で、ライムとその他の色との間にブレが無く、いわゆる最初期ノンリップの様な色目です。
やはりこの後、黒生地をライムに変えて3色刷りにしたが、品質面かコスト面の理由から4色刷り(順序変更)となった様な?
ま、1948から開発が進められているのだからいろいろあるやろ。
変則ERDL!かかってこんか~い!
****************************
【あとがき】
今回の記事を書くにあたり、”Camouflage”についてネットで多くの調べものをしましたが、その時検索でよくヒットしたのがアンディー・ウォーホルの「Camouflage」でした。
先日まで東京・六本木の森美術館で開催されていた「アンディー・ウォーホル展」の最後に展示されていた作品の題名が「Camouflage」で、その影響だった様です。
Andy Warhol / Camouflage
※竜が上向いています(笑)
彼は晩年、色違い・大きさ違い・柄違いの多くの「Camouflage」関連作品を制作した他、下の様なデッサンも残し、”Camouflage”に対する強い好奇心が伺えます。
そしてこれらのほとんどがERDLパターンであった事が私にとって非常に興味深く、又、嬉しい事でもありました。
こんなものを一所懸命観察するのは自分だけではなかったと(笑)
彼は「Andy Warholを知りたければ私の絵や私自身の表面だけを見れば良く、その裏には何もない」と言う一方
自分の顔の上にCamouflageを施した作品を制作し、墓碑銘には「全部ウソ」と書いてくれと言い残しこの世を去りました。
同じような事に興味を持つ人がいて安心したのですが
やはり奇人でした(爆)
もうちょい普通で著名な人がいれば良いのですが。
たとえばオバマが式典で
「今までのBDUの中でERDLが一番良いね」
とか
京セラの稲盛さんが日航機を「グリーンリーフ柄良くね?」
とか言ってくれたりしたら
私の肩身も少し広がるのにと期待してしまう
今日この頃です。