いえいえ、よ~く見てください。しゅっとした小顔にしっかりとした肩から胸にかけてのライン、そして逞しい大腿部の筋肉。
そう、このうさぎは「ニホンノウサギ(Lepus brachyurus)」です。
つまり、私たちが飼育したりふれあったりと馴染みのあるうさぎたち、すなわち「アナウサギを改良したカイウサギ(Oryctolagus cuniculus)」とは分類上「属」レベルで違う全くの別種になります。
アナウサギ(カイウサギ)とノウサギの違いは、以前こちらでいぬいさんが詳しく書いてくれてますので是非ご覧ください。
ノウサギは夜行性で、ノウサギが普段活動する時間帯には当園のうさぎたちはみんな舎内に収容しているので、柵越しとはいえこの2者が出会うことはありません。
画像の個体はなにかの気まぐれで昼間に出てきたようですね。
このノウサギ、柵越しに自分の姿に似た外国産のアナウサギを見て何を思ったのでしょうか。(´-`).。oO(
ついそんなことを考えたくなるワンシーンです。
ちなみに、ニホンノウサギは4つの亜種に分かれていて、このことはラビットワーレン内でも解説しています。
本州の日本海側に生息するトウホクノウサギ、佐渡諸島に生息するサドノウサギ、隠岐島に生息するオキノウサギなどがいますが、
最も日本に広く分布していて、本州の太平洋側、四国、九州に生息しているのが今回出没したキュウシュウノウサギ。
漢字にすると九州野兎。本州や四国にも住んでるのになぜ九州をリスペクトするの?と言いたくなりますが、そこは生物学のややこしいところ。
例えば、学者がある生物を学会に新種として発表し登録されるとします。
その際、論文を書く時に用いられた標本を提出する必要があり、この標本をタイプ標本と呼びます。
そして、キュウシュウノウサギの場合はタイプ標本の個体が長崎県産だったのでキュウシュウノウサギと命名されたようです。なんだかなぁ…という理由ですね。(笑)
ちなみに、動物園において学術的にはカタカナ表記で「ウサギ」と書くのが一般的ですが、当ブログや園内でウサギ目ウサギ科の動物全般を指して「うさぎ」とひらがなで表記することが多いのは、うさぎのもつ柔らかさ、しなやかさ、かわいらしさを表現するため、というささやかなこだわりです。
担当 ごとう