フィルムスキャナーは思ったより手軽で優れものだった…サンワダイレクト400-SCN024 | ちょっとそこまで☆増刊号

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週末のプレシジョンスポーツ&ドマーネ4.5親父★fairleader

 

昭和世代の年齢層は、 デジカメの前は銀塩フィルムのカメラを使っていた。 そして写真が趣味だと、実家に大量のネガがあったりする。 盆や正月に実家に帰って、 たまに引っ張り出した古い写真やネガを懐かしく見ているとき、 頭の片隅には「このネガ、どうするんだ」という思いがよぎる。 親もいつまでも生きているわけではないし、 いつか始末しなければならないのだが、 それは考えないことにしてまた押入れの奥に箱を突っ込む。

一眼レフで本格的に写真を撮り始めたのは、高校生の頃だった。 学校で何かイベントがあるたびに、みんなのスナップ写真を撮り、 学校の暗室で焼いて(自分でプリントして)配っていた。 自分の写っている写真はほとんどないが、 友達の写真は山ほどあるという、カメラ小僧の宿命だ。 学生時代も同じようなパターンで、 実家にはたくさんのネガが溜まっていった。

この正月、 たまたま何枚かの古いスナップ写真をスマホのカメラで撮って同窓生の知人に送ったら、思いの外好評だった。 震災で昔の物は何も残っていないからと言われてハッとした。 そうだ、古いネガにもまだ生きる道がある。

ということで本題。フィルムスキャナーを買った。

サンワダイレクトフィルムスキャナー400-SCN024

このスキャナーの一番便利な点は、 PCに繋がなくても独立してスキャン作業が出来ることだ。 小さなモニターも付いているので、写真を確認しながら、 ボタン一つで次々とSDカードにデータ化することができる。この手軽さが重要で、それこそコタツでテレビを見ながらでも、古いネガと久しぶりに懐かしい時を過ごすことができる。

 

 

ややこしい操作は必要ない。最初にネガの種類を選択。ネガ、ポジ、もちろんモノクロもカラーもスライドも対応している。別売りパーツで110フィルムにも対応。背面はSDカードスロット、電源のUSB、TV出力端子。TVへの出力はHDMIではなくビデオ端子なので、画質は期待できない。接続して見てみようという気も起らない。付属のモニターの延長線上だろう。本当に大画面で見たいなら、スキャンしたファイルの方を見ればよい。

 

取り込み画質調整は、EV値で明暗をコントロールできるが、モニターが小さく解像度が低いこともあって、それだけで補正が完了すると思わないほうがいい。あくまで簡易。使ってみると、結局あとでフォトショップで精密に修正することになってしまった。どうせ何かに使う写真はPCでレタッチをすることになるので、本機はあくまで取り込み専用とするのがいい。

 

 

フィルムの送りは手動。左右が幾分トリミングされるので、その具合を見ながら左右にずらし、ボタンを押す。取り込まれた画像は次々とSDカードに保存され、思っていたよりもはるかに早く作業は進んでいく。

 

フィルムホルダーの送りには写真1枚ごとにクリックがあり、さらにそのクリックの中に左右微調整分の遊びが含まれている。よく考えられているが、動きに自然な造りなので、操作していると意識することがない。

 

 

トリミングされる件だが、ネガホルダーには写真矢印のように突起があって、フィルムの穴にはまるようになっている。だから、ネガを置く左右位置の調整は、穴1コマ分が最小単位となる。穴と写真の位置関係はいつも同じではないので、左右両端とホルダーに桟がある中央の写真では、場合によって一コマ分ずらす必要が出てくる。どうしても気になるなら、固定用の突起を削り落とせばいいのだが。

 

しかし実際に作業を始めてみると、文章で書くほど神経質になることもなく、どんどんスキャンできた。そもそも写真屋にプリントしてもらっていたときも、周囲はある程度トリミングされていたし、自分で焼付するときもトリミングは前提だ。作業中に注意するのはホコリの掃除くらい。右の写真のクリーナーで、こまめにふき取っておく。

 

サクサクとSDカードに取り込んだあと、PCで補正作業をする。画像は35mmで4416×2944、ファイルサイズはモノクロが数MB、カラーで10MB前後。実際に取り込まれた画像は、スキャナーのモニターで確認できる画像よりわずかに広範囲なのだが、実用上気にならないレベルだ。

 

取り込んだファイルの画質だが、元のネガが良ければ良いし、コンパクトカメラで撮った写真はそれなり。カラーネガで色が劣化していると、フォトショップのお世話になる。スキャナーの性能云々以前の当たり前の話だ。

 

そんなことよりも大事なのは、こうしてスキャンしてPCの大きなモニターで写真を見ていると、当時よりもいろんなことが良く見えてくることだ。

 

撮影した頃は、ベタ焼き(ネガ原寸大のプリント)にして必要な写真だけを焼き増ししていた。スナップなら大きくてもせいぜいキャビネ版。本気で撮影に行った風景写真の何枚かは、四つ切で焼いてパネルに貼っていた。それが最大サイズだった。

 

それがこうしてスキャンした後では、ネガのすべての写真をモニター上で四つ切サイズで見ている。ベタ焼きサイズでしか見ていなかったピンぼけ写真もすべてだ。これがなかなかいいのだ。特にスナップ写真、なにかのイベントの一日分の写真を大きなサイズでスライドショー的に次々と見ていくと、撮影当時の空気感がよみがえってくる。

 

あまりに良かったので、Googleフォトにアップして、共有アルバムで昔の仲間とシェアした。古い写真の利用法は、自分の中ではこれが最高だ。これでもう、ネガを処分しても後ろめたさは残らない。おかげでこの正月は、ネガをスキャンしてレタッチ、そしてアップロードという幸せな作業で時間を過ごすことができた。この一連の作業は、スピード感が勝負。手間暇がかかりすぎると、途中で嫌になる。フィルムスキャンはあくまで手段であって、目的ではない。そう考えると、この機械は最高のコストパフォーマンスだったと思う。

 

次は自分の家族の写真をスキャンしていくつもりだ。子供たちの小さい頃とか、もう完全に老後の作業だなと苦笑しつつ、単なるデジタル化保存でなく、それまで見えていなかったものが見えてくることを楽しみにしている。