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南米日本人サッカー監督の挑戦

FIFAクラブW杯2012優勝のSCコリンチャンス・パウリスタにてサッカー指導者をしています。

Jリーグ南米戦略や苦悩、面白ネタなどを綴っていきたいと思います。

世界一の選手輸出国で、W杯の出場回数、優勝回数ともNo1の国、ブラジル。


どの時代にもこの国にはいわゆるスーパースターが君臨し、常に優秀な選手を育ててきました。




しかしそんなブラジルの育成事情も近年少しずつ変わりつつあります。



BRICsとも言われ、経済成長が期待されるブラジルでは、昔に比べて生活水準が上がりつつあります。


それに伴い、街にはフットサル場などの施設も増えました。




ブラジル伝統のストリートサッカーは治安や車の危険もあるので、子供達はより安全なサッカーに移るようになりました。




また、ブラジルのプロクラブも資金面の成長が見られ、美しい人工芝と天然芝を10面以上持つクラブも出てきました。


ブラジルのU17代表選手などには、大人のブラジル人の平均年収(サッカー以外)の3倍くらい貰う子もいます。





もともと身体能力が高く、サッカーでしか貧困を抜け出せない、なり上がろうというガッツ溢れるブラジル人。



彼らが素晴らしい施設で練習したらどうなるのか?
僕は期待で胸が膨らんでいました。






しかし、ブラジル1部リーグのU18の指導者に質問をしたところ、考えさせられる返答がありました。



彼らが言うには、「昔に比べてガッツがないと言うのです。



更に他の街クラブのブラジル人指導者達なども含め彼らに深く聞くと、ストリートサッカーにある"サッカーを楽しむ"という大前提を学ぶ機会や、"自由な環境で自分で考えて育つイマジネーション"を学ぶ機会が減っている!と言うのです。




ここでのイマジネーションとは、ルールに縛られ過ぎず、例えば壁にパスしてワンツーをする発想などです。



ストリートサッカーについては別の日にこのブログでもっと詳しく説明致します。



また、素晴らしい施設で練習し、子供ながらに給料も貰えるため、反骨精神が失われているとも言っていました。




これ、どっかで聞いた事ありませんか?


そう、日本です!


日本にはサッカー以外にもゲームなど遊ぶものが沢山あり、便利過ぎて体を使う機会が減るという話、聞いた事ないでしょうか?




ブラジルではまだほんの少し、日本ほどではありませんが、1部にそういった傾向が見られる、ということです。




「じゃあ悪い施設、給料もあげなければ良いじゃないか!」と考える方もいらっしゃるかと思います。


しかし、日本と比べて育成年代での移籍が自由で周りの理解度も高いブラジルでは、それでは才能豊かな選手は全て他のクラブに取られてしまうのです。




あなたが貧しい家庭で育っていたとしたら、平均給料の3倍あげると言われたら断れるでしょうか?





何度も言いますが、これはあくまでブラジルという大きな括りの内のほんの1部の話です。



逆に中には安全で快適な施設が合っていて、化物みたいな選手も産まれています。


そもそも才能があってもサッカーしたくても出来ないのでは本末転倒ですから、基本的にはブラジルの近代化はプラスだと考えています。


今後のブラジルサッカーの僕なりの予想ですが、現在のブラジル人達を0~100点とすると、0点層が減って30点層へと移り、80点層~90点層も減ってしまう。しかし、110点層が数人産まれるのでは?と感じています。


あくまで個人的な意見ですが。




*この記事はブラジルの現状であって、僕が日本のクラブに施設を悪くした方が良いと勧めているのではありません。

むしろ日本の場合は施設等をもっと良くした方が良いと思っています。


それが何故か?もまた別の機会に。
世界的に見てブラジル全国リーグというと欧州主要リーグの次に強い、とか、ブラジル全国リーグには若手の次期スーパースターが眠っていて、ここから欧州や世界各国へ羽ばたいて行くというイメージかと思います。


そしてブラジル全国リーグの正式名称はカンピオナート・ブラジレイロと言います。


1部リーグをセリエAと呼び、以下セリエDまであります。




しかし、このブラジル全国リーグ、他の国の呼ばれ方と比べて違和感がありませんか?



そうです、ブラジル"全国"リーグと、わざわざ全国という言葉が付け加えられる事が多いのです。


普通はイタリアリーグ、スペインリーグ・・etcとだけの表記だと思います。




これはJリーグや欧州リーグに注目が集まる日本の方には少し理解するのに面倒なので、このブログで紹介したいと思います。


まず、日本のリーグの場合、J1・J2・J3・JFLまでが全国リーグです。
そしてその下に関東リーグや九州リーグといった地方リーグがあり、更に下に都道府県リーグがあります。


都道府県リーグで勝ったら地方リーグに昇格、地方リーグで勝ったら全国リーグに昇格、という具合。
つまり全国リーグを頂点にピラミッド型、上下関係があります。



しかしブラジルでは、地方リーグと全国リーグがそれぞれ独立したリーグであり、そこに上下関係はないのです。

そしてブラジルのプロクラブは、全国リーグと地方リーグに同時に所属している事になります。




例えば僕のいるアトレチコ・パラナエンセでは、全国リーグ1部、パラナ州リーグ1部に所属しています。



僕が以前研修させていただいたオペラリオというクラブでは、全国リーグ4部、パラナ州リーグ1部に所属しています。



日本の九州で例えると、全国1部にいるのは鳥栖、2部に北九州、福岡、大分、熊本、長崎があり、3部にFC琉球、4部にHOYO、ホンダロック、鹿児島があります。

だいたいこの10チームで九州リーグ1部を戦うのです。

全国的にはJ1とJFLという扱いですが、九州的には1部として対等に戦い、九州1を決めます。





サッカーというのは何が起こるか分からないものですから、ねじれも起きます。

実際今年のアトレチコ・パラナエンセは全国1部で3位で、ライバルのコリチーバは降格争いをしていたのに、パラナ州リーグで優勝したのはコリチーバでした。



過去にはもっと大きなねじれもあったでしょうね。




ブラジルのリーグ戦のやり方が理解出来たでしょうか?


質問、訂正等あればコメントお願いします^ ^
世界が認めるサッカー王国で、いよいよ今年となったW杯の開催地ともなっているブラジル。


今世界で最も旬なこの国から学んだものを、日本へ向けて還元出来るというのは非常にありがたい事で感謝しています。



僕は現在ブラジル1部リーグ3位になったアトレチコ・パラナエンセのU13でアシスタントコーチをやらせていただいているのですが、今回はもう少し小さなクラブ、ブラジルの街クラブを見て感じた事を執筆させていただきます。



と、その前に、現在の日本サッカーの現状と課題について少し触れておきます。


Jリーグ開幕から20年余りが過ぎ、Jリーグ開幕前はW杯にも一度も出場出来ず、欧州で活躍したり、プロ選手すらもいなかった日本が、今では今年のW杯には当たり前の様に出場し、昨日は本田圭佑選手が世界のACミランに10番として加入するなど凄まじい成長を見せてきました。




しかし、これから更に日本サッカーが発展していきたいのならば優秀な指導者を更に増やす必要があります。


日本は欧州などに比べるとサッカー指導者がご飯を食べていける環境はまだまだ整っていないと言わざるを得ません。


1人の優秀な指導者を育てれば、生涯で少なくとも100人、多ければ数万人の選手と関わります。

しかし現実問題として、人には生活がありますから、稼げないのならサッカー指導者に優秀な人材は供給されにくく、特に街クラブの指導者からは生活が大変だという話や、貴重な収入源であるスクール生の取り合いなどのトラブルも耳にします。




しかしよくよく見てみると、"日本で"サッカーの仕事をしている人達は"日本だけで"
サッカーの仕事をしてしまう傾向があり、仕方の無い事ではありますが街クラブほどその傾向があると感じています。



多くの移民から成り立つブラジルと比べ、日本人は島国で異文化外国人苦手、"ガラパゴス"なんて形容される事もあります。



それは僕がブラジルに来てとても感じた事でした。


ブラジル人はとにかく文化とか言葉とかの違いに慣れてるんです。



日本のチームにいた時、とある欧州人コーチがいたのですが、宗教上の理由から彼だけ食事を特別なものにしたり、言葉が片言で異文化の人間なので、周りは「理解出来ない」「変な奴だ」と少し煙たがっていました。



これは日本の会社などでもよく見られると思うのですが、日本の常識に当てはまらない奴は使えないというレッテルが貼られ、外国人のマイナス部分ばかりがフォーカスされてしまいがちです。



しかしブラジル人の考えは違っていて、違う文化を喜んで受け入れ、「やったぜ!俺達とは違う文化(能力)を持った人間だから、上手く使えば仕事の範囲が倍になる!」という考えをしたりします。


例えば今まで商売の相手が2億人の人口のブラジルから、更に日本の1億人をプラス出来る可能性がある、というわけです。


しかも日本人は裕福ですから、ブラジル人から見れば下手すると市場が倍以上にも膨れ上がる感覚を持つわけです。




具体的にブラジルで行われている例を挙げましょう。


ブラジルはサッカー王国ですから、サッカー留学希望者が後を絶ちませんので、国がサッカー留学ビザというものを作っています。まずこれでビザ代が国に入ります。


街クラブも外国人を受け入れ、そこで生活の世話や練習費としてお金を貰います。


また生活していればどうしても消費しますから、地域が潤います。


また、最近は指導者の受け入れを初めようとしているクラブもあります。


あまり知られていませんがブラジルのプロクラブのスポンサーには日系企業も多いです。


僕が意外だった事は、ブラジルリーグで活躍した選手は毎年欧州やその他海外に移籍するのが通例なのですが、それを"奪われる"ではなく、ブラジル人としても「日本は高く買ってくれるから嬉しい」なんて耳にした事すらあります。




ここでタイトルにも出したキーワード、アジアが出てくるのですが、「ブラジルが海外に向けてやっている事と似たような事をアジアに向けて日本がやれるのではないか?」というのが僕が今回提唱したいテーマなのです。



最近になってからJリーグにアジア枠、東南アジア枠が出来、札幌のレコンビン選手、琉球のワンザック選手が加入して話題になりました。

日本からも岩政選手やカレンロバート選手がタイリーグに移籍。


また、僕が以前研修したカンボジアには日系チームが二つ誕生して元Jリーガーの移籍も決まったのですが、そこにはJリーグ共同トライアウトにアジアの選手、スカウトが最近になって増えたからだという背景もあります。



こういった事例もあり、近年急速に加速しているアジア進出ですが、どれもJリーグクラブの話題なんです。


アジアには親日的な国も多く、日本はアジアでは1番強い国なのですから、アジアから日本にサッカー留学したいという子供も少なからずいるのではないか?と僕は考えています。

少なくともラオス協会に研修した際には日本に行ってみたいという方がいらっしゃいました。



もちろん強さという点に関してブラジルや欧州に比べるとまだまだ魅力は足りないかも知れませんが、日本だからこその強みもやはりあって、そこで上手くやっていければ、日本でサッカーでご飯を食べていける代理人や指導者が増えると確信しています。


日本は安全で施設が素晴らしく、食事や練習にも細部まで気が利いている。
海外を回ってみて、この子はブラジルよりも日本の方が合っているのではないか?という子を見る事があります。
そこを説明してあげれば、需要はあるはずです。


東南アジアの国の人は貧しい人が多くて、海外挑戦しようという野心が足りないというのも課題ではありますが、逆に発展していない国だからこそ何かを発展させた功労者は金持ちで野心家でもあります。




日本サッカーの発展に繋がれば幸いです。
平安山