- 短期合格者だけが知っている! 「一発合格!」勉強法/日本実業出版社
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社労士試験の人気講師の著書です。
本書の良い点は、
・試験勉強で必要となる基本的な勉強法が比較的網羅的に述べられていること。
・それから何より目的志向が徹底していることです。
特に後者の目的志向の徹底ぶりは素晴らしいです。
本書には、勉強それ自体を目的に勉強する受験生と、合格を目的に勉強する受験生が登場します。
この2人の受験生の比較によって、目的意識を持った勉強法の重要性が説得的に表現されています。
本書を、社労士試験限定の方法論、あるいは択一試験向けの方法論と評価する人がいますが、たしかにその通り、本書の内容をそのままの形で司法試験に援用することはおすすめしません。
ちなみに、本書の内容もそうですが、司法試験以外の資格試験や大学入試の勉強法の本には、優れた方法論であっても、インプット重視・テキスト重視の方法論が説かれていることが多いです。
このブログの読者のような、良くも悪くも方法論オタクみたいな受験生の中には、こういったインプット重視の方法論に物足りなさを感じる方が多いかもしれません。しかし、司法試験や東大入試などの記述型が中心のハイレベルな試験は、日本の試験の中ではあくまでも例外に属します。
原則的な試験、つまり世間にある多くの普通の知識型の試験では、インプット・テキスト重視の方法論で基本的には構わないのです。
普通の知識型の試験では、問い→答えの変換作業に、司法試験のような難しさがないからです。
つまり、知識型の試験では、問い→答えは一目瞭然の形でイコール関係(問い=答え)を形成しているので、問い→答えの流れ(思考過程)をセットで押さえながら、問いを答えに言い換える訓練をする必要がほとんどありません。このような試験では、答えのほうだけを記憶しておけば、それで十分試験に対応できてしまうことが多いのです。
これが、知識型試験の方法論がインプット・テキスト重視で構わない理由です。
司法試験の方法論に過度に拘ってしまうと、いつの間にかこういった視点を喪失して、問題集原理主義みたいな方向に行ってしまう人がいますが、それはそれで問題です。
問題集を使うことは、あくまでも手段であって目的ではありません。
目的に定位した上で、問題集が必ずしも必要ないと感じれば、問題集に拘る必要はないのです。
あくまで必要なのは、目的に則して必要なことを考え、その必要なことを実行すること、それだけです。
いかなる意味でも、何かしらの固定された方法論にこだわることではありません。
【補足①】 もっとも、個人的には、問題集だけ解いていれば、社労士・行政書士・簿記・宅建etc…、大抵の試験には問題なく対応できると思いますから、別に問題集学習がズレているとは思いません。
(ただし、問題集=過去問でいいかどうかは、その時々の試験傾向との相談です)
【補足②】 また、問題集で行くかインプットで行くか、あるいは過去問潰しに意味があるかetc…を判断するためにも、直近の本試験問題の分析はどんな試験であっても必須です。
本書は、あくまでも知識型(択一型)試験に絞って、その合理的方法論が追及された本です。
具体的な個々の内容よりも、本書の目的志向の姿勢をこそ学んでいただければと思います。
おすすめ度⇒A