- 世界最速「超」記憶法 (講談社+α新書)/講談社
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私たちが何かを覚えられないのは、覚えたいことの全てを覚えようとしてしまうからである。
思い出す“きっかけ”だけに絞って記憶をすれば、簡単に覚えられるようになる。
本書の内容を私なりに要約するなら、↑このようになります。
多くの人は、たくさん覚えなければならないときほど、たくさんのものを覚えようとしてしまいます。
長い距離を走らなければならないときほど、長い距離を走るろうとしますし、たくさん食べなければならないときほど、たくさんのものを食べようとするものです。
あまりにも常識的な発想なので、私たちは普段↑こういった常識に疑問を差し挟むことがありません。
ところが、こと「覚える」点に限っていえば、驚くべきことにその常識は間違っています。
何かを覚える場合は、むしろ、覚える量を意図的に絞って、少なく覚えるほうが、たくさんのことを正確に覚えられるのです。
著者は、この考えに基づいて、数々の教育的実践をしてきた方です。
数ある記憶法の書籍の中で、本書の提示する方法は実にシンプルです。
方法論としても実行可能性が高いものだと思います。
冒頭に挙げた絞り込んで少なく覚える点だけでなく、記憶のコツとして、徹底的に繰り返す点が強調されている点も素晴らしいです。特に、覚えている間に繰り返すことが奨励されていますが、これも本当にその通りだと思います。
少し脇に逸れた内容ですが、法律の勉強について触れている部分があります。
法律の条文や会計学の文などの表現を理解し、記憶するためには、「その表現の条件である考え方」を徹底して先に理解していったほうが、記憶と理解はうまくいく・・・(P.206)
↑これは大賛成です。
このブログで再三にわたり、インプットでは条文構造の理解を、アウトプットでは処理手順の習得の重要性を訴えてきました。それは、こういった切り口(方法論)を持っている場合と持っていない場合とでは、勉強の効果に格段の差が生まれてしまうからです。
当ブログの思想を本書の内容に繋げていうと、条文を起点にすることや、論文の処理パターンを用意することが、確実に法全体の理解(※)に寄与したのは、法全体をそのままの形で相手にせず、習得すべき対象を「条文」と「処理パターン」に絞り込んだがゆえの成果であったと説明できると思います。
※ここでの「理解」とは、法を記憶・使用できる状態のことです。
もっと具体的にいえば、法を使って司法試験の問題が解けることです。
漠然とした概念としての“理解”のことを言っているのではないのでご注意ください。
もっとも、正直に申し上げると、私は記憶法という分野にあまり関心がありません。
上で述べた方法論的な絞り込みには大いに関心がありますが、知識の記憶を目的とした方法論には、あまり意味を見出せません。なぜなら、記憶の方法に問題があるために受からない試験など、この世にほとんど存在しないからです。
覚えていないから受からないというのは、単にその人の努力が足りないだけの話です。
それでも、何か一冊だけでいいので、簡単に実行できるシンプルな記憶法を知っておきたいという方には、本書をおすすめしておきたいと思います。
おすすめ度⇒A