「潰す」とは? | 司法試験情報局(LAW-WAVE)

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このブログの頻出概念である「潰す」という言葉の意味について、何人かの方からご質問を受けました。

これについては、以前、コメントの返信という形で以下のように書いたことがあります。


①単に頭で「覚えている」以上の、使えるレベル
②頭で理解している以上の、体で体得しているレベル

③100回解いても100回間違えないレベル
④特定の問題の処理について質問されたとき、考えて答えるのではなく、脊髄反射的に口が勝手に答え始めるところまで内在化されているレベル


要は、40度の熱で朦朧とした意識の中で寝込んでいるときでも、1秒で即答できるレベル(笑)です。

 

単に、覚えたor正解した、といったレベルで満足しないように、一通り学習を終えた更に上に、このような潰すというより高次のステージを意識していたほうがいい。これが私の意見です。

 

そういう規範を立てとかないと、受験生は次々と教材を変えていってしまいますから。

その上で、より本音をいえば、潰すという概念に本来終わりはありません

むしろ、潰せたと思ったところがその人の限界です。

「限界」とは、ある受験生が 対象から意味を汲み取れる限界量 のことです。

 

つまり、対象(ex.教材・講義etc…)から意味を読み取れなくなったところが、その人の限界です。

 

優秀な受験生は、何よりひとつの対象から汲み取れる意味の量が半端ではありません。

100回やっても、そこから100回新しい発見ができるのが優秀な受験生です。
100回やっても、100回成長できるのが優秀な受験生です。

 

対して、センスのない受験生は、せいぜい2~3回しか成長できません。

センスのない受験生にとって、ひとつの教材を4回5回と勉強するのは無駄にしか感じられません。

だから、すぐに教材を浮気してしまうのです。

つまり、センスのない受験生とは、何にでもすぐに飽きてしまう人のことです。


「過去問+数十問の事例問題をやれば論文対策は十分だよ」といくら言っても、「短答知識は肢別本で十分だよ」といくら言っても、ほとんどの受験生がそれ以外の領域に手を出します。

更に致命的にセンスのない人になると、それ以外の領域の意義まで熱く語りだしてしまいます。

それは、彼らが学習の対象から読み取ることのできるもの、その質と量が貧困だからです。

優秀な受験生は、その逆です。

優秀な受験生は、少ない教材から学び続けること、すなわち“成長”し続けることができます

そこまで学ばないと見えてこないものがある、と知っているからです。

つまり、

 


優秀な人は、

 

    ↓

 

対象から意味を汲み取り続けることができる

 

    ↓ (したがって)

 

教材を浮気しない(手を広げない)。

 

    ↓ (その結果)

 

教材を「潰す」ことができる。


この流れが、優秀な受験生の学習パターンです。

 

優秀な受験生は、「教材を浮気しない」とか、「教材を徹底的に潰す」とか、そういう規範をわざわざ自らに課すまでもなく、自然にこの流れに乗ることができる人です。


ちなみに、もうひとつ、「意味を汲み取れる」という説明とは別の角度からの説明もできます。

 

 

優秀な人は、

 

    ↓

 

目的意識が明確である(目的から目を逸らさない)。

 

    ↓ (したがって)

 

目的という観点から必要な教材にしか手を出さない。

 

    ↓ (あくまでもその結果として)

 

教材の浮気をしなくなる(手を広げなくなる)。

 

    ↓ (さらにその結果として)

 

教材を潰してしまうことになる。

 

 

↑こういう説明も可能です。

 

 

実はこちらの「目的意識」のほうが、試験勉強においてより本質的に重要な問題です。

 

しかし、今回は受験生の「対象から意味を汲み取れる量」の問題、あるいは「飽き」の問題のほうを主題にしたいと思っています。

 

本当は、どこまでも対象から意味を汲み取り続けることができたり、目的意識を明確に持つことができれば、「教材の浮気をしない」とか「潰す」といった規範をことさら意識する必要はないのです。

 

優秀な人にとって、「浮気をしない」とか「潰す」といったことは、結果の問題に過ぎません

彼らにとって、こういったことは、放っておけば結果として実現できてしまうものなのです。

一方で、普通の受験生は、放っておくだけではこの流れに自然に乗ることができません。

何度も書きますが、普通の受験生は教材の意味の読み取りが浅く、飽きっぽいからです。

 

そこで、普通の受験生には、優秀な受験生とは逆ルートを意識的に進むための規範が必要になります。

つまり、

 

 

教材を潰す(⇒そういう“規範”を自らに課す)。

 

     ↓ (そのためには)

 

教材の浮気(手を広げること)は厳禁。

 

     ↓ (そうやって)

 

なんとしてでも対象から意味を汲み取り続ける(⇒成長し続ける)。

 

     ↓ (そうすることで)

 

優秀な受験生になる。

 

 

このように、天然の優秀な受験生とは逆のルートを意識的に辿ることで、最終的に優秀な受験生と同じ能力を身に付けようというのが、「潰す」という規範の目的です。

 

基本的には、冒頭の①~④の「潰す」の意義を理解していただければOKですが、「潰す」という概念は、このような規範的な概念として理解していただいたほうがより良いと思います。

 

本当に大事なことは、ある一定の「潰す」という水準に到達することでは実はありません。

 

そういうゴールは、実はありません

 

それよりも大事なことは、本試験当日までに、でき得る限りの成長を続けることです。

「潰す」とは、果てしないゴールに向かって不断に歩みつづける動的概念でもあります。

 

不断に歩み続けるために必要なことは、ひとつの教材に習熟し続けることです。

手を広げていたらそれはできません。

人間関係に置き換えると分かりやすいです。

 

たとえ1000人の友人と薄く広く付き合ったところで、それでは人間理解は一向に進みません。

もちろん、どんなに深く&長く付き合っても、相手のことを100%理解できるわけではないでしょう。

しかし、次々と友人を取り換えたり、相手にすぐに飽きて浮気をする人の人間関係は、貧困です。

 

その人の人間関係の豊かさは、友人が何人いるかではなく、10年付き合った友人が何人いるかにかかっています(もちろん友人だけでなく、異性関係でも家族関係でも同様だと思います)。

 

友人や恋人をとっかえひっかえやっている人には、あるいは、人付き合い自体を避けている人には、なかなかこのことは理解されません。

 

こういう人は、半年くらい付き合えば、あるいはネットでも徘徊してれば、それで人を理解できた気になれるのかもしれませんが、当然ながら、人がそんなに浅いものであるはずがありません。

 

3日付き合えば3日分の、半年付き合えば半年分の、10年付き合えば10年分の、50年付き合えば50年分の相手(=対象)が見えてくるはずですし、その分だけ、自分も成長することになるはずです。

 

このように、対象(ex.教材)のひとつひとつを、人(=相手)だと思って付き合うことをおすすめします。