妊活とセックスを考える。 | HappyWomanのすすめ。

HappyWomanのすすめ。

仕事も恋愛も結婚も、もっと貪欲に、もっと自由に。
女性のハッピーな生き方を伝えていきます

―-何のためにセックスをしますか?

そう聞かれたら、どう答えるでしょうか。

 

妊活たまごクラブ(2019-202)」で、妊活とセックス特集を担当しました。

2年前の同特集をアップデートさせた形でしたが、時代の在り方とともにセックスの捉え方も変化していると実感しました。

 

 

 

■生殖とセックスを分けて考える

 

今回の特集のなかで、産婦人科医の宋美玄先生と、男性不妊治療を専門とする小堀善友先生に、妊活とセックスについて対談していただきました。

そこで小堀先生は「セックスには大きく3つの意味合いがある」と説明してくれました。一つが性欲、2つ目が生殖、そして3つ目が連帯です。

どれか一つ、というわけではなく、どの目的も少しずつ重なり合っているのですが、何を重視するかは年齢とともに変化します。結婚や出産を考えない10代、20代は、性欲が一番だった人も、結婚をすると、子供をつくるための生殖の意味合いが強くなるでしょう。そして子供を産み終わったり、一人の人と長く寄り添ったりすると、連帯や愛着の意味合いが増していきます。

 

今回は妊活特集なので、話題の中心は「生殖のためのセックス」でした。医療の進歩により、今はセックスをしなくても子供を産むことが可能な時代です。一方で、生殖のためのセックスを頑張り過ぎた結果、疲弊するカップルが増えているといいます。

排卵日に合わせてセックスをする「タイミング法」はその最たる例で、「今日!」と言われると緊張して頑張れない夫、「なんで頑張れないの? 月1回のチャンスなのに!」と焦り嘆く妻。やがて夫婦仲までギスギス……。「妻だけED」になる男性も続出中とか。

男の人は繊細だなぁ、と思いつつも、なんでやねん!と突っ込みたくなります。

 

そんな状況になるくらいなら、と宋先生は提案します。セックスは、お互いに気分が乗ったときにすればいい。そして、妊娠の手段としては、人工授精という医学の助けを借りるという選択肢もあるというのです。

そもそも、同じ人とのセックスは消耗品である。ときめきやドキドキは、日を追うごとに薄くなっていくのに、したくもないセックスですり減っていくのはもったいない、と宋先生は言います。

確かにそうだな、と思います。一人の人とずっとセックスができる人もいるけれど、たいていの場合は飽きてしまったりマンネリになったり、あるいは、どちらかが病気になる、親の介護に時間をとられるなどの理由でセックスができない状態になることもあります。パートナーとのセックスが限られた貴重なものだとしたら、その1回1回を苦痛なままするよりは、大事したい。何より楽しめたほうがハッピーです。

幸せなセックスを続けるには、運も努力も必要なんですよ!」という宋先生の言葉が心に沁みました。

 

 

ただ、ここで注意したいのは、妊娠を望んだ場合にとるべき手段の入り口は「人工授精」であり、「体外受精」ではありません。人工授精は男性の精子を女性の子宮に挿入して着床させる手段ですが、金銭的にも身体的にも比較的負担が少ないのが特徴です。

しかし、なぜか人工的に妊娠するというと、「体外受精」を想定する人が多いらしく、これは女性の卵子を取り出して体外で受精させ、受精卵を女性の子宮に戻す方法なので、医療費も体への負担もかなり重くなります。

性行為だけに問題があるなら、イキナリそんな高度な治療に進まず、人口授精から試すべきです。

 

先日、たまたま開いた女性誌に、有名なエッセイストによる悩み相談のコーナーがありました。

いま付き合っている彼のことが好きだけど、セックスレス。このまま結婚していいのだろうか、という悩みでした。

これに対し、エッセイストの答えは、「本当に彼のことが好きで、彼との子供を望むのであれば、体外受精をすればいい」というもので、ビックリしました。

体外受精は、第三者が気軽にすすめられるものではないと思います。エッセイストに知識がなかった、あるいは単純な勘違いだったとしても、編集者は気づいてほしかったな……と残念に思いました。

 

2018年には「夫のちんぽが入らない(おとちん)」という私小説もヒットしました。他の男性とはセックスできるのに、なぜか好きな夫とは挿入ができない、という悩みが、同じようにセックスに悩みを抱える読者に響いたのだと思います。

セックスは相手がいる問題だから難しいし、誰にも相談できずに悩んでいる人は多いのではないでしょうか。

おとちんの著者であるこだまさんは、子供を作らないという結論を出しましたが、今はいろいろな考え方や選択肢があります。それらを知ることで、悩んでいる人が少しでもラクになれるといいなと思います。

 

 

 

 

■人間のセックスはVRを凌駕できるか

 

もう一つ、この対談で興味深かったのは、「若者の性欲は減退しているのか?」という話題。今の20代・30代は、セックス未経験の人が増えているとも言われています。昔に比べて性欲は薄くなったのでしょうか?

 

小堀先生は、「確かに、日本人男性の精巣のサイズは小さくなっている」と言います。また、40年間で精子の濃度が半分に減少しているというデータもあるそうです。原因は、食事や睡眠など、生活習慣によるものが大きいと考えられています。

 

ただ、宋先生は「価値観の違いだから、別に嘆く必要はない」と楽観的にとらえています。死ぬまでセックス!と息巻いている昭和のおじさんと今の若者とでは、そもそも考え方が違います。セックスは絶対にしなければならないものだとは思わないし、抱いた女の数やセックスの回数を誇ったりしない。

 

私は昭和の人間なので、ついつい、セックスを知らないなんて不幸ではないか。若いうちは抱け!抱かれろ!なんてけしかけてしまいそうになりますが(苦笑)、価値観は多様でいい。

そのうちVR(バーチャルリアリティ)がもっと発達すれば、例えばTENGA×VRなどで本物のセックスに限りなく近いひとりエッチができる時代が訪れるかもしれません。

 そうなると、血の通った生身の人間とのセックスは、面倒くさくてますます敬遠されていくのか、あるいはむしろ価値が見直されることになるのか。果たして、どんな未来が待っているのでしょう。