役立たずが役に立つ日 第7話 | この指とまれっ!

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7、最終兵器

アイの心配をよそに、男に撃たれたヨマはすぐに身軽に起き上がる。

その体は金色の光に包まれていた。

「俺は大丈夫だ!走れ!アイ!」

アイは無我夢中でシコンの手を引いた。

頭の中がぐちゃぐちゃで、見えない力に押し進められるようだった。

華奢な男は歓喜の声をあげる。

「見たぞ…。それがポルクの力か…。銃弾も弾くなんて便利な代物だなぁ…」

「言っておくけど、ポルクの力は人間には作用しない。ポルクの恩恵を受けられるのはパルミクだけだ」

ヨマを守るようにしていた金色の光は、首から提げるポルクに吸い込まれるようにして徐々に消えていく。

「そうかぁ?じゃあ試させてもらわないとなぁ…」

男は銃が効かないとわかると小さな鉈を振りかざしてヨマに飛びかかった。

ヨマは持ち前の素早さで簡単に男の攻撃をかわす。

「ウザいやつめ…!」

男は力いっぱい鉈を振り下ろしたが、ヨマは銃剣で半分ほど力を受け止めたあと、残りの半分は横に薙いで流した。

「人間って動き遅すぎ。俺にはかたつむり並みのスピードに見えるけど」

「んだとぉ!?」

ヨマの挑発に乗り、華奢な男はめちゃくちゃに鉈を振り回す。

ヨマは防戦に徹しながら、うまく男を誘導し、どんどんアイたちとの距離を離した。

「ポルクを寄越せえぇぇえっっ!」

男は目を血走らせながら叫んだ。

ヨマは男に対して半ば呆れながら横目でアイとシコンを確認したが、すでにかなり距離がとれているようだ。

あと数十歩も離れれば、猛植の銃を使っても問題ないだろう。

「余裕ぶっこいてんじゃねぇぇえ!」

男の絶叫を聞いてヨマは再び目の前のことに意識を戻したが、やはり男の動きは遅く、何でもないことのように鉈の届く範囲から身を引いた。

「くっ…」

どんなにパワーがある攻撃でも当たらなければ意味がない。

身のこなしはヨマのほうが断然上である。

すると男はにやりと嫌な笑みを浮かべた。

「なぁ…守るもんがあるって辛いよなぁ…?」

「は…?」

男はヨマの返事を待たず、アイとシコンに向かって走りだした。

「姑息なやつ…!」

ヨマもすぐに走り男の前に立ちふさがったが、先ほどまでの守りの戦い方では簡単に抜かれてしまう。

男はもう挑発にも乗ってこないようだ。

「止まれ!ポルクがほしいんだろ!」

仕方なくヨマは男の力に真っ向から挑む戦法に出た。

「そう来なくっちゃな!」

男は弱者を虐げる喜びを見出だし、嬉しそうにヨマの言葉に応じる。

パワーのぶつかり合いになると一気に形勢は逆転した。

ヨマが1歩でも引けばあっという間に男と少女たちの距離は縮んでしまう。

「結構頑張るじゃねぇか白い狐ちゃんよぉおっ!」

男の一撃を受け止めるヨマの手が、だんだんと痺れて感覚を失う。

「大人しくポルクを渡せば許してやってもいいんだぜぇ?」

華奢な男が気まぐれに鉈を振るう。

しかし、すでに体力を消耗していたヨマはその一撃を受けきることができず、小さな体は草むらに薙ぎ払われた。

「うぅ…っ」

ヨマはすぐに起き上がろうとしたが、左肩が鉈で深く斬り込まれてしまい、立ち上がることはできなかった。

男は薄ら笑いを浮かべながらヨマに近づく。

「悪い悪い、痛かったかぁ?小さい子に対してついムキになっちまったなぁ」

ヨマは傷口を押さえながらなんとか身を起こす。

1歩ずつ近づいてくる人間の男はやはり大きかった。

人間にとっては小さな鉈も、ヨマにはとても大きな凶器に見えた。

「ふーん…おまえ、まだやる気なんだ?」

男はおもむろに立ち止まり呟いた。

力を振り絞って立ち上がったヨマが、男に銃口を向けている。

「…ポルクは生きてる…。おまえには渡せない」

まだ撃つことはできない。

男と交戦するうちに少しアイたちとの距離が縮まっていた。

"俺がやばくなったら、たとえ2人を巻き込んででも使わせてもらう"。

そんなことが本当に実行できたらどんなに楽だろうか。

だが、ヨマの頭の中は自分の命と引き換えてでも少女たちを守りたい想いでいっぱいだった。 

そんな事情など知らない華奢な男は、チャンスとばかりに間合いを詰めると、容赦なく鉈の背でヨマを殴りつける。

大樹の根本まで吹き飛んだヨマはまた立ち上がったが、肋骨のあたりに折れたような痛みを感じた。

しかし、おかげでようやく十分な距離がとれた。

言うことを聞かない全身に鞭を打ち、すぐにでも男を撃ち抜こうとするが、小さな引き金がとても重く感じる。

「へっ…。健気だな。これで終わりだ!」

「まだだ…っ」

引き金を引こうとするヨマの瞳に、男が鉈を振り下ろそうとする姿が写る。

引き金を引ききるより鉈が自分を貫く方が早そうに見えた。

アイとシコンの顔が頭をよぎる。

ポルクさえ手に入れば2人の命が奪われることはないだろう。

しかし、案内なしに村まで帰れるだろうか。

猛植の餌食にならないだろうか。

危険なことに自ら首を突っ込んで厄介だと思ったが、あんなになついてくれた人間は初めてだった。

森を守って1人になったのはいつからだっただろう。

久々に他者の優しさや気遣いに触れることができて、少し楽しかった………

気づけばヨマは、無事に引き金を引ききっていた。

猛植の種が風に舞い、辺りを綿毛が白く染めている。

男が持っていた鉈が地面に落ちているのが視界に入った。

どうやら鉈を振り下ろされるより、銃を撃つほうが早かったようだ。

「なんだよ…良かっ…」

ヨマは1歩踏み出して歩みを止めた。

空中に舞う綿毛が落ち着いてくると、認めたくない現実が広がっていた。

「シ…シコン…?」

ヨマの目の前には、華奢な男に後ろから抱きつくようにして倒れるシコンがいた。

いつの間に戻ってきたのか、シコンが身を呈して、男の鉈を止めたらしい。

その体からはすでに無数の猛植が芽吹き、今にも花を咲かせそうな蕾さえある。

「どう…して…?」

ヨマがシコンを抱き起こすと、シコンは微かに目を開いた。

「ヨ…マさ…大…丈夫で…か?」

猛植の根がシコンの体の中をすごい勢いで支配していくようだった。

「どうして…どう…して…?」

ヨマはシコンの体が寄生されていく事実を受け入れられず、涙を溢れさせた。

「…迷惑か…て…ごめ…なさ…」

掠れた声で言うと、シコンはそれきり動かなくなった。

「嘘だろ…シコン…嘘だ…」

シコンの閉じられた右目から大きな蕾が伸びた。

泣き崩れるヨマに見せつけるように、猛植は一瞬のうちに立派な花を咲かせる。

ヨマは激しい吐き気を感じ、シコンの体の上に突っ伏すように倒れこんだ。

血を失ったショックと救えなかった結果がヨマの生命力を奪う。

ぼやける視界に、泣きながら近づくアイが入った。

来るな、おまえまで寄生される、と叫んだつもりだったが、口はまったく言葉を発していなかったようで、アイはシコンの隣に座り込んでしまった。

"ああ、猛植に喰われてしまう"。

ヨマの意識は絶望の底に沈みながら途切れた。

第8話

目次

☆ ☆ ☆ ☆ ☆


旦那のお母さん、つまり義母なのですが、旦那から妊娠報告をして以来ちょっとだけ電話が増えた気がします(^_^;)

私に来るんじゃなくて旦那に電話がいくだけだからいいんですけど、そのたびに「腹帯どうするの?だってさ。普通はお嫁さんの親が用意するらしいよ」とか、「戌の日はアイスのお母さんどうするの?って聞かれたよ。普通はお嫁さんの親が付き添うらしいから」とか言われると、ちょっとめんどうだったりします(笑)

私の実家も旦那の実家も片道4時間の距離。

小まめに頼ることはできないし、最初から頼る気もありません(*_*)

自力ですべてやっていくつもりで高校生くらいのときから心の準備をしてたのに、他のご家庭から「親がやるもんだ」って言われるとわずらわしくて( ̄▽ ̄;)

気軽に頼れない親子関係ってありますしねw

お義母さんの電話が苦手だなって思う理由はもう1つ…いや、2つあって(笑)

どちらかというとこの2つが私の中でネックになってしまっています(*_*)

1つ目は、3年にわたり結婚を反対され続けたこと

_<)

しかもバブルのときの金銭感覚が捨てれない人だから不況世代の私たちと話が噛み合わないw

2つ目は挙式を中止するよう騒がれたことです(T▽T)

理由はやっぱりお金のことらしくて、全部自分達でできるように用意してるのに口出しが激しく、最終的には「旦那の家に従えないのか!」「アイスちゃんの親だって次男だから結婚を許したに決まってる!」とかどんどん話が逸れるのでちょっとめんどうに思ってしまったりw

結局挙式は切迫流産で中止になったけど、お義母さんにいろいろ言われてたから「どうせ中止になって内心は喜んでるくせに」とか意地悪なこと思っちゃうし、赤ちゃんのことにあまり口出さないでほしいとも思っちゃいます(^_^;)

旦那の家は男の子しかいないから「初めての女の子!」ってことで楽しみにしてくれてるみたいですけど、この子はあくまで私の子だし(笑)

心狭いなって自分でも思いますが、お義母さんを好い人だなって思えるのはまだちょっと先になるかもしれません(*_*)