橘玲の「80's」はタイトル通り、80年代の東京で青春時代を送った作者の自伝的エッセイだ。
1959年生まれなので、ほぼ20代のすべてを東京の出版業界で過ごしたことになる橘さんの話は、61年生まれで、同じ時代をフリーのライターとして零細出版業界の隅っこで生きていたぼくには、たまらなく面白い。
もっともぼくは、ほんの数年で足を洗い(というより出版バブルの消滅とともに仕事がなくなったのだが)役者業に専念することになる。
まあ専念、と言うのは見栄で、商売として成り立っていたわけじゃあないですが。
章題には当時の流行歌のタイトルがつけられている。
1984年は「雨音はショパンの調べ」。
深夜YouTubeで検索するとすぐに小林麻美の歌声が流れてきた。
アンニュイなその歌声を聴いていると、80年代半ば、バブル前夜の浮き浮きと輝いている東京の夜が鮮やかによみがえるような気がして、アタマがくらくらしてきた。