パーク アンド ラブホテル  やっぱ、恐るべし!PFF。 ベルリンでも賞!   | 新・伝説のhiropoo映画日記

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映画が好きだ。ドラマも好きだ。
そして、イケてる面はもっと好きだ。

そんな好きなものが詰まった日記、読んでみるかい。


                          

2007・邦画     ★★★★☆(4.1)

                   

監督:熊坂出

出演:りりぃ  梶原ひかり  ちはる  神農幸  津田寛治  光石研 



大きなバックパックを背負い、ポラロイドカメラを片手に髪を銀色に染めた少女・美香(神農)、

街をさ迷い歩きながら、時より気に入ったモノがあるとシャッターを押す。

                         

とある細い路地を歩いていると、奇怪な光景を目の当たりにする。

男女の混じった老人達やイタズラ盛りの少年達、もっと小さな子供達までもがラブホテルに入って行く。

しかも自動ドアが開き、何の躊躇も無く「こんにちわ」と明るく挨拶をして…。

                            

不思議に感じた美香も子供達につられて、ホテル内に入ってみた。

同じ様にエレベーターに乗り…、すると少年の一人が気軽に声を掛けてくる。  

「おばさん、名前なんていうの?」  「おばさんじゃないです。まだ13だし…」


                   

「おばさんじゃん!」…、少女がポツリと漏らす。


不思議なエレベーターが開くと其処は、ホテルの屋上に作られている本当に小さな公園。

遊具で遊ぶ子供達や小屋の中で密談に興じる少年達。

赤ちゃんをあやす主婦もいれば、将棋の対戦をする老人達もいる。



何時も決まった時間にホテルの営業の終了を知らせる看板を表に掛ける、オーナーの艶子(りりぃ)。

そのまま、裏木戸から回って、何時見ても何も入ってないポストを覗く。

そして、階段を上がって屋上で遊ぶ皆に帰りを促す…。

「人間は帰る時間ですよ」  少年達は、たまに口答えする。  「人間は夕方には家に帰るもの」

「夕方、こんな所で遊んでいるのは吸血鬼」だと…。


艶子は今日始めて顔を見せた、銀色の髪の少女の事が気に掛かっていたが、夕方には姿を見なかった。

帰ったのか?そう思っていたのだが…。



                    

少年達の秘密基地の小屋に美香がいる事に気付いた艶子は、美香が持っていたカッターナイフを取り上げる。

鉛筆を削ろうと思っただけだったのに…。  何も聞かずに「ご飯食べていきなさい…」と誘う艶子。



毎朝、ホテルの前の路地を掃除する艶子。  

決まった時間に必ず「お早う御座います」と挨拶して、通り過ぎるウォーキングの主婦・月(ちはる)。


ある時、何時もとは違った時間に路地で出会う、艶子と月は初めて会話を交わす。



                              

やっぱり、艶子は何も聞かずに月をホテルの屋上に連れて行ってやる…。



ラブホテルの常連客のマリカ(梶原)。 毎回違う男と必ず手に持ってくるアタッシュケース。

しかも、若い娘なのに横柄な態度に艶子の事を口汚く罵る。  艶子も決して負けてはいないが…。


                  

偶然、艶子の秘密を知ってしまったマリカは、代わりに自分の秘密も艶子に知らせようとするのだが…。


                          

眠って、目覚めれば朝が来て…。  また、何時もの毎日が始まる。

けれど、その毎日は昨日とはちょっと違う…。


その街の古びたラブホテルの屋上には、小さな公園がありました。




《***》

「砂の影」をついでに見た、本命の方の作品がコレ!

今、巷で大人気の「内田けんじ」監督と同じPFFアワード出身の熊坂出監督。

PFFスカラシップ作品として撮りあげた長編デヴュー作品。

ベルリン国際映画祭では、招待作品ながら最優秀新人作品賞に輝いた。

                      

何時も仏頂面のおばさん(まだ59歳と言うのが口癖)と関わる事により、心に掛かった雲を拭い去り

新しい自分を見つける…。  

そんな感じのシチュエーションは、海外作品にも良くあるし、外国人にも分かりやすかっただろう。


ただ、舞台設定が奇抜も奇抜! 本当に素晴らしい。

タイトルには「ラブホテル」とあるのだが、よく見ると完全に「連れ込み旅館」ホテルなんてよさ気なモノでは

全然無い。

その屋上に、浮気性の旦那が買い揃えた遊具を設置した。

この辺りには、公園らしい公園が無かった為…。  

で、やり始めたのは良かったが、旦那が始めたホテルなのに、女と何処かに行ってしまった…。


仕方なく、妻の艶子さんが見よう見まねで始めた商売。 (当時は人も雇っていたと言う台詞もある)

今は、休憩のみのラブホなのである。


艶子と関わる3人の女性達。  年齢も関わる理由も全く違うが、私はマリカとの関わりが一等好き。

あんまり詳しく描かれていないなんて言う、レヴューも有ったが…。

私は反対に余り詳しくは、描かないで欲しかった。

             

艶子さんの事を「ババァ」等と口も態度も悪いマリカだが、女としての痛みを知っている。

艶子さんにも、それは少なからず共通する痛みなのかもしれない。


マリカは口は悪いが、結構良い女。  

始めて見た女優と思っていたら、関西人はよ~~く知っている「おけいはん」だった! 頑張れ!



                             <熊坂監督 マンマの姿でベルリンにも行かれていました!>

                   

りりぃのイメージは、ハスキーヴォイスでホッソリしていて、姉御肌って言う感じだったけれど。

美香に「おばあちゃん」と言われても、全く可笑しくない雰囲気。

                     

月日の流れを見せ付けられるね~。 (スクリーンの向こうから「お前もな!」と言っていると思う。)

                   

「私の人生なんか、最低だわ!」って、仏頂面で生きている人々に

人生って、案外悪い事ばっかりじゃないんだよって、コッソリ耳打ちしてくれる様な、優しい作品だった。

もっと、沢山のシネコンでも掛かって欲しいなぁ~。