心配かけるので言わないでおこうかとも思ったが、実家の母にだけ事後報告というわけにもいかず、
コロナ感染を伝えることにする。
心配しすぎて自分が体調崩すような母なので、
電話で軽症をアピールしておこう。
普段から、母との電話は長い。
心配すれば更に延びる。
やや怠く、ガラガラ声で話すのは辛いのだが、
ここで辛いからと伝えればもっと心配するだろう。
心配する母も大変だろうが、
心配かけまいとする娘の方も
なかなか大変なのである。
コロナについて、あちこちから色々聞いているであろう情報を事細かに教えてくれる。
「換気大事よ、しっかり換気するのよ!」
「冷やしちゃダメよ。部屋を暖かくするのよ!」
…母よ、それは確かにその通りだが、この時期どうすればしっかり換気しながら暖かい部屋を保てるのかを教えてほしい(^_^;)
「忙し過ぎるのよ。仕事以外はもう止めなさい。バレエ観に行くとかお稽古ごととかは止めるのよ。」
…母よ、私はバレエやお稽古のために働いているのだ(もちろん生活のためもあるが)。
「もう私もコロナになって
あなたのコロナやっつけてあげるわ」
…母よ、それで私のコロナが治るなら、もうコロナ自体無くなっている。
それに、自分でコロナやっつけてるとこだから大丈夫だ。
「もう今すぐ歩いて行こうかしら」
…母よ、私は誰とも会えないのである。
そして、およそ50kmの距離。
仮に来てもらうとしても、母は公共交通機関を使ってなんら問題はないので、歩いてくる必要はない。
終電後に私が「来て」と頼んだとして、すぐ歩き始めるより、始発を待って向かった方がかなり早く着くだろう。
ツッコミどころ満載の話を咳込みながら聞いて、やっと電話を切る頃には、不思議と少し身体が楽になっていた。
恐るべし 母パワー!
そして先程、母から見舞いの品が届く。
私の好きな品々がぎっしり詰まって、「北国の春」の歌が浮かんでくる。
♪届いたぁおふくろの 小さな包みぃ~♪
届いたよー とLINEを送り、少しなんやかやをやってから、くず湯を飲もうと湯を沸かしていたら固定電話が鳴った。母である。
我が家の固定電話はほんとに壁に固定されていて、長電話には不向き。
スマホにかけてくれといつも言っているのだが…
ため息つきながら電話に出て、湯が湧いたからと話を切り上げ、ふとスマホを見てみたら「不在着信」の表示が。
あ、母 スマホにかけてくれたのか。
私が気づかなかったのか。
そして母からのLINEも届いていた。
電話にも出ずLINEも返信がないので、
心配になって固定電話にかけてきたようだ。
母には母の考えがちゃんとあり、
気を遣ったりもしてくれているのだろう。
すごくすごく心配しているのだろう。
ズルズルと甘いくず湯飲みながら
クスクス 独り、少し泣きながら笑った。
ブツブツと母の文句言いながら、
いつまでも子供で居るのは居心地いい。