間一髪レベル100 | 坂本龍~今夜は泡風呂ぐ~

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つい先日『間一髪で助かった』
という経験をした。

この『間一髪』レベルは尋常では無かった。

終電間に合った〜〜と言うような
生優しいものではない。
例えるなら入試開始5分前に起床し絶望するも
そこに突如ケンタウロスが現れ、
入試会場まで猛スピードで運んでくれて
無事に間に合う、くらいの、
運の要素も孕んだ間一髪度合いだった。



友人宅で遊んでいて、そのまま
泊めてもらう運びとなり
楽しい一夜を過ごした。

そしてその翌日お昼ごろに解散し、
とりあえずお風呂に入りたかった俺は
なんか自宅のお風呂に入るのが
嫌だったので(夜に入ると言う概念があるから)
そうだ銭湯に行こうという決意をした。

昼間から開いている銭湯に着き、
入浴券なるものを買い、鍵を渡され
スムーズに更衣室まで到着した。

何せ銭湯は久々だったので、
『あれ、銭湯のシステムって
こんな感じだっけか...?』
と、更衣室に至るまでの一連に、
一抹の違和感を感じた。




何か、ものすごい大事な何かを
すっ飛ばしている気がしたのだ。


まぁでも、銭湯で抱く違和感なんて
特段大した事ないだろうと、
その違和感をおざなりにした。


それにしても銭湯というのは異常である。
あらゆる他人が一同に介して
全裸になり、思い思いにお湯へ浸かる。
なぜ暖簾をくぐったその先から
全裸になっていいんだ。

誰が決めたんだ?
ほんまにええんか??
脱ぐぞ??俺は今から、脱ぐぞ??


あのお爺さんも、あの坊ちゃんも、
そして俺も、この空間に流されて
上半身はおろか
下半身までも全開に露出してしまっているが、
果たしてこれは大丈夫なのか??


突然警察が乗り込んで、
こうぜんわいせつなんちゃらの罪で
手錠を掛けられたりするのでは??



と、あまりにメタすぎる感情を抱きながら、
まぁ入るか。と、扉を開けた。


これだ、銭湯というやつは
まず掛け湯をしなくてはならい。


桶でお湯を掬い、
いざ身体に掛けようとしたその瞬間に、
脳内で『ヤメロ!!』
と、もう1人の危機管理に長けた自分が
素っ裸の俺に言い放った。


なぜ、もう1人の俺が掛け湯を
中断させた...?





これは、果たしてさっきの違和感...??








は!!!!!












バスタオル買ってない!!!!!!!! 









そう、俺はあまりの銭湯ブランクに
バスタオル、ミニタオル付きの券を横目に、
ただただお風呂に入る権利だけを
得ていたのだ。



このシンプルかつ大胆な失念が、
冒頭の違和感だった。



もし
あのまま掛け湯をしてしまっていたら、
俺はタオルを持ってないのに
びしょ濡れになっていた。
そしてそのまま浴槽に浸かり、
身体を洗ったりして、
うぃ〜という具合に更衣室に戻る。
そこのロッカーにはタオルが無い。
無いのだ。

つまりそれは、
水分を吸収する術が無いのだ。


びしょ濡れ散らかし人間の誕生である。


そうなれば
そのまま自然乾燥を待つしかない。
恐らく30分はかかるだろう。


更衣室に、お風呂にあがった人間が
拭くでもなく、ただただ直立不動で
自然乾燥に身を委ねている人間がいたら、
それはもう不審者だ。



見てパパ、あの人濡れたまんまで
ひとつも動かないよ



見ちゃダメ、
さ、なんか飲み物で買おっか


と言った囁きが方々で行われて


いよいよ警察が到着し、

『君に通報が入っている!
びしょ濡れ罪で逮捕する!!』


と言った感じで牢獄生活がスタートするのも
安易に想像が出来る。



そんな地獄ライフを
間一髪のところで食い止めた。
しかもこれは他人による助けではなく、
本能の部分で、実力でだ。



実力で勝ち取ったのだ。



その誇りを胸に、
もう一度更衣室で服を着、
番台に向かい
『なんかタオル買うの忘れちゃってました笑』
とヘラヘラしながら
事なきを得た。




ありがとう俺。
そしてケンタウロス。