本当のなにわ商人とは?必要な利益と、守るべきものと。 | アイループ パソコン修理日記

アイループ パソコン修理日記

大阪市阿倍野区のパソコンショップ「アイループ」における修理記録をつづります。

【症状】
正常に起動して動いているが、起動後にピッピッピッ・・・とブザー音が延々と鳴り続けて騒がしい。

【結果】
キーボードの上に500枚入りのコピー用紙が置いてあって、その重みで複数のキーが常時入力状態でした。それらの入力を処理しきれないため、マザーボードのブザーが鳴り続けていたのです。コピー用紙を持ち上げたら直りました。



そのお客さんはキーボードで文字を入力することがほとんどないそうです。パソコンの前にキーボードが見当たらなかったため、思わず「キーボードどこですか?」と尋ねたほどです。基本的にマウスだけで操作されていました。普通に考えればパソコンを使う上で文字入力は避けて通れないはず、なのですが、パソコンのサポートをやる人間は本来そういうお客さんの存在を想定しないといけません

キーボードが使われていないという状況を想定できず、電話で症状を聞いた時点で原因がわからなかったのは僕のスキル不足です。電話の時点で想定できていればすぐ直ったでしょうし、出張する必要すら無かったのです。

2年前に当店で購入された品であり、すぐ直ったため料金はとっていません。



話は変わりますが、何をもって「本物のプロ」と言えるのでしょうか。上の例では、電話の時点でキーボード入力の異常に気付くのがプロかもしれません。しかし、それを電話で伝えると出張しなくても直ってしまうので料金が取れず、それはプロとして失格なの「かも」しれません(甲斐性なし)。では、売上に繋げるためにわざと出張して料金を取ってくるのがプロなのでしょうか。

別の話で、起動できないのでリカバリすることになったとします。リカバリの際にデータの救出とリカバリ後のデータ復元は追加料金がかかると案内して、「それならデータはあきらめます」と言われたとします。ハードディスクの故障でなければデータはすぐ目の前に残っているのです。取り出そうと思えばすぐに取り出せます。しかも文書ファイルなど小さなデータばかり、手間といってもたかが知れてます。しかしお客さんは、追加料金がかかるならデータをあきらめるとおっしゃいました。ではデータは消して良いのでしょうか。このような場合、さりげなく「ついでなのでデータも取っておきました」と追加料金を取ること無しに対応するのが親切だと思うのです。目の前のデータを残酷にも見捨てて作業するのは、精神的に耐え難いものがあります。

へたに技術力があると、このような問題とか悩みに直面します。これまでは「今後の売上に繋がればそれで良い」と、電話で済むものは済ませ、僕の判断で行った勝手な作業は料金を取らず、売上に繋がりませんでした。しかし、家族を養うとなれば話は別です。もし会社であれば、社員とその家族を養う必要があります。その場合はどうなのか…。ともすれば僕は、他の同業者さんの料金が高いような書き方をしてしまうことがあります。そういう発言をすることもあります。ですがその料金設定は普通であって、当たり前なのです。守るべき人を守るというのも、人に課せられた仕事なのです

いつも思うのですが、専門家からすれば技術力でお客さんを丸め込んで搾取することは難しくないのです。お客さんは専門家の手のひらの上に乗っていて、ある程度のマインドコントロールをかけることができてしまいます。それこそ、利益重視でえげつない商売をするのは難しくありません。しかしそれはプロとしてどうなのか…顧客を大切にできているか、守るべき人を守れるか、そういうことを最近よく思うのです。



いまアイループは僕が単独で経営しています。社員やアルバイトはいません。加えて、僕には守るべき人がいません。この状況だからこそ、今の値段設定でもどうにかなっています。例えば将来的に結婚したり子どもができたり、そういう状況になったらどうでしょう。家庭を維持するにはカネが必要です。ある程度お客さんに経済負担がかかったとしても、自分たちを守るための方針を打ち出すべき時が来るかもしれません。

10分で終わる作業を、わざと1時間かけて請求額を釣り上げることができます。その場でできる修理も、わざと数日お預かりして手間がかかったように見せかけることができます。見積額を少し超えて請求しても、お客さんは言われた金額を支払うしかありません。修理する価値の無い古いパソコンを、修理してくれと言われれば「無駄に」修理することだってできます。ハッキリ言って、修理業者というのはどうにでもできるのです。技術を盾に、お客さんをどうにでも丸め込めます。僕は6年やってきて、つくづくそう思います。

将来そういった日が来ないとも限りません。僕のことなので、値上げについては告知するかもしれませんが、無駄に値段を釣り上げる行為を僕が親切に教えるとは限りません。性格上では言いたくても、言えない場合も有りえます。家族のため、その精神負担に耐えねばならない時がいつか来るかもしれません。

本当の意味での「なにわ商人」とは、どうあるべきなのでしょうか。いま現在30歳、プロと自称しながらもまだまだ未熟ですが、よろしければ今後も見守っていただければ幸いです。