映画クレヨンしんちゃんの歴史 | 畑雅文のブログ

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クレヨンしんちゃんの映画も2020年で28作を迎えました。ドラえもんの大山のぶ代さんは25作まで担当しましたが、矢島晶子さんは26作で卒業されました。
20作目の手前くらいまではファンの間でも監督は誰が良かったとか色々なコメントが飛び交って面白かったですが、今ではもう監督も9人目。脚本家も代わる代わる別の人だったりするので複雑になり、比べるのもややこしくてシリーズ全体としての比較トークがされなくなってきました。

興行収入もかなり高い位置をキープし始めてから、観客が増えた分、ドラえもんでもコナンでもなくしんちゃん派という根強いファン(主にネットに書き込む元・子供達)の声がそこまで全体のシェアを占めなくなってきたのだと推測してます。

そこであえて、歴代シリーズを並べて「◯◯時代」とか区分けしてた当時の連中の意思を正式に継ぎ、現在までの28作を無理やり歴史づけようと決めました。

では参ります。

【創世時代】
あんま使わない言葉ですね。ソーセージみたいです。創世記とか黎明期なら分かるけど、仕方ない。理由は後述します。

(1)「アクション仮面vsハイグレ魔王」
(2)「ブリブリ王国の秘宝」
(3)「雲黒斎の野望」
(4)「ヘンダーランドの大冒険」

こちらの4作は本郷みつる監督による始まりの章。ファンタジー色が強く、タイトルからも分かる通り子供が好きそうな下ネタも多く含まれてますが、大人向けのシリアスな雰囲気もちょこちょこ差し込まれます。
ヘンダーランドでアクション仮面とぶりぶりざえもんとカンタムロボが勢揃いした事により、ある種の到達点のように感じます。
それで原恵一監督にバトンタッチした次の作品群も創世時代に当てようとしましたが、ちょっと毛色が違うので分けます。

【探求時代】
監督が変わって新しい色を打ち出してきたイメージに加え、常に可能性を探る挑戦的な姿勢がより濃く生まれ始めたと感じました。それが以下の作品達です。

(5)「暗黒タマタマ大追跡」
(6)「電撃!ブタのヒヅメ大作戦」
(7)「爆発!温泉わくわく大決戦」 
(8)「嵐を呼ぶジャングル」

ヘンダーランドに続く大◯◯という言葉をタイトルにつけたり、二字熟語を頭に乗せたりと定着化の香りもさせてます。
一気に現実設定がベースとなり、日常と非日常のバランスが子供ながらに刺激的でありました。
マニアックに偏った上、重い雰囲気が続く温泉わくわくで興行収入が10億を下回り、打ち切り危機に瀕しましたが、それを反省してシンプルなエンタメに戻ったジャングルで回復。

【黄金時代】
原恵一監督による大傑作が生まれ、ギャグ全開だったりカスカベ防衛隊の初メインだったり、毎年全然違うテイストで楽しませてくれるハイクオリティ周期に突入しました。

(9)「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」
(10)「嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」
(11)「嵐を呼ぶ 栄光のヤキニクロード」
(12)「嵐を呼ぶ!夕陽のカスカベボーイズ」

オトナ帝国と戦国大合戦がめちゃくちゃ評価された事により、この2作の影を追い求める世間の欲求が生まれてしまったのも事実。劇しんは長い間その比較に耐える羽目になったのです。
現に自分もこの時の追体験を毎年欲するようになりました。
後継の水島努監督による細かいアクション描写は楽しく、また別の魅力も生まれましたが、歴代監督に比べて担当は2作に留まってしまいます。

【暗黒時代】
この名称はファンにも広く使われてまして、だから◯◯時代の括りに固定したのです。本来は◯◯期の方がやりやすそうなのにも関わらず、そうしなかった理由がこれです。

(13)「伝説を呼ぶ ブリブリ3分ポッキリ大進撃」
(14)「伝説を呼ぶ!踊れ!アミーゴ」
(15)「嵐を呼ぶケツだけ爆弾!」
(16)「ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者」

あくまでネット上ですが、あまり評判の良くないムトウユージ監督の3作があります。
とにかく3分ポッキリがそれまでと比べて失速し過ぎたように思えてショックでした。その際のネガティブな気持ちが踊れアミーゴを見る目も厳しくさせたのでしょうか。前半は凝ったホラー描写で夢中になり、後半のコンニャクローン撃退も楽しいのですが、終盤にかけての展開で一気に勢いを無くしてガッカリした覚えがあります。
ケツだけ爆弾は野原一家の在り方を秀逸に描ききった名作のはずなのですが、前2作が残した負のお釣りにより、所々の物足りなさや安易さが脳内逆補正されて正当な評価を受けずに終わった気がします。興行収入は15億円と近年では最も高くて成功のはずですが、オトナ帝国ファンは認めようとしませんでした。
次の金矛で初期の本郷みつる監督が復帰しましたが、目新しい要素はなく盛り上がりにも欠け、もう劇しんは終わったと思った瞬間でした。

【混迷時代】
もう混迷期って言えばいいじゃんと思いますが、時代で進めます。意地です。ここからスランプを脱していきました。低迷以上復活未満というイメージなので、間を取って混迷とさせて頂きます。

(17)「オタケベ!カスカベ野生王国」
(18)「超時空!嵐を呼ぶオラの花嫁」
(19)「嵐を呼ぶ 黄金のスパイ大作戦」
(20)「嵐を呼ぶ オラと宇宙のプリンセス」
(21)「バカうまっ!B級グルメサバイバル!!」

ムトウユージ監督からしぎのあきら監督に代わり、ギャグと感動を織り混ぜ、けっこう楽しめました。みんな(主にオトナ帝国ファン)が観たい作風をライトないしは少し雑に仕上げたような印象。それでも僕は一度諦めた劇しんに復活の兆しを感じ、しぎの監督を大歓迎しました。興行収入はギリ10億円。
オラの花嫁は設定がめちゃめちゃそそりますが期待を上回る内容とは言い切れず、妥協しつつの満足をした覚えがあります。興行収入は12.5億円とそれなりに回復。しぎの監督にはこのまま回を重ねながら質を磨いてもらい、20作目を手がけて欲しいと思っていたらスパイ大作戦で増井壮一監督にチェンジ。ストーリーは面白いのですが、全体的に空虚さがあってそんなにハマりはしなかったです。この監督が描く世界には人がいない雰囲気がすごくて、体温も低く、全くザワザワしないんですよね。せっかくの劇場版なのにお祭りのようなワクワクを抑制させてしまうような塩梅です。
記念すべき20作目で同監督による宇宙のプリンセスもそんな感じで、全く馴染めない異空間。要の物語も楽しめず、温泉わくわく以来の10億切りをしてしまったのもうなづけます。
そしてこの短期間で3人目のD・橋本昌和監督が登板。B級グルメサバイバルは前作までの少数スタンスと違って敵キャラが多く、それはそれでごちゃごちゃしてて、ラストの山場も標高がものすごく低く、テレビSPみたいな印象でした。
色んな監督で色んなテイストを試してそんなにヒットもしないし、ドラえもんとコナンにかなり差をつけられ、かと言って独自の路線と言うには色も薄く、アニメ映画3番手の座も危うい空気が出てきたのも確かです。

【隆盛時代】
現在に近づいて来ました!初期こそ22億円の大ヒットでしたが、だんだん下降し、紆余曲折あって12~13億前後を行ったり来たりで落ち着いていた劇しん。ですがここに来て復活の狼煙を上げたのです!

(22)「ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」
(23)「オラの引越し物語 サボテン大襲撃」
(24)「爆睡!ユメミーワールド大突撃」
(25)「襲来!宇宙人シリリ」

高橋渉監督×中島かずき脚本によるロボとーちゃんでアッパレ戦国以来の文化庁アニメーション部門にて賞を獲得!笑いとアクションと涙でオトナ帝国ファンも歓喜の大傑作が生まれました。興行収入も18億を突破し、ケツだけ爆弾以来初の15億超え。私も映画館で3回観たほどです。
これによって再評価されたクレしんは、翌年の引越し物語にも上手く客を呼び込み、涙を誘う前半から、ギャグと興奮のパニック映画へと展開される後半でエンタメ要素抜群の様相を見せ、ついに歴代最高の22.9億円を突破します。
橋本昌和監督のキャラ過多が項を奏す作りとなっていたのもグッジョブです。
また、うえのきみこ脚本もしんのすけの面白さが存分に発揮されており、以降の作品でも期待と信頼のおけるライターとの認識が強まりました。
交替制なのか次は再び高橋渉監督。これがイマイチのユメミーワールド。後半の暗いムードと展開の遅さ。スッキリしない解決法など、数字としては20億をクリアしましたが、前2作のお釣りと劇団ひとり脚本という話題性で客が入ったのかなと邪推してしまいました。
ただ、これは劇しんを観る人達の地盤が拡大された証拠でもあります。
またも橋本昌和監督で挑んだ記念すべき25作目の宇宙人シリリはスベりました。だるいロードムービーと目を見張らないラストバトルは、宇宙のプリンセスを彷彿とさせる退屈さがありました。それでもケツだけ爆弾より上の16億を記録したので、お釣りを使い切るのはここまでと言った感じです。
内容の出来にバラつきはあれど、数字的には成功して劇しんが盛り上がって来たので、隆盛時代とさせて頂きました。

【最強時代】
さて、いよいよ現在です。最強と書きましたが、それはまだ仮。来年の29作目が面白ければそう呼ぶにふさわしくなるでしょう。黄金時代に並ぶ、4作連続で傑作になって欲しいという願いを込めたネーミングです。

(26)「爆盛!カンフーボーイズ~拉麺大乱~」
(27)「新婚旅行ハリケーン 失われたひろし」
(28)「激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」

まずカンフーボーイズ。3回目の高橋渉監督。途中まではオトナ帝国みたいに、敵組織に大人達が洗脳されて子供達が頑張るというギャグ&アクションの展開で既視感がありましたが、まさかのラスボスとその倒し方が斬新で一気に私的ランキング上位に踊り出ました。シリリの汚名返上を世の中に告げた瞬間です。興行収入18億でロボとーちゃん時に似たV字回復を遂げました。ここでシリリ前後のクオリティだったら低迷期再来だったでしょう。
そして4回目の橋本昌和監督による新婚旅行ハリケーンですが、まさか野原夫婦のラブストーリーとは良いとこ突きました!男女のすれ違いや恋人奪還を懐メロと共に描き、女性人気が高かったようで、興行収入も20億円!どうも高橋監督で地盤を固め直して跳ねやすいチャンスで橋本監督がジャンプするような流れがたまにありますね。逆はないです。
そして最新のラクガキングダム。初参戦!劇しん9人目の監督・京極尚彦フィルムです。未知数でしたが超バンザイです。前半は緩やかなロードムービーでギャグらしいギャグもやや物足りなく、もたつく気配がしましたが、後半から現実とファンタジー要素が地続きで折り合い、かなり集中して見入りましたし、感動ポイントの連打で興奮状態まっしぐら!振り返ればかなり上手い話の作りだった気がします。正直、トップ3にもランクインしそうな出来ですが、劇しんは傑作が増え過ぎて分かりません。ちょっと笑いの要素が少ないので、硬軟を上手く兼ね備えたオトナ帝国やロボとーちゃんとは多少の段差が出来てしまうかも?というような塩梅です。
とは言えそれらを引き合いに出しても拮抗するぐらいの大当たり作。そのように3年連続で満足したのは黄金時代以来です。本当に最強時代になるかどうかは次に懸かっています!
次回予告では学園ミステリーを示唆していましたが、果たしてどうなるのか!監督は誰なのか!そろそろまた高橋渉監督か?

お楽しみMAXでございます!!!