オオガキの大冒険 stage1-5 | マビノギっぽい小説置き場

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マビノギ的な内容の小説を書いてるかもよ。
マビノギ知らない人も楽しめるように書きたいのかもよ。

洞窟の中、ドーム状に開けた広間で、二人は相対した。
「よう。お仲間なら向こうで寝てるぜ、頭でも打ったんじゃねーの?」
オオガキが、来た道を指差しながら言う。
対する金髪の男は頭に疑問符を浮かべながら、
「なにいっ!お前にやられたんじゃあないのか!?ドジなやつめ……!」
今度はオオガキがキョトンとする。皮肉のつもりがなにやら相手が妙に正直な奴っぽい。
この男本当に盗賊なのだろうか。もしかして俺の勘違いだったりするんじゃないだろうか、とか思いつつ質問してみる。
「なあ、あんた、何者なんだ?」
男は一瞬考えるような表情をした後、思い出したように顔を上げ、
「そんなことも知らずに、いや、知らないからこそ、ここに侵入なんてしてしまったのか!よろしい!ならば名乗りをあげよう!」
オオガキは、侵入なんてしてねえよ、と思いつつ、ノリノリっぽい相手の言葉を黙して聞く。
「『幻想盗賊団』、団員の一人!人呼んで、カリスマテイマーのダレンだッ!」
人差し指を突き出した右腕を掲げて、膝を妙な角度に曲げながら、ビシィ!とキメポーズをとっている金髪男、いや、ダレンと言ったか。
「そうかい、んで、ダレンさんよ。一つ訂正がある。まず俺は侵入者じゃあない」
またしても相手の顔に疑問符が浮かぶが、言葉を続ける。
「俺はあんたらの運び入れた荷馬車で昼寝してただけだよ、争う気もないし、この場所から何も盗っちゃいない」
何も無かったしな、と心の中だけで付け足す。

オオガキには、どうもこの男が人を殺すような人間には思えなかった。完全なる勘、なんの確証もない。
こいつらは自分の生活の為に荷馬車を奪っただけで、人を殺すような外道ではないと。無論盗みを働いた時点で悪には変わりない。それでも、一線は踏み越えていないと、なんとなくそう思いたかった。
ウェリアムが死んだかもしれないことを、打ち消したいだけかもしれない。

「つまぁり、君はあの少女の知り合いということだな!」
ダレンがポーズを解いて言った。
「黒髪で赤い目の、ってんなら、確かに知り合いだ。どこにいる?」
知らないのならば、それでいい。見逃して何処かに行ったと言うならば、それで構わなかった。
しかしーー、
「悪いが拘束させて貰っている!人質としてな!」
発せられた言葉を聞いて、オオガキの目付きが変わる。完全なる、軽蔑の眼差しに。
「そうか……。何の交渉に使う気だ?金か?」
「違うな、間違っているぞ!囚われた仲間を、いや、君達に捕らえられた仲間を返してもらうためだ!」
「はあ?そんな奴記憶に……いや、まさか……昨日襲ってきて勝手にやられた奴か…?」
ダレンも流石に呆れた表情になって、
「そ……そうだ…」
「そうかい、わかった。オーケー。アンタら盗賊が交渉に行っても、鎮圧されるぜ?俺が交渉してそのお仲間を返してやる。だから、ウェリアムを……捕えた女の子を離してくれ」
「なにっ、本当か!?いや、そう簡単に信じるワケには……」
やはり簡単に信じてはくれないか、と思い、オオガキは苦肉の策に出る。
「俺がその仲間を連れてくるまで、彼女を、ここに預ける。連れてきたら交換しよう、どうだ?」
本当なら人質を代わりたいが、ウェリアムでは上手く交渉して囚われた賊を連れてくることは不可能だ。
「…よし!わかった!猶予は24時間だ、それ以内にここへ連れてきてくれるなら、彼女は開放しよう!」
アジトごと制圧するためのメンバーを集めさせないために時間制限をかけたのか、そこまで馬鹿ってわけではないんだな、とオオガキは思いつつ返す。
「了解了解。とりあえずここの出口まで案内してくれよ」
「おう、こっちだ、ついて来な!」
言って、ダレンが身を翻す。
オオガキは着いて行くため、小走りで近くに駆け寄り、二人並んで歩き出そうとした、その時。

「って、」
ダレンが何かを言いながら、右腕をオオガキ心臓目掛けて突き出してきた。その手には、小さなナイフ。
「帰すわきゃねェェェェだろォォォォ!」
「なッーーにぃ!?」

ズシャ、と、肉の裂ける音。

「ちッ、惜しかったか」
ナイフは、オオガキの心臓には刺さっていない。瞬時に攻撃に反応したオオガキが飛びすさったのだ。
切られたのは、回避の間に合わなかった右腕の二の腕部分。
「くっはっは、お前、盗賊を何だと思ってんだ?そんな交渉信じるわきゃねーだろぉ?もっと人は疑えよなぁ」
笑いながら、さっきとは別人の様になったダレンが言い、更に続ける。
「敵を騙すにはまず味方から、つってアホ親分演じてきたが、もうやめだわ。あんな使えねえ奴らだとは思わなかったぜ」
腕を抑えたオオガキは、その一言一言を静かに聞き入れながら、ジワジワと怒りを蓄積していく。
それに気づいているのかいないのか、ダレンはまだ言葉を続けた。
「ああ、そういやあお前がさっき言ってた女、生きてるといいなぁ、おい?」
ブチン、と。
オオガキの頭の中で、何かが切れる音がした。
「クソ野郎が……ッ」
声にならなかった怒りを浴びせるべく、両腰から下げている剣を、両手に引き抜きつつ突進する。
「さっきの一撃で仕留めなかったのは失敗だったなッ!!」
オオガキが叫んだ。
開いた数メートルの距離を疾走し、右腕を振り上げ、傷が開くのも構わずに渾身の力で振り下ろす。右腕直撃コース……!!

キィン!
だがその一撃は、ダレンの腕に握られたナイフによって弾かれた。更に、弾かれた剣はオオガキの腕からも吹き飛び、後方の床へと滑る。
「なんだと…そんなチンケなナイフで……!」
驚愕する声はオオガキ。
対するダレンは冷静に、いや、嬉々として答える。
「ケケケ、まぁーだ気づかないのか?その右手、握ってみろよ」
オオガキは言われた通りに右手に力を込めようとするが、
「動かない……麻痺毒か……!」
「正解でぇーっす」
ダレンは言いながらオオガキの腹を蹴り、弾き飛ばす。と、2メートルほと後退したオオガキの、左腕に握られた剣も地面へ落ちる。
「あれえー?左腕まで麻痺しちゃったかあ?毒が多かったかもなあ、運がないぜ、お前」
「うるせえ……」
「おやおや気合だけは十分だなあ。でもその手でどうやって闘うんだ?なあ、おい」
ニヤニヤしながら喋りつつ、ダレンはオオガキへと近づいて行く。
「ほら、来いよ、攻撃してみろよ、ケケ……げっ」
しかしそのセリフは、最後まで続かない。
笑うダレンの左頬に、上段蹴りが叩き込まれたのだ。
「小賢しい盗賊風情が、調子に乗るなよ」
オオガキの言葉を聞き取れたのかも曖昧なダレンが、宙に舞い、床に叩きつけられるまで約2秒。バランスを崩して倒れたオオガキが起き上がるには十分な時間だった。
倒れたダレンにトドメを刺すべく、オオガキは敵へ歩み寄ろうとするが、
「ククク…ケケケ」
倒れた男から発せられる不気味な笑い声には、足を止めざるを得なかった。
ダレンが、ゆらりと起き上がる。
「楽しいなあ、こうでなくちゃあ面白くないよなあ。獲物には、徹底的に足掻いてもらわねえとなあ」
あまりダメージのない様子のダレンに対し、両腕を、だらんと下げたオオガキだったが、気概だけでは負けまいと、声高に言った。
「クズが、死で償え」

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この作品はほのぼのファンタジーライフ、マビノギの小説です!はい!