オオガキの大冒険 stage1-6 | マビノギっぽい小説置き場

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マビノギ的な内容の小説を書いてるかもよ。
マビノギ知らない人も楽しめるように書きたいのかもよ。

ヒュンッ!
「くッ……んなろォ!」
ダレンのナイフが、オオガキの額を掠める。
「オラオラさっきの威勢はどうしたあ!そこに転がってるてめえの剣でも拾って反撃してみろよ、つまんねえぞぉ?!」
ダレンは言いながらも攻撃の手を緩めず、着実にオオガキの体力を削り取っていく。
「できたら……やってんだよ…!!クソ!」
オオガキは振られたナイフの隙を縫っては足技で攻撃するが、麻痺した腕のせいで上手く踏ん張りがきかず、大したダメージを与えられない。
戦闘開始からどれほどの時間が経ったのか、彼らに知る術はないが、時間は既に5分以上も経過していた。
その間オオガキは、実に回避と足技だけで持ちこたえている。
「両腕使えねえくせにしぶとすぎんだよ、さっさと死にやがれ!」
またしても大きく振られたナイフが、オオガキの身体を掠める。
それを躱したオオガキは、
「使えるさ」
身体を捻りながら右肩を思い切り振り上げ、旋回式バックブローとも呼ばれる、渾身の裏拳を放つ。
ドッ、という肉と肉のぶつかる音と共に、ダレンの身体がよろめく。が、数歩下がって踏みとどまった。
「へっ、へ……今のはビビったぜ、だがそんな握ってもいない拳は効かねえ」
「ちっ……麻痺の効果さえきれれば…!」
オオガキの呟きを聞いたダレンが、ニヤリと笑った。
「ハッハァ、なるほど、いくらなんでも攻撃が甘すぎると思ったぜ。時間稼ぎか!」
言われたオオガキは、無言でダレンを睨む。睨まれたダレンはそのことすらも嬉しそうに受け止め、
「怖いねえ、怖い怖い。大抵の奴はここまできたら諦めちまうんだけどなあ。いいぜ、褒美に一つ教えてやるよ」
一呼吸置いて、
「その麻痺毒の効果、一日は消えねえぜ。絶対に、な」
聞いたオオガキはギョっとした後、ダレンに向かい突進する。
「ハッ、ヤケにでもなりやがったか!」
ダレンは横に躱し、オオガキを背中から蹴り飛ばす。
「ぐッ…」
倒されたオオガキは、追撃を受ける前に、両足の力だけで起き上がる。
そしてまた、ダレンへと突進。
「無駄なんだよォ!」
叫んだダレンの次の言葉は、
「うおっ!?」
悲鳴と驚愕の混じった声だった。
オオガキがダレンの前で急停止し、横へ逃れようとしたダレンに足払いを食らわせたのだ。
今度は足を掬われたダレンが、背中から倒れこむ。
そして、
「てめーには容赦しねえ」
倒れたダレンの腹を、全体重を乗せた脚で踏みつけた。

「かはっ」
と声を出したきり動かなくなったダレンを尻目に、オオガキは立ち上がって出口の方を見ながら、思考する。
まずはこの洞窟全体を周り、ウェリアムを捜索する。生きているかはわからないが。
ついでに縛れるものでも見つけて、盗賊どもを拘束しておこう、と考え、足を進めようとしたその時。

グサリ、という音が背中から聞こえた。

「ナメてくれやがって、油断したなあ、おい」
声は同じ高さから。ダレンは既に、起き上がっている……ッ!!
「たぬき寝入りかよ…!」
オオガキが、背中に刺さるナイフの痛みを堪えながら言う。
「いいやぁ?数秒は意識とんじまったぜ?マジで。そのおかげでお前は油断したみたいだけどなあ」
オオガキが振り向くと、背中からナイフが滑り落ち、血が流れだす。
そして数メートル先、ナイフを投げたようなポーズのダレンが立っている。
「今度は麻痺毒なんかじゃねえ、モンスターから生成されたマジの毒だ。ほっときゃあお前」
そこで区切って、ダレンは今日一番の邪悪な笑みを作り、
「死んじまうぜぇ、くっくっく」
堪えきれないとでもいうように、最後は声も抑えず笑い出した。

黙って聞いていたオオガキは、
ユラリと。
背中から地面に崩れ落ちた。

落ちていた毒ナイフに左手があたり、小指が少し切れる。
カツ、カツと聞こえてくるのは、ダレンの足音。
そしてオオガキを覗き込むように、足を広げて目の前でしゃがんだダレンが、勝ち誇った顔で言う。
「残念だったなあ、俺の勝ちだ。冥土の土産に一つだけ教えてやるよ、お前のツレの女は生きてるぜ」
もっとも、とダレンは付けたし、
「お前はこれから殺されるんだ、会うことはねえだろうがなあ。おら、辞世の句」
へ、とオオガキは笑いを漏らす。
ウェリアムの生存を喜ぶ笑いと、そして、

己の勝利を確信する笑いを。

「俺も、お前に一つ教えてやる」
オオガキが言う。
「てめーの敗因は、」
「敗因!敗因だと?今更見栄はってねえでおとなしく遺言でも残してりゃいいんだよ!」
ダレンの野次も無視して、オオガキは続けた。
「自らの毒の能力を、把握してなかったことだッ!」
言い終わる前から、オオガキの左手が閃く。その手の中には、さっき背中から滑り落ちた毒のナイフ。
「なッ!」
ダレンが気付くが、もう遅い。
オオガキの左手で煌めいた毒ナイフは、ダレンの腹へと、深く突き刺さった。

「馬鹿な…麻痺がとれるわけはない……!」
呻きながらもダレンが言う。
オオガキは聞きながら立ち上がり、そこらに転がっている、自分の二本の剣を拾い上げながら答える。
「馬鹿が、てめーが切ったのは右腕だぜ?そして俺は、右肩を動かしててめーに裏拳をぶち込んでる。なんで右肩が麻痺してねーのに、左腕が麻痺してるなんて思ったんだ?」
ダレンはハッとした表情になって、
「左腕が使えないフリをしてやがったのか……!だが、何故だ…!」
「いいだろう、教えてやる。まず一つは、お前を調子に乗らせてウェリアムの…ツレの無事を確認するためだ。お前は調子に乗るとベラベラ喋ってくれそうだったからな、そのためには左腕は使えねー。強すぎてな」
「くく……まんまと作戦にハメられたってワケか」
「そしてもう一つ。お前を絶望させる方法を考えてたんだよ。お誂え向きの武器をありがとう」
聞いたダレンは自嘲気味に笑い、
「だがこの毒はお前も食らってる、解毒剤の在り方を知ってるのは俺だけだ、さあ、どうす……」
言い終わる前に、オオガキの右手の剣が、ダレンの右足を貫く。
「さっさと言った方がいい、お前には容赦しねえ」
「ぐおッ……痛え…わ、わかった言うさ……ここから真っ直ぐ行った突き当たりの角の草陰の隠してある…」
「どうも。じゃあな、閻魔様に会ったらよろしく言っといてくれ」
それだけ言って、オオガキは歩き出す。
後ろでは、足を斬られて歩けないダレンが必死に言う。
「ま、待て!俺の分もとって来てくれ!俺が死んだらお前のツレも殺す手筈だッ!」
オオガキは振り向きもせずに言い放つ。
「それができるなら最初からやってるよ、お前みたいな卑怯な奴は。もう諦めろ」
それきり、オオガキが振り向くことは無かった。



ウェリアムは、硬い岩の上で目覚めた。
眠る前の記憶はハッキリと覚えている。おそらくあの後、何らかの目的でここまで運ばれたのだろう。
辺りを見回すと、鉄格子の牢屋の中に入れられている。
だが、
「これ……格子の隙間大きすぎて出られちゃうんですけど」
ウェリアムの身体は、するりと牢屋から抜け出れてしまった。
しかも抜け出た先には、見張りの一人もいない。
振り向いて牢屋を改めて見ると、随分な大きさだ。モンスターでも入れていたかのよう。しかも、鍵はあいている。
「ま、まさかその辺にいたりしないよね~…」
確認してみるが、そんな巨体がいれば、すぐにわかるだろう。
とりあえずモンスターのいないことに一安心して、ウェリアムは廊下に出た。

廊下には数本の分かれ道があり、その一つから何かを食べるような音が聞こえてきた。
恐る恐る覗き込んでみると、そこには……。

緑がかった身体をした、2mを超える巨体。その脇に置かれる棍棒もまた巨大。
巨人族モンスター、トロールがそこにいた。

ウェリアムは、音を立てずに近くの岩陰へ飛び込む。
「ななな、なんでこんなところにトロールなんて……」
呟いた時、洞窟の奥から笛のような音色が響き、ウェリアムはビクッとする。
その音はトロールにも届いたのか、その巨体は食事をやめ、棍棒を手に取り立ち上がると、こっちに、部屋の出口に向かって歩いてくる。
バレた…!?と思い、ウェリアムは身構えるが、
ズン、ズン、という足音は、ウェリアムのいる岩陰と反対方向へ歩いて行った。
「はぁぁぁ~、死ぬかと思った」
トロールが角を曲がって見えなくなった頃、ようやく緊張が解ける。と、また洞窟の奥から何かの音がする。
『うおおおお!?なんでトロール!?』
ウェリアムは、聞いたことのあるような、と一瞬思考し、
「兄貴!?」
思い当たった声の主の名前小さく叫んだ。


続く!
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Wrrrryyyyyyy!!
そう簡単には終わらないぜ!