視察2日目の夕方からは、デンマークのフォルケホイスコーレを視察してきました。

フォルケホイスコーレとは、民衆の民衆による民衆のための成人教育機関で、デンマークのニコライ・フレデリク・セヴェリン・グルントビーが理念的なものを提案し、実際にはクリステン・コルが創始した学校です。
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我々が訪問したのはまさにそのグルントビーがつくったホイスコーレでした。

グルントビーは、歴史家で哲学者かつ牧師という人物。

フランスの市民革命に影響を受けてデンマークではそれまでの絶対王政から民主主義に移行、1849年に普通参政権が付与されました。

そして、国民がリーダーを選ぶなら選ぶための教育が必要ということで、18歳以上の人たちの学ぶ学校を作ろうとグルントビーが提唱したのです。

ホイスコーレは入るのも出るのも試験なし。
単位もなく、資格などもとれません。
キャリア構築ではなく、人生や社会、民主主義を考えるための学校なんです。
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当校には65人の学生がいて、主要な年齢は、18〜25歳。完全な寄宿舎制で、春の4ヶ月コース。秋な5ヶ月コース。通年の9ヶ月コースがあります。

フォルケホイスコーレは、政府から切り離された学校で運営費は国が出しますが、教育内容は自由。
学費は無料で生活費のみ払えば18歳以上なら誰でも入れます。デンマーク人の15%くらいがきている感じだとか。

なぜ、国がお金を出して、自由に学ばせるかというと、歴史的に国のリーダーの多くがフォルケホイスコーレの出身でその教育の意義をよく知っているからだと。

凄くないですか。
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デンマークの教育の流れを少し解説しましょう。
デンマークでは、7〜19歳は日本と同じように学校に通います。
そして、19〜23歳は、社会経験を積み、自分の人生を考えるため、社会活動や世界旅行をしたり、このホイスコーレに通ったりします。この経験を積まないと、大学にも企業にもいけないというのですから凄い。

23〜29歳が大学です。
大学入試はなく、高校までの成績やその後の社会的な活動で入学審査があります。  

複線型の教育は昨年視察したスイスと同じですが、19〜23歳の期間に社会経験を積ませるというのが、違いますね。
スイスは中学に行く時から職業選択でしたから、かなり逆です。

デンマーク人は、世界を知ることの大切さをよくわかっているとのお話でした。

デンマークでは大学をでたら、社員研修などなく、すぐに即戦力で働けるそうなので、人材育成にはどちらがいいのかかなり考えさせられます。
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ホイスコーレは設立当初は、学生はほとんど男性でしたが、今は60%が女性で成績も女性の方が高いとのこと。

しかしそんなデンマークでも、社会の高いポジションには男性の方が多いという課題があるんです。
だだ、社会の低いポジションにも男性が多く、女性は中間に多いことから、担当の先生は、女性は社会の中間にいたいという心理があるのではないか、家庭で過ごす時間を確保したいというニーズが高いのでは、と分析されていたのが印象的でした。


デンマーク女性の初出産平均は29.2歳で大学を出るのと同じ年齢だとか。
また、女性は自分と同等以上の学歴をもつ男性を選びたい傾向があるが女性の学歴が高いため、どうしてもマッチング率が減るようです。
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教育の内容ですが、デンマークは他のヨーロッパの国々と同じく、1968年に学生運動があり、教育改革がおこり、先生と生徒が、対等にクラスや学校を運営する民主主義を体現した教育が始まったそうです。

それまで先生は偉いのだから、先生のいうことをみんな聞いていたが、今の先生は人間として尊敬を集めないと指導できないから大変だと。

また、先生の地位の低下により親の教育の影響がモロに子供にきていて、親が賢ければ子供も賢く、親がそうでなければ子供の教育も不十分になる傾向が強くなったと。
先生の指導力が下がるのだから仕方がないですが、やはり私はそれは良くないと思いながら聞いていました。

先生も教育現場の対話や質は上がったかもしれないが、生徒の過度な権利主張が増えたのは残念だとおっしゃってました。

また民主主義は家庭にも広がりましたが、
夫婦間の妥協ができなくなり、離婚がどんどん増えて、今では離婚率が48%になったそうです。女性の経済的自立も離婚率をあげた原因だろうとのこと。

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ここまでが先生からのレクチャーでした。
スイスの教育の変遷やポイント、課題がいろいろ理解できました。



以下はメンバーからの質問。

1.子供の想像力を伸ばすためのポイントは?
自分でものを作らせる。
旅などでいろいろな世界を知らせる。

2.毎日学校や会社で唱歌を歌う意味は?
デンマークの歴史や自然、愛、自由について歌をとうして学び、国民統合をはかる。

3.歴史教育は?
大きなテーマは国が決めているが、カリキュラムの内容は先生が決める。先生の経験や技量が問われる。近現代を中心に教える。

4.徴兵については?
志願兵で定員がうまるので徴兵はほとんどない。軍隊は人気の仕事で軍関係者は子弟を志願をさせる。体力の極限にいどめるし、良いキャリアになるから。皇太子ら王室の方々も軍事を全て経験し、尊敬を集めていて、国民もそれにならう。

5.デンマーク人の自己肯定感が高いのは?
肯定感が高いかはわからない。ただ、世界一安心できる国ではある。なぜなら社会生活への心配がないから。それは高い税金でささえられている。


以上がホイスコーレでのヒアリングでした。
かなり価値観が揺さぶられました。
いい経験です。
   
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話を聞いての突っ込んだ感想などは、
同行している杉田水脈さんが、産経のなでしこレポートに書かれるそうなので、そちらに譲ります。


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視察のあとは、デンマークの工科大で研究助手をされている松浦さんを囲んでの食事会。

松浦さん曰く、デンマークの特徴は、
働く時間が短い
税金が高い
人工的な娯楽が少ない

とのこと。

子育てなどに関しては、
日本の男性も頑張っているという印象だとか。

デンマークと日本。
比べたらどちらがいいとは言い難いとのこと。なるほどなあと思いました。


1日目の視察が終わりわかったこと。

デンマーク人は話は長いけれど、丁寧で率直になんでも話してくれる。
タブーみたいなものはなく、なんでも飾らずに話してくれる。

ここに一番私は感動しました。
デンマークとの相性は良さそうです。

2日目の視察は森の幼稚園にいきます。
たくさん学べそうです!