どうしょうもない都知事選 | 十姉妹日和

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つれづれに書いた日記のようなものです。

ずい分とひさしぶりでブログを更新します。

ここ1年ほど書いていたものがあったのですが、最近ようやくそちらは終わる目途がついてきました。

これはいずれ何かしらの方法で公開したいと思っていますが、今のところはまだわかりません。

そのときはどうぞよろしくお願いします。


さて、現在東京では舛添前東京都知事の退任にともなう都議会選挙が行われていますが、正直にいって今回の選挙ほど都政、都民の感情が置いてきぼりにされている選挙もないように思い、いささか憤りを覚えているのが率直なところです。


そのため、今回はそれについて少し書かせていただきたいと思います。


そもそも今度の舛添都知事に辞任については、私もtwitterのアカウントで度々つぶやいていたのですが、まだ嫌疑の段階で、これほど早く知事を辞職に追い込むのはどうかと思っていました。

もちろん舛添氏の疑惑はすべて都知事の責任によるものであり、それにともなう支持率の低下や、都民からの退任論が出ることは当然だろうと思います。

ですが、テレビなどで度々とりあげられた舛添氏の疑惑をみますと、政治資金の私的流用問題や、収支報告書の虚偽記載疑惑など、その多くは東京都知事時代のものではありません。

都知事としての問題行動とされたものは、公用車を私的に利用していたということや、海外視察の予算が高過ぎるといった、行動の違法性そのものよりも「都知事としての資質に欠けるのではないか」というものでした。


本来であればこの段階で、都民から糾弾を受けるのはわかるにせよ、都議会で不信任案が提出され、知事が辞職にまで追い込まれる可能性は低かったはずです。

もし知事の疑惑を正すのであれば、猪瀬都知事のときのように都で部会を設置して、疑惑を精査、詰問するのがまだ理に適ったやり方だったでしょう。


それにも関わらず、これほど与野党がともに舛添都知事の早期辞職に拘ったのは、目前に公示が迫っていた参議院選挙への影響を考えてのものだったのは間違いありません。


前回の都知事選で舛添氏を支援していた自民党、公明党はもちろん、すでに情勢不利が伝えられている中で、選挙前に手柄を立てておきたかった野党各党もこの点では一致していたため、とにかく舛添氏を辞めさせておかなくてはいけない。こうした動きを見て、マスコミも連日のように面白おかしく「舛添疑惑」をワイドショーやニュースなどで報じていました。


これではどうしても舛添氏が辞任を逃れる術はなかったでしょう。

すでにこの一連の流れの中で「選挙のために動いていた」中央政党の政治的判断に、私は不快感がありました。


舛添氏の退陣は当然にしても、せめてもう少し情勢の落ち着く秋まで待てないのか。


これが当時の率直な感想です。

ですが、野党はこれを自民党批判に結び付けたかったわけですし、自民党もそれを避けるためにはできるだけ早く「舛添氏の首をとる」必要があり、マスコミもそれに加担しました。


ですが、こうなると懸念されたのが、舛添氏退任後の都知事選挙で、与野党がきちんとした候補者を立てられるのだろうか、ということです。

もしもこれがあらかじめ行われるのがわかっていた選挙であれば、どの陣営にも候補者を擁立する準備期間があったと思います。

しかし、一方で参議院選挙を戦いながら、他方で都知事選の候補者を探すというのはかなり難しいことです。


都民とすればこの機会に新しい、もっとリーダーシップのある都知事が生まれてくれればいい、という期待はもちろんあったにしても、これだけ突然の選挙に多額の費用と時間をかけて立候補できる人がそんなにいわるわけもありません。


この予感は的中しました。


テレビではすでに参議院選挙での与党優位が伝えられていたこともあり、ニュースやワイドショーではもっぱら「次の都知事」をめぐる報道が増えていきました。

そうした中、民進党の蓮舫議員や、「桜井パパ」こと元総務官僚の桜井俊などの名前が連日報道されはするものの、いずれも出馬までにはいたらず、都知事選の目玉となるような決定的な候補者はついにあらわれませんでした。


こうした中で、都知事選にまず手を挙げたのが自民党の小池百合子議員です。

小池氏はもともとネットの保守よりの人たちには支持層が多く、世間的に知名度の高さもあり、与党では早い時期から候補者になるのではないかと報じられていました。

ですが、小池氏の出馬に関しては自民党の内部でも異論があったようです。


小池氏はかつて第一次安倍内閣で防衛大臣を務めていましたが、参議院選挙で与党自民党が敗北した直後に辞職を表明したことがありました。

さらにその後、安倍総理が病気によって退陣した総裁選に立候補し、麻生太郎氏石原伸晃氏などとも争っています。

こういったことが、自民党の内部にいまだに確執として残っているというのはおそらく正しいと思います。


そのため小池氏は真っ先に手を挙げて、自民党の推薦を受けたいという意思表示をしながらも、推薦を受けられなかった場合も考えて、色々と動き出しました。

これを真っ先に支持したのはネット上の「右より」の人たちです。

もともとネットでは前回の都知事選挙の際にも、舛添氏を嫌った人たちが当時無所属で立候補した田母神俊雄元航空幕僚長を支持し、アンチ舛添キャンペーンをtwitterなどで繰り広げていたことがありました。

結果、田母神は舛添氏に大差で敗れはしたものの、石原慎太郎元東京都知事などの応援があったこともあり、60万票という非常に多くの支持を集めることにも成功します。

これはネットを含めた保守層に一定の集票力があるということを示したという事例といえるでしょう。


このとき舛添氏に敗れた人々は、そのまますんなりと舛添氏の都政を肯定することはなく、しばしば舛添氏の「リコール」を求める呼びかけをネット上で行うなど、じっと機会をうかがっていました。

とくにこれは舛添氏が東京都の保有する土地に韓国人学校を新たに造ると表明して以降、非常に大規模な反対キャンペーンとして展開されました。


この韓国人学校については私もあまり今それほど必要な問題とは思いません。

仮に韓国人学校が必要であるにせよ、特定のナショナルスクールを都が優遇する必要まではないからです。


しかし、これを「アンチ舛添」キャンペーンとして見た場合、 これだけで舛添都知事は退任すべきだとまで考えた都民はほとんど現実にはいなかったと思います。

ところがそれからしばらくして、テレビで舛添都知事の外遊費や、湯河原への別荘通いが報じられるようになると、流れは一気に変わってきました。


舛添氏の退陣前のtwitterを見ていても、舛添氏の批判を強く行っていたのは、こうした保守層の人々と、さらに自民党の責任と結び付けたい野党の支持層というふたつのグループの人たちが非常に多かったように思います。

彼らとすれば一刻も早く舛添氏を退陣させてしまうことが自分たちの主張に近い知事を誕生させられる可能性につながるわけですから、こうした行動には何の不思議もありませんでした。


しかも小池氏はもともと保守層に近い議員とされていますから、彼らとすればこのまま小池氏が自民党の推薦を受けて都知事になれば目的が果たせるというわけです。


ところがここで彼らの思惑に反して表面化してきたのが都政と国政の情勢の違いです。


今の国会を見ていると、自民党、公明党の与党と、民進党、共産党などの野党数党が共闘して対決しているように見えるため、与野党の関係は非常に悪く思われるのですが、実は都議会の方では自民党、公明党、そして民進党の関係はこれまでも良好な状態が続いてきており、都議会としては大きな揉め事もなくこれまでやってきたという経緯があります。

その理由のひとつとしては、公明党がもともと信濃町や東村山など創価学会の拠点のある東京都を主要な地盤としているため、国政以上に実は都政の方に力を入れているといっても過言ではなく、そのため自民党、民進党のいずれの会派ともかなり関係が良好だというのがあるようです。


このため国政では非常に仲の悪い自民党と民進党も、都政ではそれほど大きな対立をしていません。そのため、舛添氏への不信任案をめぐっても、なんとなくみんなで出したという背景があったようです。

こうなると彼らとすればあまり都議会をひっかきまわすような人が知事になることは避けたかったようです。そのため、自民党都連としてもできるだけ温和で慎重な人を候補にして欲しいという思惑があったことが、今回の候補者選びの過程からもうかがえります。


しかし、これに業を煮やした小池氏はなかなか推薦をくれない東京都議連の姿勢をまず批判しました。

それどころか早々に記者会見を行い、その中で都議会の解散にまで言及してしまったわけです。

その理由にはかねてからあまり仲の良くなかったという都連の代表を務める石原伸晃氏への批判もあったようですが、こうなると問題は途端に自民党の中でのお家騒動のようになり、小池氏は宙に浮いた形となりました。

ようするにこれは爆弾と同じようなもので、小池氏が都知事になれば都議会と大喧嘩になるのがはっきりしてしまいました。


こうした中で、与党がようやく擁立した候補が元岩手県知事の増田寛也だったというわけです。

増田氏はもともと改革派の知事として知られ、中央政界でも活動した実績から自民党都連としてはいい落としどころだと思ったのでしょう。

ですが、増田氏はもともと慰安婦問題や歴史問題などではどちらかといえば左派的な人物と見られており、さらに県知事時代には在日外国人の参政権にも前向きな姿勢を見せるなど、ネットの保守層からすればこれまた舛添都知事同様に到底受け入れられない人物でした。


そのため小池氏を応援する人々は、ここから増田氏と彼を擁立した東京都連と石原伸晃氏の批判を開始し、さらに都知事時代に都議会と確執のあった猪瀬元知事なども自民党都連のあり方を批判するという「反自民党都連キャンペーン」が行われるようになります。


しかし、これは都民からすればそもそもさっぱりわからない話であり、正直自民党都連と小池氏の確執を都政でやられても判断のしようがないわけです。

私はこうしたネットの保守層とされる人たちにはどちらかといえば近い立場で発言しているように思われることが多いのですが、今回はほとんど自民党のお家騒動のようなものですから、小池氏と増田氏のどちらを応援したい、という気持ちはまったくありません。


これは野党陣営を見ていても、おそらく私と同じように考えている人が少なからずいるのではないかと思います。


舛添氏の退陣で候補者の擁立を急かされたのは野党も同じでした。

しかも野党は参議院選挙での協力もあり、なるべく民進、共産、社民、生活の党の野党4党での統一候補を立てることに拘っていたわけです。

しかし、そもそも自民党と民進党は都議会で対立しているわけではありませんし、共産党と民進党が一致した思惑で推せる候補を探すというのは簡単ではありません。

そうなると結局は「とにかく自民党の推す候補者を倒して、安倍政権に一泡吹かせてやる」という、それだけの目的で選ぶしかなくなってしまったわけです。


ですが、最初に名前の挙がっていた蓮舫氏があっさりとこれを辞退し、さらに有力な候補者と思われていた片山元鳥取県知事も都知事選に出る意思がなかったため、候補者の選考は与党以上に混乱しました。

もしも民進党があくまでも自民党を倒すことだけに拘るのであれば、過去の都知事選挙で90万票以上を獲得している、共産党に近い宇都宮けんじ氏を擁立するという方法もあったはずですが、これはやはり民進党議連としては好ましくなく、小池氏同様に選挙後に都議会と知事が対立した場合に、推薦した以上は批判し難い。また、共産党系の候補を擁立することは、民進党の沽券に関わるという、思いもあったのでしょう。


このため民進党の本心としてはいっそ増田氏に自民党と相乗りをしてしまった方がいいくらいだという考えもあったとは思います。

ところがそれでは自民党と対決する野党としての姿勢を示すことができないと、どうしても独自候補を擁立しなくてはいけませんでした。


これはとくに最近の野党陣営の大きなミスだと思いますが、なまじ安保法制以来自民党との対決ムードを煽り、シールズなどの団体をはじめ、多くの市民活動家を取り込んでしまったために、政策などを議論するよりも、とにかく自民党を批判し、倒すことが第一だと思い込んでしまっているように感じます。

そのため野党側が最終的に候補者として絞り込んで、前日まで有力な候補者として見ていたのも、安倍政権に批判的な元官僚の古賀茂明氏とされており、このあたりにも野党側の迷走がよくあらわれています。


そうした流れから、民進党ら野党4党が最終的に推薦を決めたのがジャーナリストの鳥越俊太郎氏です。

鳥越氏はもともとテレビ番組などで知名度も高く、候補者としての認知度なら増田氏を上回っていると思います。

また、長年の経験からテレビ、新聞などにパイプがあるため、マスコミからの批判も受け難いというのは野党とすれば魅力なのかも知れません。


ですが、鳥越氏の場合、数年前から末期がんの治療を受けていることを公表しており、たびたび手術も受けているそうです。

しかも都知事候補としては76歳とかなりの高齢でもあり、これは石原慎太郎氏の三期目の当選時の年齢とほぼ同じですが、仮に当選したとしても、体調や健康の面などを考慮すれば、毎日長時間の公務を続けることは難しいと思われます(石原氏も以前週に3日程度しか登庁していないことが以前に共産党から批判を受けましたが、鳥越氏も同様のケースになる可能性は高いと思います)。


またその政策を見ても安倍内閣への批判が先行しているように思え、都知事としての政策を問われた際にも「ガン検診率100%」と、保育所不足や、東京五輪の運営などの問題を抱えている東京都の現状をあまりよく認識していないではないかと疑われる箇所も少なくありません。


さらに野党の姿勢にも問題があります。

ひとつは「野党共闘」と「自民党打倒」のために、すでに出馬を表明していた宇都宮けんじ氏に出馬を断念するように動いたことです。

宇都宮氏は参議院選公示の直前まで出馬を表明しており、公開討論にも参加していました。

このため野党側も分裂選挙になるのではないかと思われている中での突然の出馬断念には、野党側からの働きかけがあったのではないかという指摘や批判も一部にはすでに見られるようです。


私はまったく宇都宮氏を支持する立場ではありませんが、これは結局「とにかく自民党を倒して左派系の候補が都知事なること」を優先するあまりに、政策などの相違を無視する形で、政党が候補者の行動を抑制した可能性が高く、本来の都知事を政策で選ぶ、という観点からは逸脱したものであると思います。


こうした政局、党利党略による行き過ぎた行動は自民党にも見られました。

小池氏との衝突が回避できなくなった自民党は、小池氏への怒りを露わにし、国会議員や都議会議員ばかりでなく、その家族にも推薦候補者以外の応援をした場合には、議員に対して罰則を科す可能性があるという文言を含んだ文章を通知し、有権者だけでなく、自民党内からも批判を招くことになります。

もはやこれでは事実上の自民党のお家騒動といった方がいいでしょう。


現在、ネット上では小池氏を支持する保守層と、鳥越氏を支持する左派層が分かれ、それに議員や文化人も様々な反応を見せています。

しかし、結局これはもはやイデオロギー闘争であり、都民の関心はほとんど集まりません。


小池氏と増田氏の争いは自民党の内紛のようなものであって、それを都民が裁定するのは問題が違います。

同じように鳥越氏を支持することが「アベ政権への批判」だといわれても、そんなものに付き合いたがる都民はこれもほとんどいないだろうと思います。

過激な左派とネットの保守層だけが盛り上がっている一方で、都民には今回何の選択肢も与えられていない。そんな感想さえ浮かんできます。


もし、私がこの状況で投票するとしたら、まだ都知事として長く続けられそうな増田氏でしょうが、政策などにはまったく共感はなく、ただ都政をあまり混乱させないで、都知事をやってくれそうな人だから、以上の理由はありません。

むしろ与野党ともに政党のレベルがこんなものでは、将来安倍政権が退陣したときにどうなるのかを考えると暗澹たる思いがします。

さて、都民の選択はどんなものになるのでしょうか。




今回も読んでいただき、ありがとうございました。