読んだ(15) | 非・劇的な日常

非・劇的な日常

朗読公演ユニット「本読みの時間」主宰・甲斐祐子です。公演情報は、https://lit.link/honyominojikan にまとめて記載しています。こちらは終演報告がメインかもです。ご了承下さい。

・北村薫『八月の六日間』
物凄く久々の新作。
地語りが「私」で「編集者」って、円紫さんシリーズ?って一瞬期待したけど、違ってた。^^;

山登り小説?
北村薫が?

と思って読み始めたけど、とても、北村薫らしいお話でした。
「私」が山で過ごす数日とその前後の物語が綴られた短編連作集。
表向き淡淡と、けれど、実は意外に激しい身のうちの感情の流れが、山の厳しさや美しさ、自然の恩恵と一緒に綴られてて、やっぱり北村さんは上手いなーと改めて思う。

毎回、山への装備を点検するシーンが楽しい。
特におやつセット。
じゃかりこチーズとドライマンゴー。
定番と、
お?今回はコレが! というおやつも。

山で「私」が読む本の引用も興味深くて、それらを読みたくなる。

真似をして、この作品から引用するなら、

〈人はどうしてこんなに、写真を撮りたがるのだろう。逃げようとする時間を、捕まえたいのだろうか 〉


こんな言葉に出会うから、本読みはやめられないな~




・坂木司『夜の光』←再読

やたらと珈琲が飲みたくなるお話です。
夜空を眺めたり、星を見てみたり、もしたくなります。
夏のシーンもあるのに、何故か冷たい冷たい夜の空気と淹れたての珈琲の湯気のイメージです。
分厚いクッキー、マシュマロサンド。
焼き野菜、闇鍋みたいな鍋の具ラインナップ。
ハチミツ。

一緒に食べるってことが、戦う力になってる、きっと。



・井上荒野『キャベツ炒めに捧ぐ』←文庫化再読

これもまた美味しそうなもんばかり出てくるなー。

キャベツ炒め、アサリフライ、豆ご飯、

いーなー。
井上荒野さんの描く妙齢(笑)女性は活きがいい!
幾つになっても女の人は可愛いな~
実は結構重いというか、怖いとこもあるお話なんだけど、なんか苦笑いで読み過ごしちゃう感じが、好いなーと思う。


・小手鞠るい『望月青果店』


小手鞠さんらしい恋愛シーンもありながら、なかなかに濃い母娘小説。


言った方は忘れても、言われた方は忘れない。


自分もそーだし、自分が誰かに言ったコトの中にもあるんだろうなー。

好いコトも、悪いコトも。


自分が忘れられない、と思ってんだから、

他の人が忘れられないコトも、いいよ、って思えるようになった。

これは、時間薬。


女性作家さんって、やっぱりそれぞれに母と娘の葛藤を持ってるんだろうな~

私が好きな作家さんに特に多いのかしら?^^;





・角田光代『三月の招待状』


居心地の悪いお話だった。

嫌いではない。

30代半ばになった大学時代の同級生男女の一年間。

離婚式とか、失踪とか、なんか非日常な単語は飛び出すのに、ものすごく卑近な感じがするお話。


香山リカさんの解説が秀逸だった。





・重松清『季節風 春』←再読



・重松清『季節風 秋』←再読



・重松清『季節風 冬』←再読



・重松清『季節風 夏』←再読


この順番で読み返したことに理由はない。

偶然。

でも、なんかこの偶然が好かったかも。

このシリーズ、今まで、夏と秋の評価が自分の中で低かったんだけど、思い直した。

春と冬はもちろんだけど。



・小路幸也『壁と孔雀』


こんなにキチンとミステリーしてる小路さんは初めてじゃなかろうかと、ドキドキワクワクで読む。笑


ラストはやっぱり小路さんだな~、と。


何度も言いますが、私は小路さんの描く「お兄ちゃんと弟」の関係が大好きです。

大人がキチンと大人であってくれるところも大好きです。