新根室Night×たこ焼きNight合同興行で急きょ下着三四郎vs透明たこ焼き人間グナシオン実現 | KEN筆.txt

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鈴木健.txtブログ――プロレス、音楽、演劇、映画等の表現ジャンルについて伝えたいこと

BGM:所ジョージ『Do Do Do』

 

アンドレザ・ジャイアントパンダを擁す新根室プロレス公認東京の聖地・地下闘技場では、東京近圏の新根室メイニアの皆様のために、3月より定期イベント「新根室Night」を開催してしている。同イベントは、新根室及び上海道プロレス団の映像を上映し、その場で私・鈴木健.txtが生コメンタリーを交えてみんなで鑑賞するというもので、見れば語りたくなる(突っ込みたくなる)新根室の動画を膨らませ、ファンの皆様とともに飲んだり食べたりしながらワイワイ楽しむのが主旨なのである。

その第2回に、新根室プロレス本部長・オッサンタイガー選手が「歌舞伎町たこ焼きシティー化大作戦」と称し、たこ焼きを作るためだけに上京! 「たこ焼きNight in TOKYO」として、新根室Nightとの合同興行という形でおこなうことになった。つまり、オッサン選手が焼いた新根室名物のたこ焼き(根室さんのみずだこ!)を味わいながら、新根室プロレス及び上海道プロレス団の過去の映像を鑑賞することになり、本部長にも映像を見ていただきコメントを振るので、オッサンタイガーは(たぶん)プロレス界史上初の「リアルタイムでたこ焼きを焼きながらプロレスを解説する解説者」となる。

 

当初は本部長とそのお手伝いをするために自ら名乗りを上げ、血のにじむようなたこ焼き特訓を積んだ下着三四郎選手も上京する予定だったが、当日のサプライズとして“疑惑のレフェリング”で高名な日景TDOさん、そしてアロハ隊からも隊長が単独で参加(もはや“隊”ではない)。思わぬ新根室メンバーの参加(言うまでもなく全員自腹)に、予約の時点で札止めとなったハナの効く25名の新根室メイニアは、入場するや4人の熱烈なる歓迎を受けこの時点で大喜びだった。

 

「根室の味そのものを味わっていただくために」と、本部長はすべての食材を根室から持ち込むというこだわり。さらには本職の料理人でもある日景レフェリーも当日朝に仕込んだ手作りの大学芋をたこ焼きに備えて振る舞うというホスピタリティーをいかんなく発揮した。

 

映像の方は2017年9月9日に新根室の聖地・三吉神社で開催された大会から、先頃団体の再始動を宣言しサムソン宮本会長が遺した新根室を引っ張っていくと宣言した“メガネのプリンス”TOMOYAの貴重なデビュー戦と、アンドレザ・ジャイアントパンダ地元根室初登場となったハルク豊満戦、さらにやんなごとき事情で触れられないメインイベントを含めた全3試合、オッサン本部長はたこ焼きを焼きながら解説。

 

とはいえ、一個のたこ焼きを焼くのに全神経を集中させるのがモットーの本部長にとって、映像を見ながらたこ焼きに気を配り、さらに喋るというのはなかなかハードルが高いというのが本音だった模様。それでも汗だくになりながら(コンロの熱によってすごく暑い)この試みを形にしたのだからすごい。

 

▲たこ焼きを焼きながら試合を見て話までするのはなかなか大変だった。物事、あまり思いつきだけでやるのはよくないという事例

 

新根室の映像が終了したあとは、たこ焼き実況へ。軽快なテンポで実技を見せるこの道30年(プロレスラー活動よりも長い)の本部長にたこ焼きの極意を聞きつつ、次々とたこ焼きは生命を宿らせ、お客様のもとへと供給されていく。

 

「たこ焼きをうまく焼くのは時間で計るのではない。重要なのはひっくり返すタイミングを感じるセンス。そして焼きあがりの色」

「竹串や爪楊枝はたこ焼きに刺さず穴を開けないようにする。それはたこ焼きに傷をつけないという愛」

「本来ならばソースはなくていい。たこ焼きそのものの味で勝負してこそたこ焼き」

「ネギやキャベツを振るコツは3本指」

 

我々のような一山いくらの大部屋ド素人が知り得ぬキメ細かい技術と奥深さを言語化しながら、本部長は約45人前ほどのたこ焼きをランニングワイルドさせていった。これがスペシャリストというものなのだ。

 

第2部は上海道プロレス団が2012年に開催した上海超獣オリンピック2012。全5試合中時間の都合で3試合を流し、残りのセミとメインは次回新根室Nightへ持ち越しに。とにかくこちらに関しては何も触れることができず、イベントに足を運んでいただく以外にないのだ。

 

こうして第2回も盛況のうちに幕を閉じた…と思いきや、突じょ本部長が怒号をあげ始めた。「なんだおまえは! 人がたこ焼きを焼いているのに邪魔するな!」と誰もいないところに向かって声を荒げているので、どうしたのかと聞くと「いや、今ここに透明人間…透明たこ焼き人間が来ているんです」と言うではないか。

 

なんでもその姿は、たこ焼き道を極めた者以外には見えないし、言葉も聞こえないらしい。たこ焼き人間とは、たこ焼きの魔力にとりつかれ、身も心もたこ焼きに乗っ取られてしまった人間をそう呼ぶ。

 

幸いにも私はこのイベントに向けて、銀だこでたこ焼きのなんたるかを学んでいたのでのでおぼろげにその姿が見え、コミュニケーションもとれた。そこで本人に話を聞いてみる。

 

鈴木 すいません、透明たこ焼き人間さん、あなたのお名前はなんていうんですか? ……透明たこ焼き人間グナシオン! 透明だけに具なしだと。

オッサン たこ焼きで具がなかったらたこ焼きじゃないじゃないか! そんなもんは邪道だ!

 

▲いきなり誰もいないところに向かって怒り出した本部長。しかしそこにはグナシオンがいたのだ

 

つかみかかろうとする本部長を、体を張って止める私。なぜこのイベントにやってきたのかグナシオンを詰めると「この歌舞伎町は俺の縄張りなのに、歌舞伎町たこ焼きシティー化大作戦などとポップなタイトルをつけて勝手にやっていると聞きつけてきたんだ。誰に断ってやってるんだ! 何年たこ焼き職人なんだオラ、蹴り殺すぞコラ!」と憤っているではないか。

 

オッサン 何勝手なことを言ってるんだ! ここ地下闘技場は新根室の聖地なんだぞ。そこに土足で上がってきたのはおまえの方だろ!

グナシオン こうなったらプロレスで決着をつけようじゃないか。おまえが勝ったらたこ焼きを焼くことを認めてやるが、負けたら今すぐ機材を撤収して根室へ帰れ!

オッサン うう…闘いたいのは山々だが、今日はプロレスラーではなく一たこ焼き職人として来ているから俺に闘う資格はない。しかしここで逃げるわけにはいかない。いったいどうすれば…。

 

ここで名乗りをあげたのが、ブリーフ姿も目にまぶしい下着三四郎。本部長の手伝いでウエイターとしてたこ焼きをお客様に運ぶそのムーブは、昭和のノーパン喫茶ならぬ令和のアリパン喫茶だった。

 

下着 本部長! 俺がやりますよ!

オッサン し、下着!

下着 俺はこのイベントに向けて血のにじむようなたこ焼き特訓を本部長につけてもらいました。その成果を今こそ新根室ファンの皆さんに見てほしいんです!

オッサン やれんのか!(張り手)

下着 (すぐに張り返し)◎●×※☆◆!(←よく聞き取れず。モイスチャーミルク配合と聞こえた気が)

オッサン よし、おまえにたこ焼きの未来は託した!

鈴木 ちょ、ちょっと…プロレスの試合といってもレフェリーがいなければ成り立たないですよ。この中にレフェリーなんて…(みな一斉に日景さんを見る)いたーっ! 

 

そんなこんなで急きょ、地下闘技場のリングを使いたこ焼きの未来が勝手にかかった一騎打ちが実現。まずは『FIRE!』に乗り店外から下着が入場すると、グナシオンは所ジョージの『Do Do Do』というマニアックにもほどがある曲で姿を現す。

 

まずはロックアップにいこうとする下着だが、手が8本あるためどれと組んでいいか迷い、いったん警戒して離れ、改めてロックアップ。だが8本の手でヘッドロックに捕えられ、そのまま熱々のタコ焼き機に顔面を押しつけられそうになるが、寸前で耐えてブレイクする。

 

▲8本の手でロックアップされたら太刀打ちできない

 

▲顔面を焼かれるピンチの下着。「FIRE!」というわりには火が苦手のようだ

 

再び向き合うと下着がガットショット。そのままお返しとばかりにグナシオンの首根っこをふんづかまえて熱々の機材に押しつけ「どうだ、熱いか!」と勝ち誇るが、たこ焼きだけにグナシオンは焼かれても平気。「たこ焼きのいい匂いがするだけだー!」と絶叫しながら頭を抱える下着をリング外に持ち込んだグナシオンは、壁にぶつけたり助走つきラリアットを放ったりと大暴れ。

 

▲たこ焼きはどんなに焼かれても平気。ソースが焼けるいい匂いがするのみだった

 

▲場外で助走つきラリアットを食らう下着

 

リング内に入れられ、ダメージでコーナー下に座り込む下着にグナシオンはとてもよく回るキャノンボール。そこからフォールにいくと下着がカウント2で返したが、そのさいグナシオンがコロコロと転がったため、日景レフェリーが脚をとらわれ転倒、リング下でダウンしてしまう。

 

レフェリー不在をいいことに、グナシオンは背後からたこ焼き用の竹串を凶器として下着の額に突き刺す。これをスタナーで切り返した下着に、どちらも応援していたアロハ隊隊長(つまりは太鼓をドンドコ叩いて騒ぎたいだけ)も調子に乗ってリングインしたが、こちらもスタナーで蹴散らされ、たこ焼きシティーがスタナーシティーと化す。

 

▲何とか防御せんと抵抗したが、竹串を額に突き立てられてしまう

 

しかし、ここでグナシオンが背後から急所打ち。悶絶する下着がコーナー付近にダウンしたところへ。グナシオンのオクトパスボール(3回転ムーンサルト・プレス)がサク裂。下着は動けなかったが、レフェリーがいないためフォールカウントが数えられず。これに命拾いしたかと思われたが、深いダメージに立つのがやっとで、フラフラの状態でたこ焼き機材に近づいてしまった。

 

▲アロハ隊隊長をスタナーで排除し「FIRE!」ポースでいい気になったスキに急所打ちを食らう

 

▲見よ! これがリコシェを超えた3回転ムーンサルトの瞬間だ

 

そこへグナシオンがたこ焼きを2個、下着の口の中へ強引に押し込んだ。熱々であることに加えこれで窒息した下着の上にグナシオンがのしかかったところで日景レフェリーが蘇生し3カウントが数えられた。この技、ミスタータッコというらしい。

 

▲嫌がる下着の口の中へ熱々のたこ焼き2個を突っ込んだグナシオン。これで下着は完全窒息し3カウントを聞いた

 

★5月13日=東京・地下闘技場(観衆25人=超満員札止め)
▼新根室Night緊急試合(時間無制限1本勝負)
○透明たこ焼き人間グナシオン(4分34秒、体固め)下着三四郎●
※オクトパスボール(3回転ムーンサルト・プレス)→ミスタータッコ 

 

鈴木 いやー、下着選手負けてしまいました。これでもう新根室は地下闘技場でたこ焼きを焼くことができません。

オッサン 仕方がない。我々は機材を撤去して今から根室に帰ろう。

鈴木 ちょっと待ってください、本部長。グナシオンが泣いていますよ!

オッサン 本当だ。グナシオン、どうしたんだ!?

グナシオン さっき、下着の口にたこ焼きを突っ込んだ時、どさくさに紛れて一つ食べてみたんだ。こんなにうまいたこ焼きは食べたことがない。何よりも、味に魂がこもっている。たこのクオリティー、粉の配合、焼き加減、機材の情熱的な熱量、竹串を刺す角度…どれをとっても完ぺきだった。こんなにうまいたこ焼きを作る人間に悪いやつなんていない。このたこ焼き愛は本物だ。オッサンタイガー、これからもこの地下闘技場でたこ焼きを焼き続け、そして根室、北海道でもたこ焼きを焼き続け、たこ焼きのなんたるかを世に広めてくれ。

オッサン グナシオン…おまえも立派な透明たこ焼き職人だよ。ありがとう!(こちらも感動で涙が止まらない)

 

▲グナシオンからの思わぬエールに涙を禁じ得ないオッサン本部長

 

▲そしてグナシオンとハグを交わす。人間と透明たこ焼き人間の間に絆が生まれた

 

▲闘った両雄の健闘を称えるオッサン本部長。たこ焼きの未来は明るい

 

たこ焼きを通じてわかり合えた新根室とグナシオン。やはりプロレスとたこ焼きが好きな者に悪いやつなどいない。

 

実はこの一戦、最近お店のTwitterアカウントを何者かによって乗っ取られたばかりか、右足薬指の骨にヒビが入っていたり腰を痛めたりで落ち込んでいる店主の佐々木マスターに元気になってほしいという新根室メンバーの粋なはからいだった。何も知らされずに店内で試合が始まり、そしてそれを明かされたマスターも涙。

 

▲思わぬ新根室のはからいに、メガネの上からそっと目を拭うマスター。新根室東京の聖地が感動に包まれた

 

というわけで最後は全員で「無理しない、ケガしない、明日もたこ焼きーっ!」で締められ、第2回新根室Nightは試合まで見られるという伝説の一夜となったのだった。

 

▲最後はたこ焼きNight限定の締め。参加した皆様はこの翌日にもたこ焼きを食べて、Twitterにアップし本部長に報告してください