ミーとチー | フィジカル運動教室 http://www.aso-spo.net/

フィジカル運動教室 http://www.aso-spo.net/

愛知県岡崎市で活動しています、子供たちが遊びスポーツを通し楽しみながら、心と身体の根っ子を育むための教室です

今から20年ほど前
自宅の玄関先に迷い込んだ子猫


そこにミルクを置き

道場の練習から戻って来ても

子猫は同じ場所にチョコンと座っていて

最初は大家さんに内緒で飼い始めた

ミーと名付けた子猫は

元気な女の子でした

しばらくして

一人は淋しいかなと思っていると

ペットショップで見掛けた

「里親募集」の張り紙

そこにいた2匹の黒い子猫

最初は2匹とも飼いたいと思いながらも

猫を飼う事を了承して貰った大家さんの手前もあり

その内の1匹を譲り受ける事にして

家に連れて帰り

最初の猫はミーだから

「空手道」の道を捩って

つけた名前はチー

こちらも女の子

ミーとチー





合わせて「道」

流石は外の世界の厳しさを知る

ミー

何が気に入らないのかは分かりません

事ある毎に毛を逆立て

フーッと威嚇するミー

突然
家中を走り回ったかと思うと

カーテンレールの上

逃げるチーを追いかけ回して

カーテンに飛び移って

みるみる間にカーテンはボロボロに

それでも

気分の良い時は膝の上でゴロゴロ喉を鳴らしたり

おでこをスリスリ擦り付けたり

暴れん坊で甘えん坊

ツンデレのミー

方や

一年ほど後から家族になったチー

おっとりして

穏やかで

息子の様な事務方さんが来ても

初めての電気屋さんが来ても

誰のお膝にも

チョコンと座って

こちらもゴロゴロと喉を鳴らして

怒った姿を一度も観た事がない

癒しのチー


先に虹を渡ったのはミーでした





横たわるミーに

寄り添うチー

徐々に元気がなくなるミー

そのミーを
我が子の様に抱く家内の姿

ある朝

ミーは旅立ちました

御歳暮で貰った

「箱入り娘」と書かれた蜜柑箱


家内と2人

その棺を抱いて

公園を散歩して

最期にお外の風景を観せて





天に召されたミー


その日から

私と家内とチーとの日々

夫婦喧嘩の仲裁も

その様子を優しく哀しそうな目で見つめる

チーの姿だったりしました

私のお腹の上でゴロゴロと寝ているチー

ふっと目を覚ますと

必ず家内の枕元にいるチー

穏やかに私たちの生活を見守ってくれている

チー

気がつけば

チーも19歳になっていました






少しずつ

足腰がおぼつかなくなって

もうこのまま歩けなくなるのかと思うと

また元気に歩き出して

その波は徐々に

頻繁に現れる様になりました

本当に

少しずつ

少しずつ

ある日の朝

チーは歩けなくなって

ミーの時と同じ様に

そんなチーを

優しく優しく抱く家内の姿があって

その日から

お昼の休憩時間には

必ず自宅に戻る様になった家内

教室が始まる前

チーにお水を与え

食べられる時には食事を与え

寝返りをさせるのが私の役目




朝昼晩とオムツを替え

お風呂に入れ

時間の許す限りチーに寄り添う

それが
家内の日常となりました


8月のある週末

東京で行われた全国大会

大会一日目が終了した夕暮れ

一通のLINEが届いているのに気づいて

そのLINEは

午後12時59分に送られて来たもので

こう綴られていました


「ちぃ虹の橋を渡りました」


溢れる涙と共に

家内の事がとても気になって


親睦会の前

お店の入り口に続く階段

電話越しの家内との会話

大丈夫か

うん

あんた
みんなの前で泣いてちゃダメだよ!

今度は私が

うん


気丈に振る舞う家内の声に

また涙が溢れて


その夜

改めて電話して


有休とって一緒にチーを送ろう

お休みの木曜日まではチーと一緒に居る

だって夏だし

部屋も暑いし

一緒に居る

分かったよ


それから

チーが生きていた時と同じ様に

休憩時間をチーと過ごす家内

夕方の教室前

私はチーの身体を冷やすために家に戻り


仕事以外の全ての時間を

チーに寄り添って過ごす家内は


まるで眠っているみたい

時々

そう
つぶやいていました


そうして迎えた木曜日

チーの棺は

ミーの時と同じ

御歳暮で貰った

「箱入り娘」と書かれた蜜柑箱

その箱は

50代前半で
天へと旅立った

私の大切な弟子から

毎年
贈られていた蜜柑箱である事を






チーの旅立ちの日に私に伝えてくれた家内


その箱を今日まで大切にとっていてくれた家内の想い


うちの箱入り娘だから

ミーの時と一緒なんだよ

家内の想いと優しさに包まれた

ミーの時と同じ

棺の中のチー

花を添えて

お寺でお経をあげて頂いて





ミーの時と同じ様に

今度は

チーの知らない外の世界を観せる為に

再び

棺を抱いて

公園を散歩して




蜜柑箱を抱いて

その箱に語り掛けながら散歩する

私たちの姿が不思議に見えたのか


公園で出会ったお婆さんに声を掛けられて

事情を話すと

共に涙してくれて

何故か

ゆっくり

ゆっくり流れる時間の中

火葬場で最期のお別れをしました


帰りの車中

雲の隙間から見えた虹








チーは

あの虹の橋を渡り天に召されたのだと感じました


ミーとはもう再会出来たのかな


ありがとう

チー