カセットテープと恋 | 御舂屋(おつきや)のブログ

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2014年からブログを書いていますが、最近半分以上ブログを消しました。

柏木は部活のあと、海辺のデッキを歩き、息を吸い込んで立ち止まると髪の毛を靡かせながら広く静かな海の向こうの山陵を眺めやる。その憧憬は彼女にとって憧れそのものだったかも知れない。俺は100円玉を二枚ポケットから取り出して自動販売機に走ると、彼女に歩み寄る。気づいた柏木は髪の毛を梳きながら、軽く微笑んだ。彼女は差し出したキリンレモンの缶を受けとると、「ありがとう」と言った。俺の右手にはファンタがあった。永井真理子風のヘアスタイルは田舎の女子中学生の自然な髪形となっていたが、彼女の前髪は色っぽかった。俺は彼女にカセットテープを渡した。家のSANYOのダブルラジカセからダビングしてきたレベッカのテープだ。「ハイポジじゃなきゃ、やよ」と音にこだわる彼女のリクエストに応えてやった。「しゃれてんね」とAXIAのカセットテープのデザインを見て言った。カセットの種類も多くて選ぶのも楽しみの一つだった。お気に入りのwU4Aダブルラジカセの録音ヘッドのついたホルダーにカセットを入れ、録音ボタンをカチッと押し込む。すぐに片方のレベッカのテープを再生する。録音開始。ウェラム・ボートクラブが流れてきた。「イカシテるじゃん。」と柏木。

aiwaのウォークマンのイヤフォンを耳にあて、曲を聴いている。彼女はそれしか持っていなかった。だから、友達の俺がいつもダビング係だった。「リバティ?」
「いくらすると思ってるんだよ。俺の小遣いじゃ17万円もするコンポなんて買えないよ」


誰にも染まらずに
自由に飛んでいけよ


VIRGINITYを口ずさんでいる。俺も好きだ。

ひびわれた鏡   見つめながら一人
長い髪をとく


彼女を見て思った。小学生の頃、柏木はテニス部で、リボンつきのヘアバンドをした活発な女の子だった。
うちと違って、ベストテンが放送される時間帯に親がプロ野球か、NHKを見ているような家庭ではなく、自宅で彼女はテレビのチャンネルを自由にガチャガチャと切り替えていた。年下の彼女が俺より、ませていたのはそういった理由がある。昨日、テレビどうだった?とドラマの筋などを聞くのは挨拶がわりだった。そして、いつからかビデオテープに録画した番組を家の人がいない時、見せてくれるようになった。俺の家にはビデオデッキがないので彼女の家でだ。母親がドラマ好きらしく、Hi-Fiビデオを買ったという。
最近では「愛しあってるかい!」に夢中になってた。バービーのKONTAが先生役で出演してるからだが、学園ドラマとしても面白い。俺もたまのそれが楽しみになった。いわば、持ちつ持たれつの関係か。思えば、アイドルのカセットしか持ってなかった俺がBANDのカセットを聴いたのはこのBARBEE BOYSが最初である。√5というアルバムだったが、昼下がりに一人寂しく部屋で聴いた後、俺はまるで初めて世界を見たような気持ちになった。少なくとも、聴いたことはなかった。未熟な幼心は見事に感応していき、その音楽を知ろうと躍起になっていたに違いなく、勉強机の椅子に座ってウォークマンのイヤフォンを付けたまま、動かなかった。そして、雑誌の懸賞の応募葉書を書いていた。
俺は頭を横に振ると、空き缶を握りしめる。グニャっとした凹み。
空が暮れ始めていた。レモンが搾ったように空に溶けていく。やがて、煤けていく空気の中で体操服を着た姿が一緒に灰になっていきそうだった。


背中の汗が   乾くと   黄昏は風のパウダー


俺は立ち上がると、夕映えの中で軽くシャドーボクシングをする。そして彼女の隙をついて、耳にあてたイヤフォンを取る。彼女は無言で笑って、取り返そうとする。


誰かに見られても  キスはお互いを隠すよ


♪Cotton time
一瞬、温かくて柔らかい唇が俺の唇に吸い付いていたのがわかった。

テールランプが一台、一台と野末へと過ぎ去っていく。帰り、柏木は通り様にお酒やたばこの自販機があるとボタンを滑らすように押して歩いていた。外灯が舗道を照らしている。それは初めてのことだった。ときおり、光に当てられた素顔がうっすらと赤い。俺はさっきのことについては何も言わなかった。二人はうつむき加減で草むらによろけるような足取りで、夜気を肌で感じながら、家までつたない会話をぽつりぽつりとかわしていくのだった。テニスラケットとユニオンジャックのスポーツバッグをかけて歩く彼女はその日だけはしおらしかった。俺達は今日から恋人同士だったのか。


せつない「Yesterday」忘れやしない
約束してネ    London Boy & Little Girl


♪London Boy









以前、二人でこうしてじゃれあいながら帰っていると、仕事帰りの近所の兄ちゃんが家まで車で送っていってくれたことがある。お腹を空かした俺たちに兄ちゃんは車を止めてタコ焼きを買ってくれた。柏木はずうずうしく、ソフトクリームを物欲しそうにおねだりしていた。兄ちゃんは気前が良く、仲間内でも男気のある人として通っていたようだった。兄ちゃんの友達が言っていたから本当だ。兄ちゃんの愛車(ソアラというらしい)の中ではBOOWYというバンドの音楽が流れていた。カロッツェリアというカーオーディオが自慢らしかった。ウィンドウから吹く風とサウンドがとても心地好かった。兄ちゃんに聞いてみたところ、この曲はLike a childというらしかった。


Ooh  頼りないやつらで
愛想を尽かしたのか


昔、兄ちゃんの友達はシンナー中毒で、彼女とゼファーに二人乗りしてはラリっていた。俺も商店でシンナーを買っていたが、それはプラモデルを作るためだ。兄ちゃんは語らなかった。だから、俺たちもその後について触れなかった。




そうして、ついで軽く車を流して、やがて、家路に着いた。俺は晩御飯を食べた。食べ盛りというものだったのだろう。彼女も家に公衆電話から言伝てしておいたので、家族も安心していた。風呂に入って、部屋に寝そべると週刊ジャンプを広げる。少年サンデーと一緒に兄ちゃんの車から貰ってきた。ヤングマガジンはまだ見てないと言った。ひととおり読み終えると、俺はラジカセのスイッチをオンにして音楽を聴く。テレビは居間にしかない。何だかすることがない、もしくは、する気がない時は、ぼーっとすることが多かった。普段はずっと漫画か雑誌を読み続けるか、弟とボードゲームかチェスか将棋をするか、田宮のプラモデルを作るなどしていた。もちろん、一日、運動もしたのだから少し休んでいたい気持ちもあった。そして、小学生だった彼女が制服を着て、だんだん大人びていく姿に内心、どぎまぎもしていた。彼女との思い出も幼年期からたくさんだ。花火に、磯での牡蠣焼きに、一緒に走り回って、海水浴にキャンプファイアなどの遊び、犬との戯れ・・・・・・勉強・・・・・・
夜は寂しくて物静かだ。何もしなければ、そうして過ごすしかなかった。俺だけじゃなく、それは皆だった。彼女もこうしているだろう。つれつれと思い耽って、いつしか眠気の中で明日を夢見ていた・・・・・・



疲れ果てた  体よこたえ
目を閉じて  今日を思いかえす

汗にまみれて  ただがむしゃらで




♪Maybe tomorrow
http://www.youtube.com/watch?v=ZhjGYrrK6RA&sns=em

♪Virginity
http://www.youtube.com/watch?v=CsKCCkX8kMw&sns=em

♪Cotton time
http://www.youtube.com/watch?v=S1Dn5eYC4EA&sns=em

♪London Boy
http://www.youtube.com/watch?v=F2lpjA5X2cg&sns=em

♪Nervous and Gramorous
http://www.youtube.com/watch?v=YkJ3BIU4L8w&sns=em

♪Lonely butterfly
http://www.youtube.com/watch?v=4ilddOZFz4E&sns=em

♪百萬弗コネクション
http://www.youtube.com/watch?v=SslfxWcv5bo&sns=em

♪Like a child
http://www.youtube.com/watch?v=WdhMVsxTcWU&sns=em

氷室京介  Dear Algernon


永井真理子CM

永井真理子 瞳元気

永井真理子  瞳・元気  全

永井真理子  keep on ″keeping on″

永井真理子  MARIKO

永井真理子  Brand-new way

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バービーボーイズ  midnight peepin′ (2stアルバム)

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