保険のハナシ | ゼッタイマカーイ

ゼッタイマカーイ

僕の日常、皆の非日常。


もうすぐなんだ

今度こそ、もうすぐなんだ

来週には、ばかみたいに笑ってる

泣きながら飯食ってんだ




移植が終わり、3日目から突然襲ってきたのが

気を失うほどの腹痛

痛み止めは麻薬になるため、一晩我慢して下さいと

眠れないことが辛いんじゃなくて

眠気すら起こさないほどの痛みが辛い

さらに発熱

抗生剤をうち始め、解熱剤も服用

麻薬を使い始めても完全には治まらない腹痛

その副作用による吐き気も出て

強烈な抗がん剤の副作用に対して、白血球がゼロ

厳しすぎる戦いでした

今では腹痛もおさまり、突発的な痛みに対しては

モルヒネさんのお世話になっています

むしろ今よりも辛い突発的な痛みを一晩耐えた自分

すごすぎだろ。



本当にさ、安易に使えない言葉を使うとしたらさ、

死ぬほど辛かった。

移植前処置の吐き気よりもはるかに辛かった。

光が全く見えなくて。

というか前すら向けなくて。

一回抜けたと思ったトンネルの先には

晴れた国道の景色が確かにあったんだけど

台風とゲリラ豪雨が一斉に3日間くらい襲ってきた感じ

もう完全に油断してたから、スリップしまくりの崖から落ちてまうんじゃねーのってくらい

だったらトンネルにいた方がまだ良かったと思う程のね

全然上手くないけど、車の運転にたとえてみました


というか、そんな状況でも人間なんとか生き延びられるもんなんだ、と

生命力というのかな

光すら見えない状況でも、それでも俺は、いやむしろ、

びっくりするほどに俺の体が、迷わずに生きたいと強く望んでて

だからここまで辛くても闘えたんだね

そこまでやってくれた愛車にも感謝して労ってやらなきゃね


あとはやっぱりね、入っていて良かったと思うのは

自動車保険だよね

本当にどうしようもなく辛い時や、いざという時にならなければ

ここまで有り難いと思うことはなかったかもしれないし

ずっと気づけなかったかもしれない、という意味でね





腹痛で意識が朦朧とする中で、目を開ければ自分を見守る母の姿

突然襲ってきた吐き気に対応して、背中をさすってくれた大きな父の手

いつでもそこにあるはずの、その姿を、その手を、

僕は今まで、これほどにありがたいと思ったことはない

温かくて、ほっとする、唯一無二の存在

どうして今まで気づけなかったんだろう

親の愛情に包まれて、生まれてきて

親の援助に支えられて、一丁前に大人になって、

必死に照れを隠しながら、わかったフリをしてる自分が、

やっぱりこの人達の子供なんだって思った


無菌室に入る前、「面会は家族だけに制限してくれ」とも言われて

「家族が来ても何もならない」と言い返した自分がいた

冗談も入ってるけど、本音と言えば本音だった

結局、それから今日まで、家族としか面会はできていない

母は図々しくもありながら、毎日のように必要なものを持ってきてくれて

父は仕事帰りに何をするわけでもなく、椅子に腰かけて帰っていく

兄はたまにプレゼント持ってきてくれるし

姉も共通の話題を探りながら話し掛けてくる


友達のようでいて
他人のように遠い
愛しい距離が
ここにはいつもあるよ

家族の風景/ハナレグミ


5人一緒に暮らしてたのなんて、もう何年も前の話

家族旅行も、一家団欒の食卓も、ずっと前の話

心が離ればなれになって疎遠にもなって、

それでも決して切れない縁と、確かで心地よい距離感

そりゃ人間だから面倒な時もうざい時もあるよ

というか、これ程近くで見ているのだからそう思うのは当然だね


でも、だからこそ、その有り難さに気づいた時、

自動車保険に入っててよかった、と安心するんだね。





なんてね。ウソ。





家族の本当のありがたさに気づいたとき、

人は涙が止まらないんだね。


だから結婚式で泣くんだよね

きっと家族に感謝して泣くなんてことは

あとにも先にも結婚式くらいかと思ってたけど

夜の病院で一人むせび泣くとは予期せぬ展開。笑

無償の愛が、この世で一番強いエネルギーって本当の話。


そんな機会をくれたドSな神様に感謝してみるかな


かれこれ2週間、

まともな食事は一切摂ってないけど

一番食べたいのはやっぱり

出来立ての湯気が立つような母の手料理

それを家族で食卓を囲みながら頬張る

それが夢

それが幸せ


なんて口が裂けても言えない

だから書いてみた次第


んじゃ