【鰯本さんと大阪のおばちゃん vol.2】
『うちはただの大阪のおばちゃんや。あんたを助けにきたで』
「た、助けに!?何かありましたか!?」
『いやいや、頭がイワシになっとるがな。十分何かあるがな』
「・・ハッ!おばちゃんが強烈すぎて忘れてました!」
『うちの強烈な美しさが記憶まで飛ばしてもうたか・・うちも罪やなぁ』
「いや、そうじゃなくて・・・」
おばちゃんはそんな声を無視するかのように台所へ行き、お茶を入れてきた。
まるで自分の家かのように。
『まあとりあえずそこに座り。安いお茶やけど飲みながらしゃべろか』
「・・・は、はぁ・・・っていうかそれ、うちのお茶・・」
『あんた、何で神様にイワシにされたかわかるか?』
「い、いや、全然わかんないです・・・」
『自分の本当の声を無視して生きてきたからや』
「えっ!?自分の本当の声を無視!?」
『そや、あんたは自分を生きてるつもりかもしらんけどな、本当の声をずっと無視しとんねん』
「・・・言っている意味がわからないです」
『今はわからんでええ。だんだんわかってくるさかい大丈夫や。おばちゃんに任せとき』
ボクは何がなんだかわからなかった。
なんでこんなことになってしまったのだろう。
でも今は、ボクを助けてくれると言っているこのおばちゃんを頼るしかない。
『まあそう落ち込まんと。魚が死んだような目ぇしてるで』
イワシになってしまったボクには、リアルすぎて笑えない会話だ。
『生きててなかなかイワシにされることなんてないんやから、楽しまな損やで』
「そりゃなかなかないですけど、楽しめませんよ・・・」
『そや!あんたにとっておきのギャグ思いついたで!これやって元気出し!』
おばちゃんはそう言うとちょっと離れたところから走ってきて
『うれし!たのし!わしイワシ!!』
と、どや顔でやってみせた。
『がはははははー!ええやろ?な?おもろいやろ?ほら、あんたもはよやり!』
・・・ボク、やっぱり不安です。
vol.3につづく