戸倉の未成隧道5の続きです。
その禍々しささえ感じる美しい「穴」に惹きこまれるように近づく私。
想像よりも大きい。完全に自動車を意識した隧道なんだ。
坑門はない。ただ、コンクリ巻のアーチが、自分は隧道だと訴えてくるように自己主張している。
一歩、中に入ると異臭に顔をしかめた。
くくくさい。
閉塞隧道特有のカビ臭さには慣れているはずのトリだけど、これはきつい。
カビと同じくらいの濃度で鼻をつく獣の匂い。きっと蝙蝠とその糞とその・・・いや深く考えないでおこう。
その方がきっと幸せ(笑)
振り返って入口の様子。
コンクリートアーチが綺麗。うっとり。
太陽の光は中には差し込まない為、隧道の中は真っ暗。一人ひとつ以上ライトを持っていないと先に進むのは厳しい。
すこし進むと平らだった路面に変化が。真ん中は2メートル幅くらいで平らな路盤が続いているが、そこには大量の腐った木材が散乱している。
そして左右は自分の身長ほどの堀残し・・・。これは隧道を穿つ手順そのままに、途中で放棄された証し。
くわしくは「トンネル 逆巻工法」とかでググっていただければと思いますが、ざっくり言うと
まず、導坑①を貫通させます。そして導坑の真上②を掘ります。つぎに②の両側③を掘って、ここでセントルを組み、コンクリートをいれアーチを造ります。アーチができたら導坑①の両側④を掘ってアーチの下半分を造って完成。
という作り方。
坑口からほんの数メートルは隧道として完成していたけど、その奥は④を掘る手前で放棄されているのだ。
④の部分によいしょっと登り、セントルだったと思われる朽ちた木材をあまり踏まないようにして、奥に進む。こんな隧道はいままで出会ったことがない。
なんて景色だ。