熱闘!後楽園 -74ページ目

ZERO1「レスラーズ」 by キャットウーマン

梅雨の晴れ間、後楽園に行ってきました。
5月のブシロードに続きZERO1の試合です。と言っても武士道はプロモ・イヴェントでしたから、まともなZERO1主催興行は初観戦です。

毎回ここにも書いている、私の好きな入場時の配り物。何かもらえるだけで単純に嬉しいのもあるけれど、それぞれの団体や興行の配布物は時間が経って久々に見ると意外に懐かしかったりもするので、一応もらって取っておきます。
今日はもぎりの所で手渡しされたハガキ大の「お食事会」チラシ(文字のみ白黒)。大谷晋二郎選手&若手X選手、と書いてありますが若手Xって大地くん? 
プロレスラーのファン交流会が小岩のお好み焼きって、可愛らしすぎ。焼き肉とかモツ鍋とか、もっとヘビーなイメージ、無いですか? 焼き肉はややネガティブな話題になってしまいましたが。下町の小ぢんまりしたお好み焼き屋の小上がりに、やたら目立つ大きさの大谷社長と、鉄板越しヘラ片手に向き合うの図、ほほえましくてちょっと良いです。
掌大のチラシ1枚に早速反応、想像を膨らませるのがミーハー素人ならではの楽しみ方です。

さて会場内は、南側を閉めて東西北で7~8割の入りか。
スクリーンはいつもの通り北面に吊ってあるので、私の居る北側A席では振り返って見上げるのは至難の技、首が痛く苦痛でしかも近すぎて見え難い部分も。コストの問題かもしれませんが、スクリーン使用なら北席を潰して南側に入れて貰いたいです。
告知してある時刻が来たらさっさと試合を始めて頂きたいのですが、何故か遅れてスタート。にも拘らず遅れて来た隣席の男子は、飲食しつつ2個持っている携帯に次々着信・応答、またその同行者も電話を掛けに人の前を出入りするもので、試合開始から気分もダレてしまって、これと言うメリハリも無いままインターバルまで行ってしまいました。ある程度は仕方ないにしても、場内での携帯電話は、主催側から一応注意すべきかと思いました。

リング上では前半4試合が行なわれ、3試合目はディック東郷選手のプレ引退試合、というかデモンストレーションですから和やかな雰囲気で良いのでしょうが、ハヤト選手がお行儀良くて残念でした。もっと溌剌とした彼をまたの機会に。

メインの自演乙選手、ブシロードでのデビュー戦以来の参戦ですが、プロレスの空気に馴染んで来た感じが、嬉しく観られました。特に彼のファンでは無いんですが、K-1勝利を観ていた事もあり、プロレス畑でさんざんいろいろ言われるのが何だか気の毒に思っていましたので、少しホッとしています。デビュー戦では練習して来た技あれこれを一つでも多く見せようと頑張ってましたけれども、少しは流れを持つようになりました。そのうちもっとストーリーのある試合を見せてくれるかもしれません。本当のプロレスラーのように。
今日は髪もブロンドと赤の染め分け(どのようなコーディネイトなのか不明)、コスチュームはボン・クレー、タッグ・パートナーの曙がルフィだそうですが、例によって全然分からず。
大谷選手とのフェイスウォッシュ合戦とか、大地選手も三角蹴りを出したりまあいろいろあり、曙のノド輪落としはさすが本職の迫力でした。

ほかには、出て来る選手たちが皆似た様な技を披露するので単調に見える、とか、殆どプロレス素人に見える外国人選手が段取りを理解せず掛かり損ないの技で中途半端な落とし方をするので危ない、これがセミファイナルか、とか、文句ばかり言っている様ですが、これでもちゃんと現場を楽しんでおります。舞台芸術とプロレスは、やはり生がいちばんです。
でもついでに、この団体には動きの素早いジュニア選手が居ないのでしょうか。小柄な人たちでもトップロープに登るのにヨイショと梯子登り状態で、走るのもあまり速く無いのは団体カラーなのだろうかと考えてしまいました。
全体に試合が間延びして見えるのはそのせいなのか、余計に長く感じます。タイトでスピーディな展開も交えた、緩急のある流れなら、もっと楽しく観られたと思うのです。

全部で6試合、21:00過ぎくらいに帰れるかと思いきや、4試合後のインターバル前で20:30を回っています。これでは21:30になるかなと覚悟しましたが、まさか終了が22:00近くとは。週日ですから多くの来場者は仕事を終えての観戦、集中していられるのは2時間が良い所かなと思います。サクサクと進行すればあと40分は短縮出来たのでは。
やれやれと駅へ向えば、ドームの試合が終わったばかりなのか、水道橋駅は人でいっぱい、おまけにまたもや中央線のトラブルで電車も遅延。仕方なく同行のTさんと駅前のプロントに寄り道、私は生ビール、相方はアイスコーヒーでしばし休憩し、帰宅はなおも遅くなったのでした。

●試合展開などの詳報は下記をご参照ください。
http://sportsnavi.yahoo.co.jp/fight/other/live/2011/2011061401/index.html

【ZERO1「レスラーズ」】
2011年6月14日(火)19:00試合開始 

■第1試合 シングルマッチ 20分1本勝負
小幡優作 ○ vs 横山佳和 ×
10分37秒 ミサイルキック→片エビ固め

■第2試合 6人タッグマッチ「佐藤耕平デビュー10周年記念」30分1本勝負
佐藤耕平、柿沼謙太、アランド・スレックス × vs KAMIKAZE、植田使徒、フランク・デビッド ○
13分43秒 スーパープレス→体固め

■第3試合 ありがとうディック東郷 引退直前ZERO1最終試合 6人タッグマッチ 30分1本勝負
ディック東郷 ○ 、日高郁人、FUNAKI vs 田中将斗、澤宗紀 × 、フジタ"Jr"ハヤト
14分02秒 ダイビングセントーン→体固め

■第4試合 インターナショナルJrヘビー級選手権試合 60分1本勝負
(王者)菅原拓也 ○ vs (挑戦者)藤田峰雄 ×
20分57秒 十三不塔→体固め <王者が初防衛に成功>

■第5試合 世界ヘビー級選手権 60分1本勝負
(王者)崔領二 ○ vs (挑戦者)マーク・フセイン
10分25秒 那智の滝→体固め

■第6試合 ドリームマッチ タッグマッチ 60分1本勝負
大谷晋二郎、橋本大地 × vs 曙 ○ 、長島☆自演乙☆雄一郎
19分25秒 大肉弾プレス→体固め

6.12 全日本プロレス「CROSS OVER 2011」 by チャン・マメルトン

全日本プロ・レスリング株式会社 内田雅之 代表取締役社長の挨拶

『この度はファンの皆様、関係者の皆様、大変皆様にはご心配を、ご迷惑をおかけしまして心よりお詫び申し上げます。また平井選手の1日も早い回復を心よりお祈り申し上げます。
私自身、突然の大役を仰せつかり、この重責を全うできるか大変不安でございましたが、ここにおります選手、スタッフ、そして日ごろから応援して下さる皆様のお力をお借りしまして、力の限り誠心誠意をもって尽力を尽くしてゆく覚悟でございます。
これからの全日本プロレス、心機一転,、一丸となりまして皆様方のご期待を裏切ることなく、最高のプロレスをご覧頂けるように精進してまいりますので、何卒皆様のご理解を、応援を賜りたくよろしくお願い申し上げます(場内拍手)。
本日はご来場頂き、誠にありがとうございます。どうぞ最後まで楽しんでいって下さい。ありがとうございました!』(発言のまま)



$熱闘!後楽園-試合開始前



しかし、世の中何が起こるか本当に分からないものだ。1ヶ月前、オープニングのリングにいたのは大和ヒロシ、そして悪役軍団・ブードゥー・マーダーズの面々。今日は社長を辞任した武藤敬司以下、全日本プロレスの選手・スタッフと内田新社長。当たり前だが会場の雰囲気も重く感じる。

やはり今回の件の影響が出たようで、試合開始10分前の1階当日券で売り切れていたのが一般立ち見のみ。先月買えなくて悔しい思いをした4000円席もまだあった。エレベーターを待つ列もなく、すんなり乗り込み5階へ。会場に入り全体を見回せば、6~7割の客入りだろうか。

何事もなければ、今大会は6.19の両国国技館大会に向けて、前哨戦を幾つも並べて大いに煽ったはずなんだが、当然カードも大幅変更。煽りというより急場を凌いでどう両国に繋げるかというマッチメークで全6試合。ところが「ケガの功名」とでも言うべきか。個人的には先月よりも断然楽しめた。以下…。

第一試合:淵正信vs中之上靖文。ベテラン対若手の典型的な第一試合。最近はどの団体でも「つかみはOK」とばかり、第一試合から若手が派手な技を次々に繰り出してお客の歓声を浴びているが、6分13秒間で出た技はボストンクラブ、ボディスラム、ブレンバスターと決め技となったスクールボーイ。それとバックドロップの防ぎ合いくらいなものか。試合の核は淵さんのオーバーパフォーマンス。ボディスラムで投げられて以降、盛んに腰が痛いというアクションをして、ロープエスケープ、場外エスケープを繰り返す。そうして攻撃の焦点を分からせ、時間を稼ぐ。技も少なく賑やかでもなく、でも見所を作り次の試合とは違った色を出し、そして試合を成立させる。極めて正当な、長いプロレス者からすれば「そう、これ!」と叫びたくなるような内容であり、これを第一試合に組んだ全日本プロレスの今後への決意みたいのを感じ取った。
実はそれほどの意味もなく、本当に急場しのぎマッチメークだったのかもしれないが、個人的にはそう受け止めた。

第二試合、ジョー・ドーリング vs ネレ・デュプリ。元々は解散したブードゥー・マーダーズに属していた外国人選手(らしい)。かの騒動の際は控え室の外に出されたため、処分を免れた。とは言え、彼らも軸となるグループが急に無くなったわけだから、災難と言えば災難。どうしたらいいのかという行く当てのない心境は、そのまま試合に表れていたと思う。ヒールなのか、ベビーフェイスなのか、パワーなのか、テクニックなのか、強い印象を一つも残すことなく試合が終わってしまった感じだ。

第三試合、世界ジュニア・ヘビー級王座決定戦進出決定戦~ナンバーワン・コンテンダー・ラダーマッチ~、近藤修司 vs 大和ヒロシ vs BUSHIの3wayマッチ。リング中央に吊るされた6・19両国大会での世界ジュニア・ヘビー級王座決定戦進出権を争奪するもので、時間無制限、フォール、ギブアップを奪われた選手は退場するというルール。で、吊るされた進出権をラダーを使って取るという試合。もちろんラダーを凶器にも使えるのだが、そこは大日本プロレスならぬ全日本プロレス。投げたりブン回したりすることはなく、せいぜいラダー上にボディスラムに投げつけた程度(もちろんそれでも痛いが…)。まぁ、何というか「温泉プロレス」ともいうべきゆるーい試合で、ラダーに登りあと一段上がれば進出権が取れるという高さからボディーアタックで飛んでみたり、ラダーをガタガタさせて登る途中の選手を振り落としてしまったりと、とても選手権試合の進出権がかかっているとは思えないようなほのぼのとした内容。最後は近藤が進出権を取るという、ビッグマッチでのクオリティを考えたら、まぁ順当な結果だろう。

前半3試合が終わり休憩入りしたのが12時50分。前回は第二試合が始まったのが12時45分だから、こんなところにも大きな変化を認識できる。会場を見回せば、客席最前列付近で選手もいないのに人だかり。よく見れば俳優の市原隼人が、写真撮影やサインの依頼ににこやかに丁寧に応えている。彼もプロレス好きだったんだ。好感度かなりアップ。その光景を見ていた前の席のおじさん。その前の席の客に誰が来ているのかを質問している。席を立った際にそのおじさんを見れば、なんと“客席王”斉藤清六さんではないか。左手にドリンクカップ、右耳にラジオのイヤホン。さては競馬中継か? かつて欽ちゃんファミリーの一員としてお茶の間の人気者だった清六さんだが、さすがは客席王。誰にも気づかれることなく客席を満喫していたようだ。


さて、後半の3試合。前半3試合が冒頭の挨拶とその雰囲気を払拭できないまま、大きく盛り上がることもなく淡々と終わってしまった印象だったが、果たして後半は?

第四試合、太陽ケア・大森隆男 vs 曙・浜亮太の世界タッグ王座決定戦進出チーム決定戦。それにしてもSMAPの「がんばりましょう」で入場してきたSuper Megaton Osumo Powers=SMOPの二人は、いつ見てもその存在感がいい。あの体の大きさはそれだけで銭が取れるし、姿を見せただけで会場の雰囲気が明るくなった。試合で出した技だって、頭つき、ぶちかまし、腕ハンマー、ボディプレスにローラープレス程度だが、そのすべてが破壊力抜群。加えてこの日の曙の気合の入り方がすごく、積極的に声を出している。彼らはそのシンプルさだけで十分だ。

一方のケア・大森組。最近各団体に精力的に出場している元旅館の番頭さんだが、思ったよりも声援があったのは意外。試合序盤こそ曙とのぶつかり合いで倒れることなく大いに見せ場を作ったが…。最大の見せ所である1発目のアックスボンバーを打つ際、間合いがあわず助走を緩めてしまって不発。当然お客さんも「え~、なんだよ~」と失笑。大森、そこなんだよ! 今まで何度もスターになるチャンスを掴めなかった理由は。体も大きく均整が取れていて、年齢の割には体も締まっている。でも、決めるところで決めないと、お客さんは声援を送るタイミングと意欲を失ってしまう。これがレスラーへの信頼感や人気になるわけで、そうやって大森はスターになり切れなかったのだと改めて思った次第。最後も浜ちゃんに投げっぱなしジャーマンでKOされて、ケアを救出できず。う~ん、またも気合が空回りしただけだったか。

セミファイナル前に6.19両国でプロレスデビューして船木誠勝と対戦するK-1ヘビー級王者・京太郎がリングイン、意気込みを語る。しかし、時代は変わったものだ。90年代後半から2000年代前半にかけて、プロレスラーが格闘技のリングに上がって挑戦表明したものだが…。人気と経済状況が密接にリンクする宿命ゆえ仕方ないとは思うが、一方で観客減少が顕著になってからも潰れずに興行を続けているプロレスの粘り強さを改めて感じる。これは大いに誇るべきことだ。

さて、そのセミファイナルでは船木が鈴木みのる、KAIと組んで、グレート・ムタ、KENSO、TAJIRIと対戦する6人タッグマッチ。見所は世界タッグ戦を闘うムタ・KENSOのコンビネーションなんだろうが、そんなことよりとにかくバランスが良く面白い試合だった。KENSOのぶっ壊れ感。ムタ、TAJIRI、みのるのプロレス頭とセンス。船木・KAIの不器用さが見事に融合したと言うか、まぁみのるとTAJIRIに尽きるような印象だった。
昨今、SMASHで獅子奮迅のTAJIRIは、団体を動かす立場ゆえその魅力をなかなか発揮できていない様子だが、この日のTAJIRIはまさに「TAJIRI」。全身の神経を極限まで敏感にして、動きやしぐさ、技を出すタイミングや表情まで、一挙手一投足すべてで「TAJIRI」を見せている。それにムタも呼応。KENSOもエキセトリックなキャラを伸び伸びと発揮し、その3人をみのるが受けきり、闘いのモードにするときには船木とKAIがリングインする。結果は疑惑の3カウントでKENSOが取られたが、この試合に限っては全く問題なし。武藤が掲げるファンタジー・プロレスの面目躍如。勝負論とは違う、プロレスにしか出来ない世界観の表現。さすがは役者が揃った豪華カード。文句なく楽しめた一戦だった。

そしてメイン。三冠戦とアジアタッグ戦の前哨戦をまとめてしまったことで、極めて珍しいタッグチームが実現した試合。新日本の永田裕志、大日本の関本大介・岡林裕二 vs 全日本の諏訪魔、征矢学、真田聖也の6人タッグマッチ。
試合の軸は三冠を闘う永田と諏訪魔、アジアタッグの関本・岡林と征矢・真田で主に展開したが、それでも流れの中で諏訪魔と岡林、永田と征矢など興味をそそる対戦も見られた。中でも、もっと見たかったと思うのは諏訪魔と関本か。そのゴツイ体のぶつけ合いをもっと見たかったし、次を楽しみにさせる対戦だと思う。それでも一番目立ったのは、やはり永田だった。関本と対峙した諏訪魔は大きく見えるのだが、永田と対峙するとグリーンボーイに見えるから不思議だ。
とかくプロレスは「格」を重んじ、それに反発する団体やファンも過去にはいたが、選手から滲み出てくるオーラを「格」とするならば、それはいかんともしがたい。実際、いちばん大物感を漂わせていたのは永田なわけで、三冠王者の諏訪魔は、だからバックドロップやマイクで挑んだんだろうが、それすら永田に軍配が上がる。第三世代と呼ばれた彼らが新日本の屋台骨を支えていた時、個人的には全然面白いと感じなかったが、今の永田は面白い。その面白さが最高潮に達したのは、バックドロップ・ホールドで決めた試合後のマイク。「本日は全日本のためにご来場ありがとうございます。両国まであと1週間、激動の全日本プロレスを僕と関本と岡林、この3人が軸となって盛り上げていくので、皆様、ちゃんとチケットを買って両国へ来てください」と言った後に、「それでは、一緒にやろう」と三人で敬礼ポーズ。ここまでくると痛快だ。こういう図々しく楽しい永田ならまた観たい。

不本意だったとは言え、不幸な事件が起こってしまった以上、新たな闘いの図式を描いて進むしかない。ヒール対ベビーフェイスという最も分かりやすい、一方でベタな構図から抜け出し、どんなプロレスを今後見せてくれるのだろうか? 選手が多すぎたゆえに持て余し感があったが、見た限りブードゥーなくても十分やっていけると思ったし、個人的には先月より断然面白かった。今後はいよいよ団体のプロデュース能力や選手個々の力量が問われるだろう。
馬場さんが立ち上げ、天龍さんが離脱し、その10年後に三沢さんたちも離脱。約10年ごとに節目を迎える全日本プロレスの四度目(?)の旗揚げ、その行方は?



試合結果はこちら
http://www.all-japan.co.jp/schedule/tour03.php?taikai_id=157

Best of the super Jr.xviii by megane1964


熱闘!後楽園-megane1964  飯伏幸太は何種類の飛び技を披露しただろう。バミューダ・トライアングル、ムーンサルト・ムーンサルト、フェニックス・スプラッシュ、シューティング・スター…。ちょうどこの、べスト・オブ・ジュニアの開幕戦でも書いたけど、飯伏のムーンサルトは、本当に美しい。滞空時間が長く、最高到達点が高く、180㎝の筋肉質の肉体が、本当に優雅な弧を空中に描く。と、ここまで書いたらおわかりだろう、今年のこの大会を制したのは、飯伏幸太その人である。準決勝、決勝と、その魅力を十二分に発揮しての戴冠であった。


 東日本大震災後、どん底の景気にあえぐ首都・東京だが、とはいえ本日は五・十日(ごとうび、と読んでね)の金曜日。道路はそこそこ混んでいた。一応はサラリーマンであるワタクシは、仕事が午後6時半まで終わらず、明らかな遅刻。「何とか準決勝には間に合いますように」とタクシーに飛び乗り、黄色いビルを目指したのだった。


 幸いなことに、午後7時ちょっとすぎ、後楽園ホールの指定席に駆け込んだ時は、まだ第二試合の途中であった。ホッと胸をなでおろしつつ、ヒートアップしつつある会場の雰囲気を全身で感じる。北側の上にスクリーンをつっただけのフルセットのホールはまさに超満員。バルコニーにも人があふれている。さすがスーパージュニアのファイナル。久々だ、こんなに盛り上がる後楽園は。


 全部で8試合が組まれていたのだが、とりあえずスーパージュニア関連を。第三試合、つまり準決勝の第一試合は、グループB首位突破の飯伏とグループA2位突破のデイビー・リチャーズ。DDTvs外国人、つまりは“外敵”同士の対決である。両者ともに気合は十分。肘のたたきこみ合いから試合はスタートする。


 ちょっとラフだけど、スピーディーでパワフルなデイビーは、初戦でプリンス・デビットを破った試合も見たが、なかなかいいファイターである。とはいえ、相手は新日マットでも今や大変な人気者の飯伏。思いっきりブーイングを浴びている。とりあえず飯伏を場外にたたきだしたデイビーはトペを敢行。まずは主導権を握るのだが、徐々に飯伏のハイパー・レスリングのペースに。パワーボムをフランケンシュタイナーで切り返した飯伏がフェニックス・スプラッシュを決めて3カウント。決勝進出を決めた。


 準決勝のもう一試合は、田口隆祐(Bブロック2位)vsプリンス・デビット(Aブロック1位)。「アポロ55」の名前でタッグを組む2人の対戦である。まあ、そんなわけで、リング上で握手を交わした2人の試合は、非常にフェアで友好的な、スポーツライクなものであった。ブランチャーだとか、トペ・コンヒーロとか、お互いに華麗に飛び合い、丸めこみ合戦の末、田口が勝利。というわけで、決勝は飯伏vs田口。初日と同じカード(このときは田口勝ち)になったのだった。


 で、決勝。IWGPのジュニアタッグで何度もベルトを争っていることもあり、お互い手口は知り尽くしている。必要以上に気負うこともなく、また警戒をしすぎることもなく、自然なリズムで試合に入っていく。まずペースをつかんだのは田口。場外にたたきだした飯伏にトペ・コンヒーロ。ストンピングで痛めつけて、主導権を握る。だが、飯伏も持ち前の運動神経で、すぐに状況を逆転させる。場外に出た田口に、バミューダ・トライアングル。さらにミサイル・キックから蹴りの連打で、試合の流れを引き寄せる。


 飛び技、打撃、スープレックス――、この後は、お互いに大技の応酬。フェニックスを受けた田口が何とかフォールをのがれたり、ラリアットを食らった飯伏が2・5で肩をあげたりと、一進一退の攻防が続く。消耗戦の末、雪崩式のブレーンバスターが崩れ、両者顔からマットに落ちた後、パワー・ボムで田口をたたきつけた飯伏が、これまた非常に美しいフェニックス・スプラッシュ。会場の「ワン・ツー・スリー」の大合唱とともに、勝利を決めた。


 一昨年のスーパージュニアでベスト4、昨年は怪我しながらも準優勝、今年の飯伏はIWGPジュニア王者のデビットと並ぶ、優勝候補の最右翼ではあった。だからまあ、決して意外ではないのだが、それでもこの優勝の持つ意味は大きい、と思う。


 ライガー、初代タイガー、金本など、優秀な選手をそろえた「ジュニア王国」の新日本が、インディー団体DDTの飯伏に「現代マット界のジュニアのトップのひとり」と、改めて太鼓判を押したのだから。表彰式の後のインタビューで、「IWGPジュニアに挑戦したい」と飯伏は改めて表明したが、現王者のデビット、満員の観客、そこにいるレスラーたち、だれもがそれを当然のこととして受け止めた。


 少し前までは、運動神経はスゴイけど、少し細身で迫力に欠けるなあ、と感じていた飯伏の肉体は、「このままいけばヘビーターンもできるのでは」とさえ思うほど鍛え上げられていたし、何よりも全身から自信と充実のオーラが出まくっていた。初期DDTのしょっぱさを見ている者としては、「こんな選手を生み出すまでになったのか」と感慨すら覚えてしまうのである。


 「鈴木ミノル軍」のTAICHIとTAKAみちのくが「風になれ」で入場して、小島・真壁とタッグ戦を行ってみたり、IWGPヘビーの前哨戦として棚橋、永田と後藤、本間が試合をしてみたり。実は結構、他の試合も面白かったりしたのだけど、今回の主役は飯伏。遺憾ではあるが割愛させてもらう。サスケ、ライガー、金本という「中年ジュニアの星」たちに四代目タイガーが加わり、邪道外道、フジタJr.ハヤト、石井と対戦した8人タッグでは、相変わらず金本とハヤトがバチバチやっていて、個人的には楽しめたんだけどね。結局、8試合で約2時間半。本当にスーパージュニアは、サクサク進行していい。


 試合結果は、後でこちらを見てください。http://www.njpw.co.jp/