昨日バロック・ピッチでフルートを吹く、という貴重な機会がありました。
リコーダーを吹く友人のおさらい音楽会で一緒に吹くことに誘われたのです。
たて笛とよこ笛がコラボする、テレマンの「リコーダーとフルート・トラヴェルソの協奏曲」という珍しい曲でした。
いろんな楽器が集まる合奏のときに音合わせをしますが、現代(オーケストラでの音合わせ)のピッチは442ヘルツです。
そしてバロック・ピッチなるものは、415ヘルツ。ほぼ半音に近く音程が違う感覚です。つまりテレマンやバッハが生きた300年前頃と比べると現代は半音近くテンションが上がっているのですね。
私はトラヴェルソ(古いよこ笛)の代わりに現代フルートのジョイント部をぎりぎり引っかかってる位に抜いて、つまり管を長くして、415ヘルツに下げてやってみることにしました。現代フルートでそんなことにトライする人は滅多にいないらしくリコーダーの先生もチェンバロの先生も驚いていました。そう、現代フルートは442ヘルツ仕様ですからそもそも無理があり、音程のバランスが崩れ音色もコントロール感も全く変わってしまうのです。少しこもったような息の多い音になり、何だか入れ歯がないときの喋りのような!?フガフガした感じになり、フルートがとっても下手くそになったような感覚に襲われます。
しかししかし!・・・それに耐えて練習すると、このフガフガした感じがテレマンの頃の曲のふんいきに合った、得も言われぬ味を醸し出すわけなのです。
その音楽会は442ヘルツの前半と415ヘルツ(バロック・ピッチ)の後半とに分かれていました。聴き比べてみると、やはりバロック・ピッチの方がリコーダーとチェンバロの音楽に一体感があるのです。その音楽の世界観が味わえるというか、ある特別な音楽空間ができるのですね。そこからその時代の空気感、その時代の人が持っていた意識が透けて見えるようでした。現代人のようには自分のなかに音楽を取り込んでいないというか、・・・もっとすなおに音を外に放していく感覚です。あるいは聴いていると音楽がまわりの空気を動かしている感覚です。
テレマンやバッハ等バロック時代の人々は現代人よりは音楽をもっと外側との関連で感じていたのだろうと思いました。今でいう環境音楽的だったり神と人間との関係だったり。
その音楽にふさわしい響きを追求し求めていくと、自分には新しい世界が開ける・・・という本当に貴重な体験でした。