チシマザサの開花・結実とネズミの大発生 | 手稲山・発寒川からの手紙

手稲山・発寒川からの手紙

北海道の野生動物や自然の状況についてなど手書きの絵などによって詳しくお伝えします。

は 古い書物にも、国内の、竹・笹の大面積、一斉開花・結実によって、ネズミ大発生が起きたという記録があり、これと関連して起きた社会的混乱も、開高健『パニック』などの小説などにも数多く書かれている。
しかしながら、ササの結実量やネズミ数の変動を測定した資料はまったく存在していなかった。

 アジア・太平洋戦争が敗戦で終わった日本では、戦後、復興のため、大量の木材が必要であった。
それゆえ、北海道の天然林が大面積に伐採された。
この跡地には、本州産のニホンカラマツが“拡大造林”された。ところが、草食性エゾヤチネズミにより激しい樹皮食害を受けた。
このため、「野鼠研究室」が農水省の林業試験場に新設され、私はここに就職した。

 研究室が、野ネズミ類の生態と防除法の研究を続けていた昭和50年に、空知・石狩管内で、チシマザサ(食用タケノコのネマガリダケ)の、大面積の開花・結実・枯れ死が起こった。
このため、研究室の我々は、それまで続けて来ていた全道的なネズミとササの調査とともに、研究室の所在する札幌市の羊ヶ丘の実験林内で、ササ枯れとネズミ類の個体群変動との関わりを詳細に調べることができた。
(なお、この経験は、研究室員が参加したその当時のNHKテレビ“ネズミ騒動”でも放映された。)




手稲山・発寒川からの手紙 No.28 2020年1月12日発行