『セッション』感想。教鞭を振るうという事。 | まじさんの映画自由研究帳

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この映画を観終わった後、頭の中は…


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こんな感じ…。

劇場を出た後、30分は呆然としてた。どこを歩いたのか覚えてないが、隣の駅まで歩いてた。
頭の中で、ずーっとドラムが鳴り響いていた…。


『セッション』…そんな生温いタイトルではなかった。
まさに鞭!“Whiplash”だった。
なんとスリリングな「キャラバン」!心臓が64ビート鼓動する、号泣した。このサウンドは、劇場で体験するべき鼓動だ!
今年見た映画の中では、ぶっちぎりでNo.1だ!


この映画で描かれる音楽は、いわゆる我々の知る演奏ではない。
音楽コンクールの演奏である。名門音楽大学の名門クラブは、コンクールに優勝する事のみが存在意義となっている。難易度の高い曲が課題曲として選ばれ、合奏の中でのミスを審査員によって減点式で採点される。観客は、審査員とスカウトマン以外は、ほぼ出演者の親族のみ。音楽を楽しく聴くような環境ではない。オイラも小学生時代、器楽部に入部してトランペットを吹いていた。超おっかない先生にシゴかれ、夏休みは冷房のない体育館で、汗だくになって毎日練習に明け暮れた。変な音を出そうものなら、容赦なく指揮棒が飛んで来たものだ。上達しない者が脚を引っ張ると、仲間から嫌われ者になってしまうような、重たい空気もあった。間違いなく、運動部よりも厳しい文化部だった。
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また、社会に出て、舞台音響の仕事を始めた時の師匠もスパルタだった。文字通り殴る蹴るで育てられた。仕事中に発言する言葉も「はい」と「すみませんでした」以外の言葉は必要ないと言われた。「アレやれ」「コレやれ」と言われれば出来なくても「はい」やってみてできなければ叱られて「すみませんでした」となる。そうやって精神力を鍛えられた。
そんな訳でこの映画は、オイラにとっては、ツライ思い出を呼び覚ます強烈な映画だった。

「教鞭」という言葉の本当の意味を再確認させる一本だった。
フレッチャー先生は、まさに「教鞭」を振るう教師だ。
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スパルタ教育は今でこそ批判されるが、この映画はスパルタの大切な部分をしっかりと見せていた。スパルタ教育でなければ生まれない精神がある。怒るのではなく叱るのである。スパルタの大切な所は、悔しがらせる事だ。人は挫折して這い上がる事で成長する。這い上がるには、落とさないと上がれない。頂点を超えるには、尊敬だけではダメなのだ。泣いて、悔しがる事。そして、それを克服するには練習あるのみだ。
「褒めて延びる」と言うが、マニュアル通りの事を教えるのならそれでいい。誰でも出来ることを教えるやり方だ。だが、それでは頂点を超える事はできない。
エゴで怒るのではない。叱る方も、相当なエネルギーを使う。だから、誰彼構わず叱ったりしない。見込みのある奴ほど叱るものだ。

「怒られてる内が華だ」と、よく先輩に言われた。細かい事で理不尽に殴られた。何度、師匠を殺してやろうと思ったかは、数知れず。だが、それでも叱られなくなるよりマシだった。叱られなくなった時は、認められてイッパシになったか、見捨てられたかのどちらかだ。何度も殺意を抱いた師匠だが、今ではとても感謝している。仕事のテクニックを教わったと言うより、生き方を教わった。
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この映画では、生徒の目線で描かれているが、オイラはアンドリューの気持ちもよくわかるが、それよりもフレッチャー先生の方に感情移入してしまった。よく見ると、教鞭を振っている時の彼は、エゴで怒っているのではない。成長を促す叱り方をしている。全くブレない彼の教育信念は、一流のアーティストを生み出すという強い意志に裏付けられていた。

耐える事が出来ない若者が増えた世の中で、今、再びこういう教育が必要なのではないか?と考えずにはいられない。「ゆとり」が悪いとは言わないが、全てが画一的な「褒める教育」でいいのかと、疑問を持ってしまう。現代の教師は、もっと信念を持って教鞭を振って欲しいし、モンスター・ペアレンツは、黙って教師を信頼して欲しいしものである。
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大好きな曲「キャラバン」で、あんなに泣けるとは思わなかった。
ラスト10分の素晴らしさは、震えた!
サノバビッチなモンスター・ペアレンツどもは、この太鼓の鼓動を聴きやがれ!!

あっ。また聴こえてキタ…

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