最初は模倣でいいじゃない | ラーメンプロデューサー「イソベ」のblog

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先日、渡辺樹庵氏とYoutubeでトークをしたときに感じたことがあるので、今回はそのお話。

 

渡辺樹庵のここだけの話

↑※このチャンネルにちょくちょく出て色々語ってます♪

 


そのトークの中で

「最近の店はどこかの真似ばかりでつまらない」

なんて話題がありました。


そして

「名店といわれているお店は別格」

なんて話にもなりました。


ただ、これだけを聞くと勘違いされそうなこと、本当に自分が思っていることがちゃんと伝わらないと思ったので今回コラムにしてみました。






最近のお店で多いのが

鶏水系

などと称される、鶏素材だけでスープを作り、生揚げ醤油などを使って鶏の旨みと醤油の旨みだけで仕上げた味。

これを作り上げたのは「ロックンビリーS1@尼崎市」の店主の嶋崎氏であり、このラーメンはこの方が祖とする味というのはご存知のとおり


さらに最近では

昆布水つけ麺

イノシン酸主体の鶏スープにグルタミン酸主体の昆布水を麺に絡ませて、つけ麺にしたときにうま味の相乗効果になる…というつけ麺。

こちらも嶋崎氏が作り上げた逸品で、現在はこのスタイルでつけ麺を提供しているお店も数多くありますよね。


他にも「支那そばや」佐野氏の厳選素材を重ねて作る形や、「魚介豚骨」「二郎」「家系」など、現代の主流の味の祖となる人、お店が多々あります。

自分も古くからのラーメンファンの一人なので、やはりこれらの方々にリスペクトを持って欲しいし、単に真似だけをしているお店は好きではありません。



しかし、自分はその元になっている味を真似すること、モチーフにすること自体は別に悪いことだとは思っていません。

これらの味はこの数十年の間に出来た形とはいえ、もうラーメンを作る上での一つの大きなジャンル、手法になっていると思うからです。

極端な話、「和食で一番出汁を使わないで作れ」「イタリアンでオリーブオイルを使わないで作れ」と言われているようなもんですw

 

 

そして、これらの味は一つの形として完成されているので、確かな技術で同じように作れば美味しいし、人気はあるし、売れる味でもあるわけです。

 

それを模倣するのは当たり前のこと。

これはラーメン以外のジャンルでも「モノを売る」という業態であればどこにでもある形だと思います。

 

そして、そうやって模倣した味で人気になっている店は多々あります。

 

 

 

しかし、そういう模倣から入った味でも、名店と言われている店は

 

どこかにその人、その店のこだわりがある

影響を受けた店へのリスペクトがある

 

と感じることが多いんです。

 

 

鶏水系をやろうが、家系をやろうが、二郎系をやろうが、単に真似するだけでなく、こういう「思い」的な部分が見える店はしっかりと食べる側にも伝わります。

 

そういう模倣や影響されているお店でも、やはり基本軸はその作り手の思いや考えがあって、修行先があればその修行先の基軸をしっかり踏襲して、リスペクトを感じる店が名店として存在しているように思います。

 

 

 

 

ちなみに自分のやっていた店も基本的に参考にした店、影響を受けた店や味は沢山ありますし、沢山の模倣をしてきました。

 

一番最初に出した「麺や 優」のメイン商品は「塩ラーメン」

味的には素材のうま味を重ねた味にしたかったので、「ひるがお」さんや「支那そばや」さんの影響は受けていますし、平打ちタイプの麺を合わせたのは「ひかり/光」さんが当時提供していた平打麺の塩ラーメンが好きだったから。

 

それでも、味の組み立て的には全然違うラーメンでしたし、自分なりの考えで味づくりをしていました。

 

次に出した「音麺酒家 楽々」では、当時は魚介豚骨系が全盛期だったので、その系統のラーメンを作りました。

 

なので「青葉」「渡なべ」「六厘舎」さんなどの影響はありますが、その中で違うモノを作ろう!という思いで作っていたので、鶏と野菜のベジポタ白湯に鯛煮干と干し海老の出汁の魚介白湯…という当時は他に無い組み立てで作りました。

 

その後出した「ラブメン」「ラーメン 二郎 吉祥寺店」のインスパイアでですし、「肉煮干ラーメン」「凪」さんや「長尾中華そば」さんのガッツリ煮干系と「二郎系」を組み合わせたハイブリッド的な形で産まれたラーメンです。

 

もちろん、これらの影響受けたお店は大リスペクトしていますし、普通に模倣したと公言出来ます。

 

他にも色んな限定商品を作ったり、プロデュース商品を作ってきましたが、どこかに影響を受けた味は沢山ありますし、インスパイアも色々作りました。

 

しかし、その中で自分なりの考えと自分なりの味を取り入れたつもりでいますし、参考やモチーフにはしつつも、自分なりの味を作ろう!という思いでやっていました。

 

 

自分の弟子の「中華そば しば田」くんもそう感じます。

「中華そば」は嶋崎さんの影響を受けてると思うし、「煮干そば」「圓」さんの影響を受けてると思います。

 

彼はそこにリスペクトを持って自分なりの味を作りあげていったので、影響は奥底に感じつつも、彼のセンスで仕上げたオリジナルの味になっていると思います。

※自分の影響をあまり感じないのは悲しいトコですが…ww

 

 

 


なので、自分は模倣やインスパイアと呼ばれるモノは全くダメとは思わないんです。



個人的に違和感を感じるのは

 

明らかに影響を受けている、模倣しているラーメンを、あたかもその店のオリジナルのように言い放つお店

 

…のことです。

 

 

そういう絶対的な元祖や基軸になる店の影響を受けているはずなのに、真似をしているはずなのに、リスペクトを感じられないお店。

 

自家製麺の粉の配合を考えたからオリジナル?

違う素材や調味料を使っているからオリジナル?

鶏だけじゃなく他の素材も入れているからオリジナル?

昆布水に他の出汁を入れていればオリジナル?

二郎系で豚以外も使っているからオリジナル?

家系のスープの作り方とは違うからオリジナル?

 

そういうことなんでしょうか…

 

 

ぶっちゃけ、ここ10年ぐらいの間に出来たお店で完全なオリジナル商品の店なんて、皆無ぐらいに自分は思っています。

 

もちろん、自分なりに考えて、試行錯誤して出来た味は沢山あると思っていますし、その基本にある味を自分なりに進化させたオリジナルの商品は色々あると思います。

 

 

ただ、そこにはほとんどの場合、様々なラーメンの形を作ってきた先駆者の方々の存在があるはずで、そのいう方々が作り上げてきた味を進化させてきたのが現在のラーメンだと思うんです。

 

そういう方々へのリスペクトを感じられないお店に自分は違和感を感じてしまうし、いくら美味しくても心に響いてこないんですよね…

 

 

 

いつだか炎上したテイクアウト専門店も、そこにリスペクトと配慮があれば炎上などなかったはず。

 

だってその味のインスパイア店なんて全国各地に多数存在してるわけですから…

 

 

 

 

 

模倣であっても店主さんの作りたい味、思いが見える店、素晴らしい店は沢山あります。

 

そういうお店はやはり心に響くし、名店として今後も存在し続けていくと思います。

 

 

その渡辺樹庵氏のYoutubeの中で、某店の店主さんのインタビューの中で話していて心に響いたのが

 

「リスペクトしている方を追いかけている姿がオリジナルになっている」

 

という言葉。

 

そのお店はまさにそのリスペクトが多くの方に伝わっていると思いますし、その姿がその店のオリジナルだと感じられるわけです。

 

 

 

 

 

最初は模倣でもいいと思います。

 

というより、今は模倣からでなければラーメンの味なんてほぼ作れないと思うし。

 

完全な独学で、何の先入観も無く自分の調理経験や技術のみで作り上げたラーメンも中にはあるでしょう。

 

しかし、そこには何かしらの先駆者の方々が作り上げてきたモノが沢山詰まっているはず。ここまで進化してきたラーメンは本当に多くの方々の努力が詰まっているんです。

 

 

そして、修行したり、アドバイスをもらってお店を始めたのであれば、いくら修行先とは違うラーメンを出していようがリスペクトを持って欲しいし、感謝を持ってもらいたい。

 

影響が受けた味や店があるならそこにリスペクトを持ってもらいたい。

 

そういう店の思いは食べる側にしっかりと伝わります。

 

ただのパフォーマンスはいつか露呈します。

 

 

 

 

 

こういうことを書くと古くさい人間だなぁ…なんて言われるかもしれないですが、そうです。自分は古くさい1人のラーメンのファンなんですw

 

自分のモットーである「ラーメンの楽しさ、面白さを知ってもらう」

 

それをやっていくには、こういう部分は常に持ち続けていきたいと思っています。