日韓合意に対して、安倍総理は世界に向かって説明を行え! | 岐路に立つ日本を考える

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 私は日本を世界に誇ることのできる素晴らしい国だと思っていますが、残念ながらこの思いはまだ多くの国民の共通の考えとはなっていないようです。
 日本の抱えている問題について自分なりの見解を表明しながら、この思いを広げていきたいと思っています。


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 昨年末の慰安婦に関する日韓合意について、何かと正当化を試みる論壇があります。その論拠は海外の多くの国を日本の味方に引き入れることができた点では評価できるというところだったりします。

 しかしながら、今回世界各国が日本を評価しているのは、今回日本が忌まわしき性奴隷制度を軍関与のもとで行っていたことを認め謝罪したと認識している点であるということを、私たちは正確に理解する必要があります。例えばオーストラリアのビショップ外相が出した歓迎声明には、The widespread use of sexual slavery brought great suffering and personal trauma to many women during the wartime period.(性奴隷の広範囲な利用は戦時中に多くの女性達に多大な苦しみとトラウマをもたらした)との一文が入っています。この理解で決着がついたというのが海外の認識であるわけです。
http://foreignminister.gov.au/releases/Pages/2015/jb_mr_151229.aspx

 さらに、従来の荒唐無稽な20万人という数字がいつのまにか40万に引き上げられていたり、10代前半の処女をかき集めて慰安婦として駆り出したとされたり、さらに話は膨れ上がってきています。外交的に成功どころか、大失敗ではないでしょうか。

 勘違いしてはいけないのは、慰安婦像を建立しているのは韓国政府ではなく民間団体であり、韓国政府が大使館前の公道にある慰安婦像を撤去させたとしても、その他の場所にある慰安婦像についてまで韓国政府は口出しできないわけです。世界中で慰安婦像を建設する動きがありますが、今回の合意が勘違いされたままでは、この動きが加速することはあっても、やむことはないでしょう。

 さて、この問題にどう立ち向かうべきかです。私は安倍総理が今回の合意に関する説明を、日韓合意に反しない形で、しっかりと行うことが重要ではないかと考えます。例えば、以下のような説明を安倍総理の名前で文書で公表することを提案します。

 今回の日韓合意には多くの誤解が広がっています。日本が誠実に謝罪しているにも関わらず、今回の合意について韓国国民の多くは未だに反対の立場を表明しています。このあたりの事情は非常にわかりにくいところなので、日本政府の立場からご説明いたします。
 戦時中の慰安婦の数は1万5千~2万人、そのうち6割程度が内地人で、朝鮮半島出身者は2割~3割程度と推計されています。当時の慰安婦は新聞広告などを通じて広く募集され、ここにビジネスチャンスを見出した業者も活発にリクルートに動いていました。当時の日本には貧しさから娘をこうした業者に売る人身売買的行為が合法とされ、こうした業者に娘が売られるという事態も発生していました。この中で、親が事情をろくに説明しないまま娘を業者に売り渡してしまった事態や、悪徳業者が嘘の説明で娘を連れて行く事態も発生しました。
 日本政府と日本軍は戦地での強姦被害等が発生しないようにするためには慰安婦が数多く必要であることを認識していたので、こうしたリクルート活動についてバックアップしていたことはありますが、朝鮮半島でリクルートをする段階で日本軍が強制的に女性を連れて行った事例はないというのが、日本政府の見解です。
 慰安所は民間業者が運営していましたが、その運営のあり方には日本政府と日本軍は非常に大きな関与をしました。一日の労働時間に規制を設けること、週に1日は休息日を設けること、性病検査を軍医が実施すること、体調不良の際には休ませること、適切な避妊法の指導を行うこと、取りたくない客は拒否できる権利を慰安婦に認めること、十分な手取り額を得られるように業者の暴利を規制すること、借金の返済が終了した後は故郷に自由に戻れるようにすることなどを、軍の監視と管理のもとで行っていました。
 慰安婦たちは十分な給与を得ていました。アメリカの戦争情報局の報告書(Report No. 49: Japanese Prisoners of War Interrogation on Prostitution)によれば、慰安婦は1ヶ月におおよそ1500円の売上を上げ、おおよそその半額を天引きされ、手取りは750円程度であったとされています。当時の日本の二等兵の給料は月額6円程度でしたので、平均的にはその百倍以上の給与を稼いでいたということになります。
 しかしながら、敗戦後に、そのように稼いだお金が水泡として消えるという事態が発生しました。文玉珠さんは日本の郵便局を相手に、当時日本の郵便局に預けた26145円の貯金を返せという訴訟を提起して、敗訴しています。これは終戦直後の1946年に日本が必要にかられて預金封鎖を行ったためです。この処置は日本の金融機関にお金を預けていた人たち全てに適応されたもので、特定の人たちを狙い打ちにしたものではありません。そのために彼女は敗訴したわけですが、文玉珠さんをはじめ慰安婦の方々が受けたショックの大きさには同情を禁じえません。
 日本政府が豊かな暮らしを当時実現できていたなら、意に沿わずに慰安婦とならざるをえなかった女性たちはずっと少なかったでしょう。それは当時の貧困を解決できなかった日本政府の責任でもあります。また、当時の日本軍があれほど大きな戦争を戦わなければ、意に反して慰安婦とならざるをえなかった女性はずっと少なかったでしょう。預金封鎖によってせっかく稼いだお金の大半を失うことになった慰安婦の方々の悲痛な思いも、日本政府は出来る限り受け止めたいとの思いを持ち、これまでも誠実にこの問題の解決に当たってきたと考えております。
 しかしながら、こうした点の事実認識においては、韓国側とは大きな隔たりがあります。この隔たりを取り除くことが現実には不可能だと考えられるため、この隔たりの存在を認めたうえで、日韓両政府は双方を非難しあうようなことを今後一切行わないようにしようというのが今回の合意の真意です。韓国の国民の側からすると、今回の合意でも日本政府は確かに表面的には謝罪はしているけれども、軍による強制連行の法的な責任を認めていないので、この合意には賛成できないということになるのも理解できるかと思います。
 この文書が慰安婦問題の理解に資することを期待しています。


 上記のような文章であれば、韓国側の見解が間違っていると非難しているわけではないですから、日韓合意には違反しないはずです。こうした文書を発信することを、安倍総理に求めます。



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