美容医療機器導入のバランス:新旧織り交ぜて | 美容外科開業医の独り言

美容外科開業医の独り言

美容医療とは人間愛!という信念で仕事をしている美容外科医のブログです。
レーザーなど最新の美容情報や普段の診療で感じたことなど、ぼやきを交えながら書いていきます。
外見だけではなく心も綺麗になり、自信が湧いて幸せになれる、そんな美容医療を目指しています。

前回のブログでも書きましたが、たるみ治療の高周波機器テノールを新型に買い替えました。
旧型と比較して、基本的理論は全く同じであり、旧型は何も問題なく稼働していましたが、新型のエネルギー効率の良さや熱到達深度の素晴らしさから買い替えることにしました。肌表面温度の41℃程度への上昇も30秒もあれば可能であり、この深部加熱タイプの機器では現在世界で最も優れていると思います。日本第1号機です。
その他にも地味ではありますが、赤い色に反応するレーザーのスタンダード、Vビームという機器も買い替えました。Vビームパーフェクタという最新機種です(これは我が国でも既に幾つかの医療施設で導入されています)。パーフェクタは小ジワの改善にも用いられていますので、シワ治療に新しい選択肢が増えました。このVビーム、本来は赤あざ(血管腫)が主たる治療適応です。現在では保険で治療も可能です。しかし当院で導入したVビームパーフェクタは新型ゆえに厚生労働省の認可がまだ取れておらず、保険は使えません。赤あざは殆ど幼児の治療となりますので、当院の主たる患者様には保険適応できる旧型よりも、より機能が優れた新型のパーフェクタの方がメリットが多いと考えての入れ替えです(赤あざ治療にも従来型Vビームより優れていますし、保険の利かない美容目的にはもちろん新型パーフェクタの方が断然良い結果を出せます)。

そしてたるみ治療のHIFU(高密度焦点式超音波)機器ウルセラシステムも更新します。日本第1号機、商業目的では世界初導入という思い入れの深いこの機器も、稼働年数による経年劣化からリニューアルして頂く事にしました。導入当初は、機器理論に惚れて後先考えずに購入したのですが、今や世界的にスタンダードな機器となったウルセラシステムは、私の名前を世界的にも少しだけ広めてくれた機器です。

新しい理論の面白い機器だけを追いかけるのは、患者様のためでもありますが、やや自己満足的な要素が強くなります。業者さんとの癒着も強くなります。「世界最新だから良い」というのは正しくないと思っています。新しいものだけを追い求めると、一時的に仕事は上手くいくかもしれませんが、トラブルを生じたり、結局は長続きしません。学術的データをきちんと取った上でゆっくりとかつ確実に理論や臨床を構築していかなければいけません。

もちろん従来からある機器だけを経年劣化で入れ替えるだけでは美容医療の質は保てません。
そして機器だけに頼ってもまた、最良の美容医療はできません。注入治療なども必要です。
このあたりのバランスをしっかり考えて、最良の治療が出来るよう、ビジネスとはまた違った視点で美容医療に向き合うことが重要ではないかと思うのです。

私と同様に機器が好きな専門医の先生方は、同じようにきちんと考えて、新旧織り交ぜて機器を導入していますが、医師個々にその考え方は異なり、そのドクターそれぞれのスタイルを見るのも良いでしょう(例えば古くから親しくしているクロスクリニックの石川浩一先生と私のスタイルの比較をされると面白いと思います)。


都心で開業する美容医療のスタイルは様々です。機器、注入、痩身、毛髪などに特化していくほどに上記のようなことは重要であり、従来からあるものだけで診療しても患者満足度は十分ではなく、新しいもの、オリジナルをしっかり見いだせないといけません。しかし新しいだけだと時にリスキーだったり、奇抜だったり、的外れになります。そして特定の分野になるほど、医師の専門的知識が重要であり、海外情報を含めてどれだけしっかり勉強しているかです。それがなければ宣伝に頼るしかありません(その場合は長続きしないでしょう)。


重要なのは、当たり前ですが患者満足度であり、既に開業して10年以上経った今の私の方針としては、従来からおこなっている治療のブラッシュアップとしての旧型機の買い換えと、そして最新の治療のトレンドを作っていくこと、この両輪をバランス良くしていくことだと考えています。


今年も始まったばかりですが、今の当院の方針です。




イチからはじめる美容医療機器の理論と実践/全日本病院出版会

¥6,480
Amazon.co.jp