神谷ねこ×Theムッシュビ♂ト「Snow Graffiti」の話 | ムッシュ速報(Theムッシュビ♂ト公式ブログ)






https://allelosphere.reverse-real.com/



#Vtuberオリ曲コンピ」はVtuberプロジェクトのReverse Real様が企画運営を行なっているコンピレーションアルバムで、Vtuber150人くらいと作曲家150人くらいを企画内でマッチングさせ、オリジナル曲を発表するという企画で、今年が2回目の開催でした。1回目に知ってる方が何人か参加されてたので企画名は知ってました。


5月頃に参加者の募集があり、正直Vtuberにはあまり明るくなかったものの「面白そうだし今後のキャリアのために応募だけでもしてみようかな」くらいの気持ちで応募しました。62日に作曲家側の参加者発表があり、そのときに落選したという方もちらほらいらっしゃって、そのときにこの企画の人気を実感したというのが正直な印象です。


ペア相手はあみだくじで決められ、617日の生放送内で発表という流れで、その時が神谷ねこさんとの出会いでした。先述したようにVtuberには明るくなかったのですが、ねこさんはその時点でチャンネル登録18000人を超えており、漠然と「人気のある人なんだなあ」と思いましたが、楽曲の仮提供まで1ヶ月、遅筆な僕にとってはあまり時間はなく、ねこさんに送った挨拶のDMの返信が届くまでの間に数本の動画を見て、プロフィールをチェックし、コンセプトを固めました。


「ピンク髪の可愛くて元気な猫キャラ」というのが外見上の特徴でしたが、動画をいくつか見た時点で

・電波系ではない

・可愛さとクールさの両立

・気を衒わない正統派ポップス

というところまでは固まりました。リリースが10月末のM3なので「冬の歌」というのも早々に固まった気がします。動画内で、彼女がμ's推しのラブライバーであることがわかったので「アイマス曲というよりはラブライブ曲っぽくする」ことも決めました。


ここまでがDM返信が来るまでのことで、DMでの顔合わせのやりとりのときには既にこのコンセプトを話して快諾されました。


ありがたいことに、ねこさんもペア決定時点で既にサブスクで僕のアルバム「みんなでプリズムジャンプ」を聞いて気に入ってくださっており、根本的な音楽性の好みが一致していることが判明。そのあたりの不安はなくなり「いい曲を作ること」の1点だけを目指して走り始めることができました。


挨拶のためにペア決定翌日にアップしたイラスト




さて、「いい曲を作るだけ」という方向性は固まったわけですが、これはまさに言うは易しです。わかりやすいフックやネタに依らない直球勝負。とにかくメロと歌詞がいいものにならないと編曲でいくら頑張っても話にならないので、そこの作り込みに半月くらいかけました。


空き時間にはμ'sを浴びるように聞き、コードや曲の作りの解析を試みたりしていました。コンセプトにある「アイマス曲というよりラブライブ曲っぽく」はなんとなく感じるもので、理論的なものではないので、ここは感覚でいきました(どなたか音楽理論的に解説してくださるとありがたいです)。


歌詞について、最初に考えたことは「舞う雪って綺麗だけどスマホで撮りにくいよね」ってことで、「掌のスマートフォン夜空に掲げたけど」は最初からあったフレーズでした。それと「冬の歌だけど、歌い出しが夏だとインパクトあるし、時間的な広がりを表現できるよな」ということで、歌い出しに花火の光景を入れるのも最初に決めました。この最初に決めたことからどんどん膨らませていきましたが、恋の歌はだいぶ長らく書いてなかったので、初心に帰ったような気持ちでした。それもあって初恋のような初々しい歌詞になったのかもしれません。


今回一番頑張ったのはメロディ作りで、先述した通り半月くらいメロディのことを考えてた気がします。


通勤中に仮歌詞を歌ってはボイスメモに録音したり、無駄に自転車に乗って遠くに行ったり(自転車に乗ってるときによくメロディが降りるので)、スタジオで踊りながらアカペラで歌ったりと、思いつく限りのことをしてましたが、一番は「神谷ねこに似合うこと」なので、脳内で「Snow halation」みたいな衣装とステージで、何度もかみねこさんを歌い踊らせてました。「Bメロは切ない表情でゆっくりしたステップで、サビは一気に広がる感じで」みたいなイメージは脳内の映像が元になってます(その当時の6月下旬は既に猛暑日でしたが、冬の歌のことばかり考えていたので季節感がバグりました笑)。


今回意識した「Snow halation」


理論的な話を少しすると、サビの前半の進行は|E♭|Gm7|E♭sus4 onA♭|B♭ GonB| なのですが、3小節目でメロディをsus4の音程を通過させることで「印象に残るもの」にしています。


今回、7月中旬に「最低1コーラスだけの仮提出」があり、そこを中間締切として編曲も進めていました。サウンド面については「かみねこさんはピコピコ打ち込み系より生楽器メインのサウンドの方が好きそう」という傾向を掴んでいたので、ドラム、ベースの他はピアノ、ストリングス、オルガンでサウンドを組みました。ところどころでSEやシンセも入れてポップ感を演出してますが、基本的にはピアノとストリングスがメインです。それと、かみねこさんの紹介で、いんいんさんという凄腕のギタリストが参加することも決まっていたので、あとでギターが入ることも織り込んで作り込んでいきました。


メロディ作りの話に戻しますが、サビとBメロは完璧に決まり、Aメロもできている状態で中間締切を迎えました。Aメロはその時点ではもっとかわいい感じだったのですが、締切当日の夕方に仕事から帰ってるとき「Aメロ弱いわ」と気づき、帰宅してすぐにそのパートの打ち込みトラックを全消しして、メロディを0から書き直しました。我ながら思い切った決断でしたが、やってよかったと思います。


さて、中間締切が過ぎ(その時点でかみねこさんにも聴いていただいて、かなり好意的な感想をいただきました)、そこからは少しペースを落として、他の案件をやりつつ、編曲上の怪しい箇所の修正や、Cメロからラスサビの展開を詰めて、7月下旬にかみねこさんにフルバージョンのオケと仮歌を提出しました。ここからは一旦僕の手を離れて、かみねこさんの練習と録音の時間です。8月になってからは自分の作品作りを色々やってたと記憶しています。


この曲のプロジェクトがまた怒涛の勢いで動き出したのは8月中旬くらいからで、かみねこさんの歌うキーが確定してから、すぐにいんいんさんにギターの正式な発注をしました。いんいんさんには音にもフレーズにもあまり細かい注文を出してなかったんですが、ささっと「最適解」を送っていただいたので、やっぱりプロとしても活動してる方はすごいし早いなと思いました。このあたりはかなりいんいんさんに助けられたと思います。


その頃には、かみねこさんから毎日のように歌のテイクが送られてくるようになりました。歌のトラックが送られて「どうですか?」「ここはどう歌ったらいいですか?」「ここはこんな感じですか?」という質問攻めでしたが、強い意欲の表れなのでそれに応えるのは全く苦ではなく、一つ一つ細かく答えていきましたが、かみねこさんは次に送ってくるときには必ず言われたことを修正できてて、努力もすごいし飲み込みも早いなとほんとに感服しました。これまで一緒にやったボーカリストさんの中で、一番グイグイ来てたと思います(褒めてます)。


その後、かみねこさんから本テイク(ほんとに素晴らしかったです)が届き、ミックス作業に入りました。ミックスは僕が編集とラフミックスをして、いつもお世話になってるD-studioのパノピカ・エイジさんが本ミックスという流れでしたが、このあたりの作業で僕は自分のミックスへの甘さを痛感して諸々反省する出来事がありましたが、それも含めて大きな収穫になりました。この時のかみねこさんとのやりとりでも、彼女のこの歌への並々ならぬ熱量を感じました。僕は僕でこだわったところをぶつけたのでまさに「創作の殴り合い」でした(喧嘩や揉め事ではなく「創作の殴り合い」です。念のため)。


そんなあれこれを経て、ようやくマスタートラックが完成しました。大変なことは色々ありましたが、納得できる作品ができ、ほんとにかみねこさんとペアでよかったなと思いました。力を貸してくださったいんいんさんとエイジさんにも大感謝です。


その後の展開ですが、オリ曲ライブ匿名投票企画で上位入賞(投票ありがとうございました!)試聴動画公開、オリ曲コンピリリース、サブスク配信と、露出するたびに嬉しい感想が届いておりまして、ほんとに頑張りが報われた思いです。人生で初めて「弾いてみた」されたのもすごく嬉しかったですね。


あと、今回試聴動画では僭越ながらイラストも担当させていただきました。これまでデレマスのファンアートはたくさん描いてましたが、今回はいわば「公式絵」なのでこちらも緊張しましたが、オリジナル衣装のデザインをするのはとても楽しかったです(冬っぽさとかみねこさんらしさのバランスがこだわりポイントです)


試聴動画イラストラフから完成まで。









最後に、歌詞とコード進行載せておきます。サブスク配信も始まってるので是非フルで聴いてくださいね。



Snow Graffiti 




はじめての雪が降る

こころを一歩前へ


夏空に響いた大きな鼓動

君だけ見つめてた私

みんなで見上げた大輪の花火

はぐれてしまわないように


密かな想いを抱えたら

季節はいつもより早く巡り

気づけば木々は色を変え

私はそっとコートを下ろしたよ

Snow Graffiti


はじめての冬が来る

北風に胸疼く

私こんな寂しがり屋だっけ?

(会いたい)

「いま何をしているの?」

簡単に訊けたのに

なんかいまは上手くできない

恋をしている



鼻先にツンと冷たく薫る

秋の終わり 澄んだ匂いは

マフラーに収まらない髪のように

心から溢れそうだよ


人間(ヒト)は半分こ探している

それが君だったらいいのにな

焦がれる気持ちに重なるように

雪が心に模様描いた

Snow Grafiti


はじめての雪が降る

きらめきと高鳴りを

君に今すぐ教えてあげたくて

(届いて)

掌のスマートフォン

夜空に掲げたけど

やっぱ見たように写らないな

ここにいてほしい...


天気の神様の落書きは

無邪気に心かき乱す

いますぐ会いたい

同じ気持ちだったらいいな!


初恋と呼んでいい?

ときめきに嘘つけない


はじめての雪の夜

飛び出していった気持ち

「君にいますぐ、いますぐ会いたいよ」

(届いて)

はじめての雪が降る

こころが一歩前に

進んだ先に新しい世界


そこに君といる



Snow Graffiti

作詞作曲編曲/Theムッシュビ

Guitar Arrange/いんいん


Vocal.神谷ねこ

Programming.Theムッシュビ

E.Guitar.いんいん

Mix.パノピカ・エイジ(D-studio/ミンカ・パノピカ)




コード進行


BPM163



頭サビ(KeyE♭

|E♭|Gm7|E♭sus4 onA♭|B♭ GonB|

|Cm|Gm onB♭|A♭|B♭|


イントロ

|E♭|Gm7|E♭sus4 onA♭|B♭|

|Cm|E♭onB♭|A♭ E♭onG|FmonB♭|G|


Aメロ(KeyC

|Csus4|C|Cadd9onB|ConB|

|Am7|EmonG|Am onF♯|·/·|

|F|G|Edim|A|

F|·/·|G|·/·|


Bメロ(KeyE♭

|A♭|·/·|B♭ onA♭|·/·|

|Gm7|·/·|C|·/·|

|A♭|B♭onA♭|G|Cm|

|A♭|·/·|Fm7|Fm7onB♭|


サビ

|E♭|Gm7|E♭sus4 onA♭|B♭ GonB|

|Cm|Gm onB♭|A♭E♭onG |Fm FmonB♭|

|E♭onC|Gm7|Esus4onA♭|B♭ GonB|

|Cm GmonB♭|A♭M7 E♭onG|Fm7|Gm7|

|B♭7onA♭|


Cメロ

|B♭7onA♭|B♭7|·/·|

|Gm|·/·|C|·/·|

|B♭|C|Am7|D|

|Gm7|Am7|B♭|·/·|

|Gm7onC|N.C.|


落ちサビ(KeyF

 |F|Am7|Fsus4onB♭|C AonC♯||

|Dm|AmonC|B♭ |Fm7onB♭|


ラストサビ

 |F|Am7|Fsus4onB♭|C AonC♯|

|Dm|AmonC|B♭ FonA|Gm GmonC|

|FonD|Am7|Fsus4onB♭|C AonC♯|

|Dm AmonC|B♭M7 FonA|Gm7|C7|

|Fsus4|F|



記事公開後の追記


タイトルについて語るのを失念しておりました。タイトルの「Snow Graffiti」、意味は「雪の落書き」です。今回、意図的に語感を「なんてことのないポップス」っぽくしているんですけど、なんというか「歴史に残る名曲ってタイトル凝ってないもの多いよな」と思いまして。敢えてシンプルな語感の曲名にしているのはそういう意図です。シンプルなタイトルが聴く人にとってかけがえのない響きになるといいなという気持ちを込めています。