『Glory』 | リュウセイグン

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戦争の中の栄光


グローリー [DVD]/マシュー・ブロデリック,デンゼル・ワシントン
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勧められたので視聴。


素晴らしい映画だ。
戦争物というのは多数あって、その解釈もスタンスも多数有る。
批判的に描いたのも多いし、それは当然だろうと思う。
僕も戦争は嫌いだ。

だが同時にこの物語はとても貴重で、しかも戦争というものが無ければ存在し得なかった事もまた確かだろう。



黒人志願兵部隊の司令官に任ぜられた白人ロバート。
差別主義者ではない。むしろそれと戦う男達の話だ。
しかし兵士になるには訓練が必要であり、結果としてそれは黒人奴隷の再来のようにも見えてしまう皮肉。
ロバートの意図は「黒人を本当の意味で兵士として役立てること」だが、それ故訓練は激化、軍律の為に友人とも対立し、奴隷時代に鞭で打たれた傷を持つ脱走兵に懲罰として鞭打ちを科さねばならない。

この鞭打たれる黒人(若き日のデンゼル・ワシントン)の涙が辛い。
彼は鞭の痛みに泣いているのではない。むしろ鞭に打たれている痛みに対しての反応は無いに等しい。
だからこそ、その涙には自由を求めてやってきた軍隊で奴隷と同じように打たれることの悲しみが見え隠れする。

だが、ロバートも軍隊として脱走者を糾さなければならない苦悩。この辺りは見ていて本当に辛い。
補給将校にゴリ押しする辺りから司令官と黒人部隊の関係は好転するが、北軍からすら黒人達が信用されていない現実。侮られる事実。
どう考えても訓練不足と偏見なのだが、当時の認識としては拭いがたいものがあったのだろう。

不満をぶちまけるトリップ(デンゼル・ワシントン)以前からロバートと仲の良い黒人トマスを罵倒し、曹長のローリンズ(モーガン・フリーマン)にも突っ掛かる。

ローリンズは言う

「彼らは私達の為に戦って死んだ、
だから私も共に戦いたいと思った」


「(トマスは)黒人じゃない、黒人はお前(トリップ)だけだ」
(ここで言う黒人は恐らく蔑称の意味を含む物だと思われる)

単純にして明解な真理。
そしてトリップ自身が黒人としての自身を卑下していることへの鋭い指摘だ。

最終的に、ロバート率いる54連隊は要塞突入の先陣を志願する。
間違いなく部隊が壊滅するであろう程の任務に。
出陣の際に、ある白人兵が「頑張れよ!」と声を掛け、他の男達も呼応する。
以前、黒人部隊として貶してきた男だ。


これもまたローリンズと同じく単純にして明解な真理。


命を懸けて戦う者に、敬意は払われる。


肌の色などは関係ない、
流す血の色は同じなのだ。




そしてラスト、本当の意味で血路を開くロバートと、最後の最後でそれに応えるトリップの行動が素晴らしい。



結末は必ずしもハッピーエンドではない。
だが彼らは間違いなく未来を切り開く礎となった
それは一つの要塞攻略などよりもずっと大きい影響を与えた。



これこそが戦争にかける人間ドラマ



何が言いたいかというと(いつもの通りでお恥ずかしいが)



部活動みたいな軍隊生活しか送っていなかったヤツがラッパ吹いただけで戦争行動止めさせるとか

死んでも生き返る部活動みたいな銃乱射ごっこして取って付けたように不幸自慢を繰り広げるとか



彼らの誠意に対してみれば、

そんなのを「戦い」と呼称することすら烏滸がましい


って話に思えてくる。