宇宙戦争 | リュウセイグン

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長文多し。

スットコドッコイな宇宙人と人類の熾烈な争い






結構ね、みなさん誉めてらっしゃったんですよ。
たぶちっぷさんは勧められないって言ってらっしゃったんですよ。


後者が正解でしたね、少なくとも僕にとっては。

破壊屋さんも高評価だった気がするし、故・伊藤計劃先生の熱弁を先に読んでいたのですが、それでも僕は認めない。

誉める時の話としては「逃げる人から見た怪獣映画」としての視点について評価されている場合が多かった記憶があります。でもね、コレ怪獣映画として中途半端なんですよ。

怪獣映画の見所の一つは「破壊」、これは論を俟たないでしょう。
怪獣が町を ドカーン! バカーン! とやるのが楽しい。
ここで重要なのは、基本的に怪獣は人間個々人はどうでもいいってこと。
もちろんモスラやキングコングみたいに特定の人間を取り戻す為だったり、自然破壊に怒っていたりする場合はあります。あと食い物、とかいう場合もあるか。でも、その他大勢の人間は怪獣的に眼中になく、要するに邪魔だから歩いている内に死んでるとかそういう存在なんですね。

まさに虫けらな訳ですよ。

逆に、宇宙人が侵略する場合には大抵の場合恒星間飛行技術を持っているであろう宇宙人のが頭がいい。
頭がいいから計画的な侵略だったりする訳です。マヌケに見えても何らかの必然性が欲しい。
宇宙人も彼らの文化や生態があるので、その結果人間をぶっ殺したりという事情でも良いので。

ともあれ、怪獣映画とかの場合はその案配が大切かなと思うんですね。
これは主義主張と言うよりも、物語技法としての破壊感や絶望感を与える為に重要な部分なんです。

ゴジラもガメラも途中からはお祭り映画として扱われていましたが、やはり本当のところはパニック映画。
恐怖や絶望、そして破壊という背徳的な爽快感を与える存在だと思うのですね。

その為に、パニック映画としての怪獣は後先を考えない災厄のような暴力性、宇宙人は狡猾さや悪辣さを求められるのです。

しかしながら宇宙戦争の宇宙人は実に中途半端。
熱線自体の攻撃力がショボい。
薙ぎ払えばもっと凄かろうと思わないではないが、一人づつピーピーと照射する感じが如何にもせこい。
人間も灰になってしまうのでグロさが無く、むしろシュール。
これは恐らく(原作の設定に準拠して)一般市民が主人公であるという部分に由来する。
第三者目線であれば、徹底的な破壊が行えるが、主人公が単なる見物人として参加しているので圧倒的な攻撃では主人公が逃げられる道理がない。
恐らくはその為に一人づつ潰し回るような展開になったのだろうが、やはり見てくれのショボさは否定出来ない。
これが一番の問題だと思う。

宇宙人が本気で人間を攻撃してきたら物凄い大破壊になるはずだが、この映画ではどうも気泡緩衝剤を潰すような手段で人間を殺そうとしている。19世紀では熱線が出た時点で スゲー! という感じなのかもしれないけれども、やはりVFXが進んだ昨今、ピンポイントビームは無い。

宇宙人の攻撃手段が変遷しているのも微妙だ。

原作でも途中から熱線と毒ガスの併用になるらしいが、殺すという目的では一致しているし隙間に入り込むガスを使うのは残党狩りには向いているとも言える。
しかし、映画では

初期→ビーム
中盤始め→触手でひっくり返したり捉えたり(その後は不明)
中盤終わり→触手で捕まえてその場で吸血して植物の肥料(?)に
終盤→触手で捕まえて変なカゴに入れた後、更に触手で引きずり込む。

こういう変わり方をしている。中盤始めと終わりは同一かもしれないが、描写がないので分からない。

ビームの時点でちまちましていたのに、その後はもっとちまちまするのだ。
フェリーに乗ろうとしてる時にビームで薙ぎ払えば一網打尽なのに。
捕まえようとしたのだろうか? それでも人が密集している時ならガッツリ持っていけるはず。
一人一人触手で襲う必要はない。……主人公が生き延びられる理由作り以外には。

植物の肥料にする理由もよく分からない。
食い物なのか? しかし喰ってる描写もないし、その植物が宇宙人にとっての何だったかもわからない。

そして最後に触手で捉える→カゴ→更に触手という経過を辿るのも意味不明だ。
さっきはダイレクトで吸ってたじゃん! 何で今更やり方を変えるの? これも分からない。
主人公が上手く敵機を爆破出来る理由作り以外には。

民間人の一人称視点に準拠しているので分からないことだらけなのは良い。
しかし宇宙人のやり方はちっとも合理的じゃない。

100万年も前から計画立ててるのに!!!!!

そもそも、100万年前に侵略しようとしなかったのは何故だ?
わざわざトライポッド埋めておいて文明が発達してから侵略する理由は?
つまりコイツら100万年前の自分達の機械を使って侵略しようとしたって事だよね?
その意味は何?

そして100万年も掛けて計画練ってるのに防疫体勢ゼロで泥水ダイレクトドリンクなのはどうして?

そう、言ってしまおう。
この宇宙人はバカだ。『サイン』の宇宙人波並に。
もしこれで100万年前からの計画と言わなければ、(ステルス)トライポッドごと降下して来れば。
まだ考える余地はあった。
自身の種族が危機的状況であって、可及的速やかに地球を征服しなければいけなかったとかね。

或いは宇宙人も政権交代とかして公約に則って(100万年前に頓挫した)地球侵略を持ち出してきたのかもしれないなぁ。で、医療装備担当の大臣が外遊とかして防疫体勢が整わずに出発しちゃった訳ですよ。

もうこの映画はギャグ映画として捉えた方が楽しめるんじゃないだろうか。

ダメオヤジとダメ宇宙人のへっぽこバトル!

なるほどこれは楽しそうだ。
ギャグ映画だから死んだと思ってた人間もロクな理由もなく生き返ったりする訳ですよ。
だから怪獣映画・宇宙人映画としてはアレかなぁ。

エメ公の『ID4』とかアメゴジのが良いと思いますわ。